Gallery of the Week-May.01●

(2001/05/25)



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椿会展 2001
資生堂ギャラリー 銀座

資生堂ギャラリーの新たなスタートに合わせて復活した、伝統の椿会。50年以上に登る歴史は、資生堂の文化活動の歴史ともいえる。今回の第五次椿会は、今現代美術の一線で活躍盛りの、画家、彫刻家9人のメンバーから新たに構成された。過去のやり方に囚われることなく、今の時代性を重視したスタイルとなっている。
オリジナル作品を制作し出品する企画展によくあるように、特別にテーマを決め、それに基づいて作品を制作するのではなく、各アーティストが自由に個性を活かした作品を出品するのが椿会のモットーとのこと。確かに統一したテーマではないのだが、9人の作品をひとつの場に置き、まとめて俯瞰することで、あたかも全体が一つのインスタレーションであるように見えてくるところが興味深い。
これが多分、新・資生堂ギャラリーという空間の持つマジックなのだろう。そう思ってみると、確かに個性と主張のある空間であり、作品を無条件に受け入れる場ではなく、あるイメージの中に呑み込んでしまうスペースであることがよくわかる。この空間だから成り立つし、他のスペースでは成り立たない展示会。そういう特性を活かす意味では、新たな椿会のスタイルはなかなか当たっているかもしれない。



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コントラプンクト展 デンマーク国家のデザインプログラム
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

デンマークを代表するデザイン会社であり、ヴィジュアル・アイデンティティーのデザインに実績を持つ「コントラプンクト」が手がけた、デンマークの国家機関、公共機関のヴィジュアル・アイデンティティーをトータルにデザインするプロジェクトを紹介する展覧会。これらのVI計画を通して、デンマーク国家の国際的なアイデンティティー・イメージを確立しようというプロジェクトにもなっている。
基本的には、デンマークの紋章として伝統的に用いられてきた「王冠」のモチーフを使い、これまた古くからなじみのあるサブモチーフと合わせ、各組織のヴィジュアル・アイデンティティーを作るプロジェクトである。対象は、各官庁をはじめ、鉄道、郵便事業等の公共企業、美術館、図書館、劇場等の施設など、多様にわたっている。それも、一様の基本パターンに基づくトータルなVIではなく、それぞれの機関、組織の伝統とイメージをふまえたモノとなっている。
また、個別のVIプランもハンパではない。単にヴィジュアル・イメージだけではなく、デンマーク語を表記するための特別の文字セットを含む専用のロゴ(この字体自体、伝統的なスタイルを踏まえているようだ)や、サインプラン、果ては、たとえば鉄道なら車輌の塗装デザインイメージまで含む本格的なCIプランになっている。そう考えてみると、こういうことをやろうとすること自体、壮大なプロジェクトである。
もともと、ヨーロッパには領主ごとに紋章でアイデンティティーを示した伝統がある。そういう意味では、王国であるデンマークが、王立の諸機関のアイデンティティーを「紋章」で示そうという動きが起こるのも納得できるし、そのためにエネルギーを掛けるモチベーションも理解できる。とはいうものの、それを本当に、国家規模でやってしまうというのは、半端ではない。やはり、ある程度コンパクトであり、またコストを掛けてもアイデンティティーを持つことが国家存立の基盤となっているがゆえになせるワザということができるだろう。でも、これやれたデザイナーは幸せだね。



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黄金期フランドル絵画の巨匠たち展
伊勢丹美術館 新宿

これまたぼくの趣味からすると、はなはだしく縁遠いモノではあるが、またまた伊勢丹の中西さんからチケットをいただいてしまったので行ってみた。逆にこのくらい知らないと、見るのが実に新鮮だし、好奇心すら感じてしまう。ありがとうございます。ということで、らしくはないけど、フランドル絵画である。これはこれでまた妙に日本で人気が高い。そのあたりの秘密も発見できたらいいな、という気持ちで新宿へむかう。
なんというか、じっくり見てゆくといろいろ発見がある。面白い。17世紀の後のほうになってからの作品はさておき、16世紀の作品などは、どう見てもわれわれの思う「ヨーロッパ」的なものからは離れたテイストを持っている。まるで第三世界のアーティストや素朴派のようなニュアンス、あるいはファンタジーやメルヘンイラストに通じるニュアンス。どちらも近世以降のヨーロッパの絵画からは感じられないニオイにあふれている。北方ルネッサンスと呼ばれるが、全然違う。大陸的というか、ケルト的というか、中世まで残っていたユーラシア大陸的な遺伝子が濃く感じられる。
そういうこともあって、これまた西欧絵画としては珍しい風俗画は、土着的なパワーを感じさせる。タッチはリアルではないが、表情はマンガのようにリアリティーがある。また静物画のリアリズムも一種独特なものがある。このあたりのニュアンスを見てゆくとフランドル絵画が日本で人気が高いというのもうなずける気がする。イタリアンルネッサンス以降の「王道」の作品よりは、どう見ても日本の風土にあっている。
しかしよく考えて見ると、フランドル絵画が全盛だった16〜17世紀は、日本が大航海時代に組み込まれ、その後鎖国に至る時代である。そして、その中で最終的に日本とヨーロッパの窓口となったのはオランダである。そのオランダの国力が支え育てたのが、フランドル絵画の画家たちである。こうしてみると、まんざら関係がないわけでもない。実際、江戸時代初期の日本の人々が見たであろう「蘭画」は、この手のモノだった可能性が高いワケである。そう考えると、ジャポニズムとは逆の意味で、いろいろな刷り込みがあった可能性もある。なかなか面白いテーマではある。



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山からおりた本尊 国宝醍醐寺展
東京国立博物館 上野

京都にある寺院の中でも、郊外にあるため応仁の乱の被害に合わず、京都最古の建築物があることや、醍醐の桜の故事など、名前はよくしられているものの、市内の社寺に比べると今ひとつ縁遠い感じのする醍醐寺。今回の展覧会は、本尊の薬師三尊像をはじめ、仏像、仏画、経典、工芸美術品等、あらゆるジャンルの寺宝を集め、醍醐寺の全てを見せるものだ。とにかく、内容の充実はスゴい。こういう展覧会はしばしば、目玉以外はほどほどというモノが多いのだが、目玉クラスのがゾロゾロある。
はっきりいって、ハンパじゃない。見ているだけで、その質、その物量に圧倒されるかのようだ。しかし、それだけではない。醍醐寺はなかなか簡単に見られないのだ。行ったことがあるヒトはわかると思うが、そもそも京都の市中からけっこう離れている。最近でこそ地下鉄が出来たが、山科の向こうである。それだけでなく、境内が目茶広い。山の上のほうまで行くとなると、これは間違いなく一日仕事である。それを考えると、実にご利益たっぷりの展覧会だ。
さて、これだけではなくおまけもある。東博の常設展示のほうも、ゴールデンウィーク対応なのかいつになく充実している。何気に風信帖が出ていたり、高幡不動のご本尊が来ていたりと、こちらも見ごたえある。特別展クラスの出し物だ。まあ、これを含めて全部ゆっくり見ていると、それこそ醍醐寺よろしく一日仕事になってしまいそうだが、簡単に入場料の元は取れるだけの内容だ。近来まれに見る大サービスの特出し(笑)。行くべし。ただし、流石に混んでいるが。



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