共感と寛容





左翼・リベラル主義者の特徴として、他人に対する共感と寛容さが決定的に欠如しているという問題がある。本来のリベラルは共感と寛容さを持っている人たちだったはずではないかと思うのだが、アカデミックやジャーナリズムの中でリベラルを標榜している「主義者」達は、全く持ってこういう面での許容範囲を持っていない。彼らの特徴として内ゲバが多くなるのは、そもそもこういう特性を持っているからだ。そもそも「自分と違うもの」が許せないのである。

特にこの傾向がはっきりするのは、彼らの言う「弱者」と対峙するときだ。彼らはよく「弱者の味方」を口にする。しかしその割には弱者へのまなざしは、決して優しみに満ちたものではない。弱者への視線の裏には彼らが弱者と呼ぶ人達に対する憐憫の情こそあるかもしれないが、その存在を認める共感や寛容さは感じられない。結局、弱者の味方として相手の立場に立ってモノを考えるのではなく、自分達が優位に立って「恵んでやる」ことで服従させ、家来にしようという意図しか伝わらない。

これは左翼政党・革新政党では特に強く現れてくる傾向である。恩恵を恵んでやるんだから、票を入れろ。バラ撒いてやるから、従順な子分になれ。衣の下の鎧などというまでもなく、そういう発想がありありと見えてくる。自分達はインテリで知的エリートなのだから、自分達の方が優位に立って当たり前であり、格が違うんだというのが発想のベースに色濃く伺える。これが「上から目線」といわれる由縁だ。

左翼の特徴として「理屈っぽい」というものがある。かつて新左翼の学生運動が盛んに行われていた昭和40年代には、中国の文化大革命から借りてきた「造反有理」という言葉が大いにもてはやされていた。「理屈が付けば、(たとえテロ行為でも)正当化される」という文脈で使われていた。理屈が付くことが、自分の「正しさ」の証明になっているという短絡的な発想が、左翼思想の根源にあることを良く示している。

ゆがんだ法治主義のようなものだが、思想信条の自由があるので、こういう考え方をするのは他人にそれを押し付けない限りはその人の勝手である。仲間内でそれを信念としている分には、「マスターベーションの自由」があるのと同じで、他人がとやかく言うことではない。どうぞ勝手にやってくださいというしかないだろう。「同じ穴の狢」同士が、重箱の隅のような違いを針小棒大にとらえ内ゲバするのも、他人に迷惑をかけないなら勝手にやってくれだ。

しかし問題は、このように理論武装偏重になってくると、とにかくすでにある理論におんぶに抱っこして、自分でものを考えることをしなくなるところにある。さらに自分でものを考えずに、一から十まで他人の理論に依存するようになると、その理論を引用することでその権威まで借りてこようとしだす点にある。その理論を振りかざすことが、その理論のオリジネーターの権威を自分のものにできると思ってしまうのだ。

マルクス・エンゲルスにしろ、レーニンにしろ、毛沢東にしろ、フォロワーがその理論をかざせばかざすほど、その権威はさらに高まり、その存在は神聖化されてしまう。この構造は、「天皇の名と権威」借りて、勝手に自分達がやりたいように暴走した「関東軍」と瓜二つである。左翼思想の中に本質的にこういう構造がビルトインされているからこそ、左翼は権威主義の上から目線になりがちなのだ。

そして自分で物を考えずに外側の権威を借りまくると、自分達は無謬であるという決定的な勘違いをしだすようになる。権威に従って行動しているのだから、その結論や方向性が間違っているわけがないと、疑いもなく思い込むようになる。これが嵩じると、自分達だけが「正しい」し、自分と違うものは間違っている、という認識にまで至るようになる。ここまできてしまうと、もっはや異なる意見の人に耳を傾けることさえできない。

違う意見を持っている人に対して、そういう考えもあると認めることができるためには、共感と寛容さがカギになる。ところが、自分に自信がない人にはこれをもつことができない。この基本的な問題を理解できなかったばっかりに、最初のボタンの掛け違えがここまでエスカレートしてしまうのだ。自分の弱さを認めることができなかったばっかりに、て人を許せなくなる。左翼やリベラルが嵌るジレンマがここにある。

そもそもしっかりと自分を持っている人なら、相手を許容できる範囲が大きい。自分の問題点も隠すことなく受け入れられる範囲も大きい。問題はここなのである。そういう心の大きい人ならば、本当の意味でのリベラルな考えを持つことはあっても、左翼やリベラル主義者になることはない。そうえいば左翼とかになる人って、昔から頭でっかちで知識だけはあるが、自分としての意見は空っぽな人が多かったよなあ。バカは死んでも直らない、ってヤツか。


(20/02/21)

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