来るべき日に向かって





ここを愛読している読者の方ならすでにご存知だろうが、私のスタンスは基本的には性悪説で相手を信じないことを基本としているが、論旨は極めて楽天的である。性悪説で楽天的、すなわち下手に相手を信じたり期待したりしないで勝手にやり合えば、世の中はワリとウマく回ってゆくものだ、と考えている。昨今の世界情勢や国内情勢をみてネガティブに捉える向きもあるようだが、私のような視点に立てば「けっこういい線にきているんじゃないかな」という気分である。

まず、トランプ大統領就任以来世界に広がっている、自国中心主義や反国際主義の流れである。これは20世紀的な国民国家観を前提にするからおかしいことになるので、社会がバラバラの多数の小さなクラスタに分かれ、それぞれが他のクラスタに干渉せず勝手に好きなことをやる方向を目指す運動だと思えば、理想に向かう良い方向だと捉えることができる。大事なのは、同じ価値観を持つ均質の人間が小さくクラスタにまとまることと、他のクラスタに対して価値観の押し付けや強要をしないことである。

米社会の問題も、下層白人とヒスパニックは同じコミュニティーの中で限られた仕事を取り合うから、憎みあい差別が生まれるのであって、それぞれ別のコミュニティーの中で全く別の行動をして顔を合わすこともないのであれば、そもそも相手の存在すら意識することはなくなるだろう。そもそもアメリカというのは、ボストンに住んでいる人にとっては、アリゾナのことなど心の中にも頭の中にも影も形もないような国である。互いにコンフリクトを起こさないような形で棲み分ければ、至って平和に共存できるシステムである。

そもそも世界は一つとかグローバリズムとかいう発想は、人類愛みたいな「for good」的な発想から出てきたものではない。それは産業革命以降の「大量生産・大量販売」の論理が生み出した、産業社会における市場のあり方がもたらした帰結である。大量生産・大量販売のスケールメリットを追及してゆけば、必然的に「世界が一つの市場になるのが最も効率的」という結論になることは容易に理解できる。19世紀・20世紀の歴史は、それを実現してゆく過程だったということさえできる。

生産力・技術力の増大と共に、市場形成には欠かせない交通網や通信網が発達してゆく。そもそも世界を支配した「大英帝国」を生み出したのは「産業革命」の勃興であり、重商主義の時代のスペインやポルトガルとは構造が全く違う。20世紀に世界大戦が起こったのも、産業革命の結果が求めた世界市場をめぐる「帝国主義」の争いの必然的な帰結である。しかし、20世紀も終わり産業社会の時代も終焉をとげ、世界は情報社会の時代へと突入した。その一方で国家や国際関係のあり方は、産業社会のままなのだ。

産業社会的スキーム、国民国家的スキームで考えるから、21世紀的ナショナリズムを正しく理解できないのだ。これからのコミュニティーは、空間に必然的に縛り付けられていた産業社会的なものではなく、もっとヴァーチャルでフレキシブルなものになる。そういうコミュニティーが自分のアイデンティティーの拠り所になるのだ。それをベースに考えてゆくと、うまい具合にクラスター同士が接触することなく共存することも充分可能になることがわかるであろう。

日本でもいろいろな組織の不祥事やハラスメントが続出したが、これも今までのやり方が通用しなくなったからこそ引き起こされている問題である。メタボのような生活習慣病と同じ。変化に気付かないまま、十年一日のごとき対応を繰り返しているのでは、もはや許されないからこそ問題が起きる。そしてその問題は、やり方自体を変えなくてはいけないことを示しているのだ。

すなわりいろいろな形で同時並行的に噴出してきている問題は、実は「産業社会の残渣をどう一掃し、情報社会に最適化したパラダイムシフトを実現するか」という課題が、共通して引き起こしている現象なのである。そもそも原因がそこにあるのだから、今までの経験の中には答えはありえない。それだけでなく、産業社会に最適化した近代の社会構造や政治構造そのものを変えてゆくことでしか解決はしない。

既存のスキームやフレームを前提にするのではなく、一旦白紙にした上で今求められていることを実現するためにベストな構造を設計する。まさにこれを行う絶好のチャンスが訪れているのだ。既存の制度やルールはもう要らない。今求められている環境をうまく実現するためにはどうしたらいいのか。人々が求めているもの、理想としているものを素直に見つめれば答えは容易に出てくるはずである。カギは、やるかどうか。決断はそれだけである。


(19/01/04)

(c)2019 FUJII Yoshihiko よろず表現屋


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