チューブアンプ・トーク(その2)

プリアンプとパワーアンプ





ヴィンテージアンプといえば、その代表はデラックスやベースマンといったフェンダーのツイードアンプや、1959、1987といったマーシャルの4インプットタイプですが、マーシャルアンプも、もとはツイード期のフェンダーベースマンのコピーから始まってます。JTM-45の初期モデルとかは、ほとんどベースマンへッドといっても過言ではありません。だから、流れとしては同一です。回路の基本設計という意味では、ツイードのフェンダーとヴィンテージマーシャルは同系列ということができます。

これらのアンプの特徴は、プリアンプ段では、トーンコントロールもパッシブにとどめ、ほとんどレベル調整だけの回路とし、あえて「音」を作らない点です。言い換えれば、パワーアンプ段と出力トランスでそのトーンキャラクターが決まる点です。ブルージーなクランチサウンド、オーバードライブサウンドと呼ばれる、その太くて表情豊かなトーンは、プリアンプではなく、パワーアンプが全開のとき作り出されるトーンなのです。あの歪みは、パワー管のオーバードライブと、トランスでの歪みが合わさって作り出される音。だからこそ、エフェクターではどうしても出せない深みがあるのです。

チューブプリアンプを使っても、思いっ切りゲインをあげたプリアンプで作ったハードドライブサウンドで使うなら、ソリッドステートのプリアンプで作っても、エフェクタで作っても似たようなサウンドは作り出せます。チューブパワーアンプを使っても、PA用のようなヘッドルームの余裕のあるパワーアンプなら、これまたソリッドステートでもサウンドにはさほど影響しません。こういう使いかたをするならば、ソリッドステートアンプで充分です。

こういうPA用のパワーアンプの場合は、ヘッドルームの大きさ、限界時の特性変化が緩やかといった特徴を生かして、チューブが使われます。しかしこの場合は、チューブのメリットは活きるモノの、チューブでなくては絶対に出せないという音ではありません。出力の余裕が十二分にあるパワーアンプを使い、歪みのでてこない領域で使うならば、ソリッドステートでもかなり肉薄するサウンドが得られます。ギターアンプと違い、ベースアンプ、ことにコンポーネントタイプのベースアンプでは、ソリッドステートのパワーアンプもかなり使われているのはこのためです。

しかし、こういうソリッドステートアンプのセッティングでは、クリーンでもディストーションでも、ギターのヴォリュームを絞った場合、多少音色がクモるぐらいで余りトーンニュアンスの変化はありません。言い換えれば、ピッキングや指先の表情が余りでてこないサウンドセッティングともいうことができます。しかし、パワー段がオーバードライブしてできる、クランチ系のブルージーなオーバードライブサウンドはチューブならではのモノ。ギター側のヴォリュームセッティングやピッキングニュアンスに鋭敏に反応して、変幻自在にクリーンからディストーションまで、そのトーンを変えます。

これこそ、まさにロックサウンドの醍醐味です。70年代のレコーディングは、このトーンを活かすため、あえて小さめのアンプを使い、ヴォリュームフルアップで使うやり方がほとんどでした。たとえば、イーグルスとか、ドゥービーブラザースとかといった70年代アメリカンロックのレコーディングでは、大体フェンダーのデラックスアンプ、それもツイードかプリCBSのブラックパネルのを使って、フルテンで鳴らしてる例が多いようです。

もちろん、こういうレコーディング方法を取ったミュージシャンはイギリスにもいます。その代表例がレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジでしょう。彼の場合は、リッケンバッカーやスプロといった、10〜20W程度でワンヴォリューム・ワントーン(もない場合もあるけど)のアンプをフルアップにしてレコーディングに使っていました。とういうことで、多少はゴージャスになりますが、ツイードデラックスとオールドテレキャスターでも、ツェッペリンのファースト、セカンドに近いトーンキャラクターの音が出せます。決してレスポールにマーシャルではありません。

言い換えれば、20Wクラスのヴィンテージチューブアンプがあれば、セッティングと奏き方次第で、この辺の音までは充分対応可能ということです。これこそ、ヴィンテージアンプの表現力の幅広さを物語る例ということができます。これは逆もまた真なりで、オールドマーシャルが一台あれば、ステージ上でディストーションソロから、アコースティックギターを思わせる繊細なアルペジオまで、ヴォリュームコントロールと指先で奏き分けられるのは、ゼップのライブプレイが証明しています。ということで、アンプにもいろいろありますが、チューブアンプならばオールドタイプという意味がご理解頂けたのではないかと思います。



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