エフェクター・トーク(その3)




その3. ヴィンテージエフェクターの真実


(その他のエフェクター編)



エフェクター・トーク第三回では、その他のヴィンテージエフェクトについてまとめて触れたい。今までは各ブランド別にコメントをつけてきたが、今回俎上に上げるマシンは極めてブランドやバリエーションが多く、個々にコメントをつけることは意味が薄いと考え、ジャンルごとにコメントしたい。


(1) ワウワウ(クライベイビー)
エフェクターのなかでも、もっともアナログ、それも超がつきそうなアナログなマシンがワウワウだろう。そもそもその使いかたからして、リアルタイムでペダルを使うというアナログ性が強いモノではあるが、その回路や作動原理も極めてアナログだ。電子回路と電気回路の中間といったらいいのだろうか。抵抗、コイル、コンデンサーでフィルターを作り、そのピークの周波数を抵抗値を変えることで変化させている。ということはおのずと、極めて個体差の大きいマシンということがいえる。さらに、その「効き目」の核となるのが消耗品であるヴォリュームだ。個体差が大きい上に、同じ個体でも、使いかたにより音が変わってしまうことになる。そういうワケだから、極端にいえば「二つとして同じ音の個体はない」ということになる。ギターのネックの握りと同じで、気に入ってしまえば買うしかないだろう。ただここで問題になるのは、ヴォリュームが摩耗するモノである以上、気に入った音がいつまでも保たれるモノではないという点だ。今気に入って高いものを買ったとしても、その音が永遠に保証されているワケではない。それを考えると、多少物足りなくてもメンテナンス性のいいものを選んだほうがいいだろう。高い金を出して買ったがいいが、すぐにその音がでなくなってしまったのでは目も当てられない。さらにアナログ的である以上、アンプの状態やスタジオや小屋のアンビエンス特性によっても、聴覚上の掛りは大きく影響される点も忘れてはならない。

判定: プレイヤーが使うなら、新品で気に入った音のモノを探すほうが安全



(2) ファズ
アナログならぬ「アナクロ」ブームによって、数十年間の封印をとかれてよみがえってしまったのが、ファズだ。クリップ回路で矩形波を作るという意味では、ディストーションとも似ているが、そもそもの使われ方を考えると、ディストーションとは異質のエフェクターだ。ディストーションはあくまでも、チューブアンプのオーバードライブサウンドがあって、その豊かな音色をどうシミュレートするかというところから開発された。一方ファズは、ある種の飛び道具として、攻撃的でトリッキーなサウンドを出すために作られたモノだ。そういう目的に照らし合わせてみて、音色が気に入って、コストパフォーマンスが納得できれば、購入しても良いだろう。ただ、飛び道具ということは、ユニークでインパクトのある音が出せることが何より重要であり、ブランドや人気度は直接評価ポイントとはならない。それを一切使わなくても、音楽そのもののインパクトや価値は変わらないからこそ、飛び道具の面白さが生きることを忘れてはならないだろう。たとえばジミ・ヘンドリックスはファズを効果的に使ったプレイを残しているが、そもそも彼のプレイの本質は、ブルースよりソウルミュージックに近い、独特のグルーブ感とフレージングにある。数少ないが、彼のアコースティックギターのプレイを聞けば、エレクトリックのプレイと本質が全く一緒だし、伝わるモノが一緒だと気付くだろう。大事なのは心。音色をマネしてもはじまらないのだ。本質を受け継いでこそ、ギミックの部分も生きてくる。若いヒトほど勘違いしがちだが、60年代のヒトだってファズの音を「心に響くいい音」と思って使ったのではない。その逆だからこそ使いたくなったことを知るべきだ。

判定: こういうオモチャを欲しがっている間は、こういうギミックは使いこなせない



(3) ビッグマフ
ビッグマフも、元来はエレクトロハーモニックス社製の特定の機種のブランドだが、70年代はじめには、ある種のエフェクターのジャンルを示す一般名詞と化してしまった。実際「国産のビッグマフ」なんてものも発売されていた。その特徴は、ニュアンスが潰れんばかりの深いクリップと、効きのいいトーンを思いっ切り絞り込んだときに得られる、ウーマントーンをさらに押し進めた、螺貝みたいな「呻き」トーンにある。サイケデリックサウンドにはなくてはならないサウンドだし、初期のハードロックの図太いリフにもよく使われた。そのサウンドは、戦車ですっ飛ばすような豪快な快感があり、これはこれで大いに存在感がある。ただこれもサウンドだけを取り出せば、ヴィンテージエフェクタを使わずとも、セッティングと工夫次第で充分出せるサウンドだ。そういう「努力」をやったほうが、人まねでないオリジナリティーあふれるサウンドを創り出す上ではずっとプラスになる。ヴィンテージエフェクタブームというのは、どうもその裏に、自分のアイディアや工夫ではなく、金で音を買ってこようという発想(そうは簡単には行かないのだけれど)があるような気がしてどうも気になる。ビッグマフの人気が再びでたのは、グランジ系のアーチストが愛用したせいだと思うが、そういう音楽ほど人まねでは意味がなく、他人が使ったエフェクタなど死んでも使わない、というのが本来の姿だと思うのだが。

判定: その音がほしいなら、安いディストーションでも工夫と使いかた次第



(4) ヴォリュームペダル
これがエフェクターに入るかどうか、ヒトによって意見があるかもしれないが、最後にヴォリュームペダルを取り上げてみたい。これが意外に、エフェクターをどう使いこなすかについて重要なポイントになっていたりするからだ。つまり、エフェクターを楽器の一部としてとらえる使いかたをしているか、アンプの一部としてとらえる使いかたをしているかで、ヴォリュームペダルの位置付けが全く違う。アンプの一部として、オーバドライブやブースターを使用している場合には、基本的にはヴォリュームペダルはいらない。ギターとアンプをシールド一本で繋いでいる状態を考えてくれればいい。これに対し、エフェクタでサウンドを完全に作ってしまう使いかただと、エクスプレッションをつけるには、すべてのエフェクタの最後にヴォリュームペダルをつなぎ、そこでコントロールする必要がある。後者のタイプのプレイヤーなら、ヴォリュームペダルは必需品といえるだろう。たとえれば、エレピにはヴォリュームペダルはいらないが、シンセやオルガンには必需品ということになる。そういうこともあってか、最近の製品はいかにもシンセ用という感じの、プラスティック製のきゃしゃなモノが多い。これだと、ライブ時などに微妙な調節が難しい。昔のヤツといっても、ヴォリュームペダルなら中古扱いでそんなに高くないので、ショーバッド製とかゴッつくて安定感のあるヤツを見つけたら、チャンスだ。ゲットしよう。もちろんヴォリュームペダルの場合は、メンテナンスで中のヴォリュームを取り替えても、しっかりしたモノを使えば、機能としては何ら問題ないのはいうまでもない。

判定: エフェクターでサウンド作りをするプレイヤーなら、重厚なヤツを一台持つべき



おわりに -ギタープレイヤーにとってエフェクターとは-
当たり前のことだが、音楽でなにかを表現したいとき、楽器がなくては(楽器のプレイヤーは)手も足も出せない。しかしギターのようなアナログ楽器であれば、その表現にエフェクターが必要不可欠ということはありえない。アマチュアプレイヤーは、しばしばここを勘違いしがちだ(だから、楽器屋が儲かるというハナシもあるが)。エフェクターをどう選ぶか、どう使うかという問題は、ここがわかっているかどうかが原点になる。表現力豊かなプレイが「生で」できてはじめて、エフェクタの効果が活きる。しばしばエフェクターマニアが陥りがちな罠は(ピクアップマニアも同じ)、この単純な原理が理解できていないことによる。
そもそもギターはピアノには負けるが、楽器のなかではかなりの表現力の幅を誇っている。それは、アコースティックもエレクトリックも同じだ。アコースティックピアノ一台の奏き語りで、クラシックやジャズはもちろん、ブルース、ロック、果てはいろいろなワールドミュージックもプレイできることは誰でもわかるだろう。さすがにここまでの幅を出すのは辛いが、生ギター一本あればいろんな音楽のエッセンスを表現することは可能だ。きちんとグルーブを出せるプレイヤーならば、ある曲を生ギター一本でプレイし、色々な音楽スタイルで奏き分けることもできる。よく議論になる、ハードロック風とヘビーメタル風を奏き分けることも容易だ。そもそもビッグなギタープレイヤーは、生ギター一本のプレイでもしっかり個性を出していることからもわかるではないか。
このように、きっちり自分の表現したいことを表現するプレイができているなら、それをさらに色づけし、個性をキワだたせるためにエフェクターを使う意味がでてくる。その逆で中身のないプレイは、どんな高価なエフェクタを使用してもいいプレイにはならない。エフェクタにいくら金をつぎ込もうとも個人の勝手だし、コレクターに徹するならそれもいいだろう。しかし、エフェクタに金をかければそれで自分の腕をごまかせると勘違いしているなら、音楽など早くやめたほうがいいだろう。そういうキミにとっては、音楽をやること自体、はっきりいって無意味だ。たかがエフェクターというなかれ。そこになげかけている視線は、そのヒトの人生にとって音楽がなにを意味しているかまで語ってくれる。


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