発見力こそ天才の入り口






クリエイターにとっては、アイディアをカタチにする時間こそ限られたものであるが、アイディアそのものは1週7日、1日24時間、出物腫れもの所嫌わずで出てきてしまう。そしてクリエイティブワークの本質は、その「アイディアが湧き出る」ところにある。そういう意味では、24時間働いているワケだ。我ながらこういう仕事をしていると、夜中にトイレに起きた時にその直前の夢で見たアイディアをパソコンを起ち上げて記録するなんてことも日常茶飯事である。

もっというといいアイディアというのは、突然高い完成度を持って湧き出てくるものである。考えに考え、練りに練ったアイディアというのは、往々にして二番煎じだったり、限りなくパクりに近いものだったりする。多少ブラッシュアップしたり、法制度との整合性を取ったりする程度の手は加えるが、基本は最初に湧いてきたものそのものである。だからこそいいアイディアなのだ。

このようにアイディアの価値は、直接掛けた時間に反比例するといってもいい。もちろん、具体的なアイディアが湧いてくるまでに、仕事をしていない時間の中で相当のブレイン・ワークが行われていることは間違いないが、それは文字通り「頭の中」で、いわばバックグラウンドのジョブとして処理されているものであり、外部からはもちろん、自分自身でも形而下に把握することは不可能である。

クリエイティブワークとは、時間管理ができないものなのである。その一方で役所は秀才の集団なので、天才の所業であるクリエイティブワークの本質がわかっていない。まさに労務問題でその矛盾が顕わになっている。演繹的な努力しかできない人にとっては、時間と苦労は正比例である。秀才のものの考え方は、まさにこの演繹的な努力に基づいている。だから、全ての知的労働は時間で把握できると考えてしまうのだ。

基本的に官庁は前例主義であり、新しいことを行うモチベーションはない。新しいことをやるにしても、すでに民間で充分に行われており、それを事後承認するようなカタチで取り入れるのみである。マーケティングでおなじみのディーンのイノベーター理論でいえば、官庁は「レイトマジョリティー」の代表である。だからこそ「クールジャパン」関連の支援事業のように、官庁が目をつけるのは「終わりの始まり」を示すことになる。

自分では何も生み出さず、先人の知の集積だけに頼っている輩。それが秀才である。秀才でも先人の知識の組み合わせでソリューションを見つけられる課題については、それなりに答えを見つけることができる。だが先人の残していった蓄積から演繹的に導き出せないものについては、全く歯が立たない。それはどちらが優れているというものではなく、守備範囲の違いなのだ。そして、その違いを知り理解することが重要なのだ。

絵を描くという作業は似ていても、アーティストと職人の違いには大きいものがある。アーティストは自分の中に表現したいイメージが湧き出ていて、それを世の中に具現化するプロセスとして作品を描く。その一方で職人は技術は非常に高いレベルであるが自分の中に表現したいものがあるわけではないため、人からこういうのを作ってくれといわれればすばらしい物を作るが、好きな物を作っていいといわれても精巧な贋作を作るのがオチだ。

天才は、先人の功績とは関係なく、自分一人でゼロから知の歴史を構築できる。数学とかを学ぶのでも、公式や定理を覚えるのではなく、どういう流れでその公式が生み出されてのか、何をベースにして証明されたのかという、学問のダイナミズムだけを学ぶ。それだけわかっていれば、数学の発展の歴史を自分の頭の中でシミュレーションできる。

画家の堂本印象先生は、戦前の昭和においては伝統的な日本画の画家として活躍したが、戦後還暦を過ぎてからヨーロッパに遊学して欧米のアートシーンに目覚め、それから亡くなるまでの約四半世紀の間に、19世紀から現代までの西欧美術史の流れを自らの中で再現するかのごとく、宗教画・具象画から抽象画までありとあらゆる手法をオリジナルで自分のものとしてしまう活躍をした。これもまた、天才のなせる技ということができる。

この違いはどこにあるのか。それは覚えるのではなく、発見することにある。勉強して覚えるのではなく、体験の中から発見する。このプロセスを極めて高速回転されられる人たちが天才なのである。もちろん、どこまで高速回転させられるかはもって生まれた能力による。しかし、発見するという発想を持たず、覚えるだけでいたのでは、自分にその能力があるかどうかもわからない。いずれにしろ発見することから始まる。発見こそが大切なのだ。

(19/08/09)

(c)2019 FUJII Yoshihiko よろず表現屋


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