ストアコンセプトのたてかた



1.ストアコンセプトとはなにか
最近「コンセプト」というコトバは、いろいろなところで使われるようになった。これはもともと広告業界の用語であり、広告作品を作ったり、キャンペーンを組み立てたりする場合に、個々の表現やアイディアを作るベースになる「基本的な考えかた」という意味である。コンセプトが明確であれば、どういう媒体を使って、どういう表現で、どういうタレントを使って、といったキャンペーン全体が一つにまとまり、大きな効果を発揮する。広告作業は何人かのチームにより分業として行なわれるため、コンセプトをきっちりおさえられるかどうかが重要なのだ。
ストアコンセプトという場合には、店づくり、商品作り、顧客サービスといった具体的な戦術を考えてゆく場合に、それらの基本となるべき「こういうお店にする」という戦略的な概念を意味する。これが明確なものとなっていれば、個々の戦術を考えてゆくことはたやすくなる。ひとりの人間がお店のマネジメントをすべて切盛りしている場合には、必ずしもストアコンセプトが明文化されていなくても、お店の理想的なイメージとして店長のアタマの中にあればすむだろう。しかし、複数の人間が関わるお店では、ストアコンセプトが明確に打ち出せなくては、一つのお店としてのまとまりが希薄になってしまうのだ。
このようにストアコンセプトとは、具体的にお店の「個性」を規定しているものである。他のお店となにがどういうところで違うのか。このお店はお客さまに対してどういう顔を持っているのか。お店の「個性」こそが、いまやお店を成功に導くための最大のカギとなっているのはいうまでもないだろう。

2.ストアコンセプトの二つのレベル
さて、ストアコンセプトには大きくわけて二つのレベルがある。一つはキー・コンセプトである。いいかたをかえれば、コーポレート・アイデンティティーに対する「ストア・アイデンティティー」とでもいえるような、もっとも基本で重要な考えかたである。これは長期的な視点をもち、経営的な見地も含めて構築する必要がある。そして、一度明確にしたら、長くその路線をキープする必要がある。
もう一つは、中期的な戦略目標としてのストラテジー・コンセプトである。どんなにすばらしいキー・コンセプトでも、変化し続けている時代に対応した方法論に落し込むためには、時代にあわせたイメージにコンセプトを再構築する必要がある。
たとえば、「時代の最先端をゆく」お店にしようというコトは「キー・コンセプト」である。しかし、このキー・コンセプトを守るには、かなり頻繁にストラテジー・コンセプトを見直す必要がある。テクノとかはやった十年前なら、「ハイテクイメージ」がストラテジー・コンセプトだったろうが、五年前なら「ポストモダン」、ここ数年なら「世紀末の退廃」、というように「時代の最先端」のイメージ自体がかわってゆくのに対応し、より具体的なコンセプトを打ち出さないと、抽象的すぎて戦術論に落し込めないのである。このように、ストアコンセプトは二つのレベルで構築し、それらがクルマの両輪のような連係プレーをとってはじめて意味があるのだ。

3.なぜストアコンセプトが重要なのか
現代は「モノあまりの時代」だといわれる。お店は、モノあまりの時代の消費者に向かってモノを売らなくてはいけないのだ。かつてのように「モノに飢えている時代」なら、売りかたや商品力以前に、おいておくだけで商品は飛ぶように売れた。しかしいまや、お客さまは必要なものは持っている。そこにさらに売らなくてはならないのだ。こういう状況下には、一筋縄ではいかない。
しかし、いまでも売れているものは売れている。そのジャンルの商品をすでに持っていようがいまいが、買い換えニーズ、買い増しニーズを喚起できた商品はヒットしているのだ。こういう商品を分析すると、購買動機は、今までのように理性的なものから、多分に感覚的なものへと変化してきていることがわかる。必要だからといってよく考えて買うのでは、「結局いらない」という結論になってしまうのがオチである。ひらめくものがあって急にほしくなって買う、という衝動型でなくては買ってくれないのだ。
ということは、商品の需要が、プッシュ型からプル型になっているというコトができる。プッシュ型の時代は、どこの店で買っても同じ。近いとか安いとかいった理由だけが、購買意欲をかきたてた。プル型の時代になると、お客さまの心をつかまえることが重要になる。「同じ商品であっても、この店でみたから欲しくなって買ってしまう」というコトが起こるのである。
この違いこそが、「お店の差別化」である。そして、差別化のカギがストアコンセプトなのだ。お客さまはあなたのお店のストアコンセプトを感じとり、それに共鳴してくれるからこそやってくる。そして、商品やサービスを購入する。個性のない店では生き残れない、競争の時代を生き抜くためには、ストアコンセプトがカギになるのだ。

4.ストアコンセプトはこう作る
いまや、「あなたのお店は他のお店とどこが違うか」というコトが、お客さまにとっては、もっとも大事なポイントになっている。違うからこそわざわざ足を運ぶ気になる。お客さまが足を運んでくれれば、気に入ったものを購入していただくチャンスも増える。こうなれば、お客さまにとっても、お店にとってもいいことづくめである。
さて、ストアコンセプトには「こうでなくてはいけない」というものはない。お客さまのニーズは千差万別なので、どのストアコンセプトがよくて、どのストアコンセプトはよくないということはないのだ。他の店と明確に違うことのほうが大事だ。基本的には、ストアコンセプトでは店長やオーナーの趣味や個性を打ち出すコトが重要である。しかし、そうでなくても、他とは違うはっきりとした主張ができていれば、それに共鳴したお客さまは必ずついてくる。
ただし、まるっきりヒトのマネというのでは困りモノ。これではお客さまはよべない。マネされた本家のほうにはヒトは集まっても、まねしたあなたのお店にはくるヒトはいない。しかし、違う業種で当ったストアコンセプトを、自分のお店に翻訳して取り入れるのは有効だ。その意味でも異業種に学ぶことは重要なのである。
さて、お客さまがお店に求めているものが、ヒトそれぞれに多様である以上、いろいろ対立的な概念も、ウマく組み合せることで個性化の道具にできる。てきぱきとしたサービスかアットホームなサービスか、定番中心の品揃えかユニークな品揃えか、安い普及品中心か高い高級品中心か、高くてもサービスがいいかサービスがなくても徹底的に安いか。これらは、どちらでもそれなりにお客さまをよべるのである。あなたのお店のおかれているポジションや経営基盤、競合状況などを考えあわせた上で、もっともアピール力を持つストアコンセプトを作るべきだろう。

5.ストアコンセプトの打ちだしかた
ストアコンセプト自体は「考えかた」なので、具体的にお客さまの前に顔をみせることはない。しかしストアコンセプトは、あらゆる場面や機会を通して、お客さまに伝えられ、お店からお客さまへのメッセージとなる。具体的には、店づくり、商品づくり、顧客サービスの三つのチャネルがとくに重要である。統一されたストアコンセプトがあれば、これらが三位一体となって強力なメッセージをお客さまに発信することになる。そしてこれをバックアップするのが、コミュニケーション戦略である。
どんなにすばらしいストアコンセプトをもち、それを実際の戦略の中で展開したとしても、お客さまがお店にきて、それに触れなくては何にもならない。お客さまがお店にきていただくには、お店の情報が伝わらなくてはいけない。いまや、お客さまの行動半径は驚くほど大きい。気に入った店だというコトがわかれば、わざわざ遠方から交通費をかけてもやってくる。気に入った店で買い物をするために、地方から大都市へ旅行するヒトだって多いのだ。ストアコンセプトが、遠くのお客さまにまで伝われば、物理的な商圏とは関係なく、より多くのお客さまを相手にしたビジネスを展開できることになる。
とくに「山椒は小粒でも」型のお店が生き残りを図るには、このような地場をこえた「商圏」の確立が必須であり、そのためにもコミュニケーション戦略が重要になる。
お店のコミュニケーション戦略として、まず第一に大事なものは口コミだ。実際に来店したお客さまに満足してもらうコトが原点である。同じ価値観を持ったお客さまは、どこかで直接の接点を持っているものである。そういうひとたちの間で口コミが広がれば、あなたのお店のストアコンセプトを理解してくれるターゲットの間で、効果的に知名度、好意度が上がることになる。
つぎにメディアによるパブリシティーも忘れてはならない。メディアで取り上げられることは、最近では集客上大いに効果がある。またストアコンセプトのしっかりしている店ほど、メディアでも取り上げられやすい点もみのがせない。しかし、物販型のお店なら問題はないが、飲食店や美容室といったサービス型のお店の場合は、お客さまが集まりすぎると、既存のお客さまに対しても対応不可能になる危険性もあり、両刃の剣であることも念頭においておこう。




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