介護の構造






このところ、コムスンの事件以来、いろいろなカタチで介護の問題がクローズアップされている。介護に関しては、極めて重要ではあるものの、見逃されやすい問題がある。それは、介護には、本質的に二つの構造がある点である。一言で「介護」とくくられてしまうモノの中には、「生活サービス」と「福祉」という、いわば水と油のようなものが混在しており、これが問題をややこしくしている。

「生活サービス」は、ホテルやレストランと同じ接客サービスである。コストは受益者負担であり、付加価値性が収益性のカギとなっている。介護つき有料老人ホームなどが典型であり、高コスト・高品質が追求される。一方「福祉」は、街のバリアフリー化や生活保護と同じ公共性の高いセーフネットである。社会の安定を図るべく、最低限の保障を公費で行うものであり、在宅介護支援などが典型である。

一口に「介護」といっても、この二つの業務は、中身もターゲットも評価基準も全く異なるものである。これが、介護の名の元に画一化されてしまっている。これは、ある意味確信犯である。介護の問題の元締めが、官庁や地方公共団体である以上、その仕切は「お役所仕事」でしかない。そして「お役所」は、形式的画一化を好む。というより、それ以外できない。かくして、意図的な混同がもたらされることになる。

これは、いわゆる「教育問題」も同じだ。現状を分析すると、教育をしたっていい生活が望めるわけではないので、ゆとり教育で充分という層がいる一方、より高度な教育のチャンスを得て、教養をつけるべきという層もいる。どちらも、それぞれ言い分があるし、それぞれ自分の家庭の問題としては正しい。生活者のニーズは、そもそも多種多様で、金太郎飴ではない。

これを、画一的に処理できるわけがない。しかし、役所はどちらかに割り切って画一的に処理したい。だから教育行政は、一定量の不満層を残しながら、どちらかに舵を切る。その結果不満層からの反発が起こり、右へ左へダッチロールを繰り返す。ゆとり教育も、詰め込み教育も、両方あっていい。それぞれが、それぞれの責任において、それぞれの求める教育を得られる環境を作らなくては意味がない。それを、無理やりどちらか一方にまとめてしまうから問題になる。

このような「画一化の弊害」は、保育園や学童保育といった、ワーキングマザーの「支援」においても見られる。共稼ぎの増加や、少子化への対策として、「支援」の必要性が語られている。現状では、保育園や学童保育を希望する層は、両親ともフルタイムワーカーで、世帯所得レベルでは平均を上回る層と、夫の収入が低く、妻のパートタイム等の収入を合わせても平均レベルいかない層と、二つの層に分化している。世帯所得が、両極化しているのだ。

この両者は、求めている「支援サービス」の内容が大きく異なる。地域の民度により、世帯所得は大きく異なる。このため、地域特性が強く影響する保育園・小学校ごとに、各々の状況は大きく違う。これを、生活支援というカタチで画一的に対応しようとしているからおかしくなる。収入がある層は、収入に応じた自己負担をする分、高度なサービスを優先的に受けられるようにすれば、限られた予算内でもより多くの児童を対象とすることができる。

さて、生活サービス系の「介護」においては、個々の施設の定員充足状況と採算性という問題こそあれ、構造的問題は少ない。自分のお金を出している分、それに見合った要求はするが、そもそも自分が支出している額が見えているだけに、それ以上の「無謀」な要求をすることはない。また、コスト構造がハッキリしている分、看護士や介護士なども、それなりに安定した待遇が得られる。

問題は、福祉系の介護である。この世界は、自己負担ではなく、基本的に「天下の周りモノ」で動いている。要は利権なのだ。「公」のすねかじりな分、取れるだけ取ってしまおうという意識は、利用者にも、提供者にも働く。介護を受ける側も、貰えるものは何でも貰っておけ、とばかりに、介護担当者が来ると、あれもこれもと要求を出しまくる。そうすると、介護する側も、当然とばかりに水増し請求をする。これが、コムスンに代表される、一連の介護疑惑の本質である。

何のことはない。例によって「甘え・無責任」な連中が、公共の名の元にばら撒かれる「利権」を、もっともっととばかりに、取れるだけ取ってしまおうと取り合うだけのことである。今回の問題も、新しい利権を取り合う「抗争」のなかで、やりすぎたところが他の反発を食らって叩かれているに過ぎない。問題は、「公益」が既得権益としてしか捉えられない、日本の社会構造にある。自分のフトコロを痛めず、天下の廻りモノの分け前だけ貰う、という連中は、けっきょく、あさましいだけなのだ。



(07/07/13)

(c)2007 FUJII Yoshihiko


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