Gallery of the Week-Jan.02●

(2002/01/25)



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To be or Not to be サム・テイラー・ウッド展
資生堂ギャラリー 銀座

サム・テイラー・ウッドは、写真や映像で表現するイギリスの女性アーティスト。古典的絵画の名作や、宗教的なモチーフを引用することで、ストーリー性の高い作品を作ることで知られている。今回の展覧会は、彼女の写真作品を中心に、近作12点を紹介する、日本ではじめての個展ということである。
しかし、はっきりいってよくわからない。何かを言いたいのだろうが、ウマく感じ取れない。それはぼくのほうの問題といえばそうなのだろう。多分、モチーフとなった古典的な絵画作品やキリスト教上の説話が、ヨーロッパ文化を背景とする人達にどううけとめられているのかがわからないからだとおもう。隠喩で引用しているのに、引用元の意味がわからないのでは、これはどうしようもないということだ。
きわめて私小説的な、自分にしかわからない作品というのもあり得るので、アートの作品としてこれが悪いということではないが、なんか、それをこれだけデカく強烈に見せられるというのも、落ち着きが悪い。まあ、ある種のナルシズムの主張がテーマだと思えばいいのかもしれないが、あんまり共感できない。ごめんなさい。



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ウーヴェ・レーシュ展
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

ウーヴェ・レーシュは現代ドイツを代表するデザイナーのひとりということである。確かに、ひとかどの人であることはそれなりによくわかる。しかし、ぼくは見ていて面白くない。というか、不快感、反発さえ感じる。それは、テーマの出し方が気に障るからだ。こういうテーマで作った作品をならべるというのはズルい。フェアじゃない。これって偽善じゃないの。そういう気さえする。
反核でも、反ナチでも、弱者の味方でも、なんでもそうなのだが、テーマそのものを、建前上は批判が許されない地平に持っていってしまっている。これでは、正当な評価、正当な批評ができないではないか。そもそもグラフィックデザインの価値って、そういうものなのか。そもそもぼくは美術に政治、それも弱者の政治を持ち込むのが大嫌いだ。ましてやこれは商業美術の話ではないか。
優れたグラフィックデザイナーなら、ネオ・ナチのポスターも、反ナチのポスターも、クライアントたり得れば、同じようにこなし、同じようにインパクトのあるものを作れなくてはいけない。そもそも、広告にしろ、デザインにしろ、ビジネスなのだ。ビジネスとして成り立ちうる基盤を備えていてはじめて評価し、議論できるものだ。
そういう意味では、デザイナーであるなら、市場原理に忠実であり、市場原理に従って価値評価される必要がある。そこからハズレたところで勝負してきても、それはお門違いというものではないか。コンセプチュアル・アートなら(個人的な好き嫌いは別として)、それなりに評価することは可能だろうが、広告屋としてはとても複雑な気持ちである。もっとも、ドイツ社会のタテマエ、というものもあるのかもしれないが。



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ウィーン分離派 1898-1918 クリムトからシーレまで
Bunkamura ザ・ミュージアム 渋谷

世紀の変わり目には、世紀の変わり目の風を。とばかりに新春とともに開催された「ウィーン分離派」展。世紀末とともに語られることが多いものの、実はその初期活動も20年にわたって続いていた。その全体像を伝える展覧会としては、国内初めてのものという。確かに分離派というと、サブタイトルにもあるように、クリムト、シーレということになり、もう少しイメージを膨らませても、アールヌーボーをはじめ、その後の20世紀前半のグラフィックデザイン多大な影響を与えたデザインワークの印象が中心になっている。
実際、それらが核となっているのは確かだが、決してそれだけではない。それだけではないというより、それらさえ主要であるものの一部分でしかないことがわかる。いってみれば、なんでもあり。新しいもの、時代を感じさせるものは全てウェルカムというのが、実は分離派の真骨頂だったことがまざまざとわかる。自分が不勉強だった恥をさらすだけなのだが、改めて展示を前に思い知った。
そういう意味では、分離派の象徴が、人や作品、作風といったものでなく、展示館という「ハコモノ」であることは、実に象徴的だ。なんか、言葉は悪いが「60年代末」のごった煮状況を思い起こさせる。そう、まるでウッドストックだ。今からみれば、CSNY、テン・イヤーズ・アフター、ザ・フー、ジミヘン、サンタナ、スライと、こんなメンツが横並びで出てきて、同じように受け入れられるのって変だと思う。しかし当時は、これが時代だ、という一語でみんな横一線で受け入れてしまった。
そこまで思いをめぐらすと、「時代には時代の芸術を、芸術にはその自由を」と語った分離派のスローガンもなかなか味わい深いものとして感じられる。19世紀末のウィーンの芸術シーンって、60年代末の日本のサブカルシーンなんだ。けっこう、これって深い蘊蓄かもしれないな(笑)。



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