Gallery of the Week-Apr.04●

(2004/06/18)



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奈良原一高 [時空の鏡:シンクロニシティー]展
東京都写真美術館 恵比寿

50年代半ばから活躍をはじめ、写真の時代だった60年代でも、独自の境地で表現を追い続けた奈良原一高氏の、日本初の回顧展。写真美術館の2フロアを使用し、過去の各時代の代表作を網羅するとともに、最新作を含む、最近の大型作品を展示する個展。
その経歴からも想像されるように、50年代〜60年代に活躍した写真家としては珍しく、積極的に「作画」し、作品を仕上げてゆくアーティスト性の高さが特徴となっている。今でこそ、写真を「メディア」として使う現代美術のアーティストは多いが、当時は、芸術的作品でも、ジャーナリスティックな視線を持ったモノが多く、異色の存在である。考えてみれば、当時は写真が表現の前衛にいたワケで、こういう異才も許してしまう包容力があったということだろう。今なら、写真家ではなく、現代美術アーティストとして登場することになるのだろうから。
しかし、大体この手のヤツというか、現役のビッグネームの半生を振り返る展覧会というと、ぼくにとっては、そのほとんどを自分の体験として知っているか、それでなくても、少なくとも生まれてからのことだったりするコトが多い。まあ、それだけ年を取ったということなのだろうが、なんか複雑な思いがするなあ。基本的には、団塊の世代なんかと違って、今に続く時代の中で育ったんだ、と思って納得するようにはしているのだが。



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ジャパン・アヴァンギャルド 〜アングラ演劇傑作ポスター展〜
ロゴス・ギャラリー 渋谷 他

ここのところよくお目にかかる、70年代を中心とするカウンターカルチャー。その中でも、多様な人材を集め文化発信の中心となっていたのは、なんといっても演劇だ。直接芝居に関る、俳優、演出家、脚本家といった人材はもちろん、ミュージシャンや建築家、デザイナー、写真家といった、あらゆるクリエーターがその周辺につどい、独自の世界を発信していた。その象徴として、各劇団公園のポスターを集めた展覧会。パルコ出版から出版される、同名の書籍の出版と連動した企画でもある。
昨今、関連する企画展の多かった天井桟敷をはじめ、状況劇場、演劇センター68/71など、懐かしい名前が並ぶ。懐かしい、と思ってしまうところが、すでにオジさんのオジさんたる由縁かも知れないが、やはりまがりなりにもその時代の空気を知っているモノにとっては、タイムカプセル「空気の缶詰」なのだ。余談になるが、デモのあった次の日の、催涙液を混入した放水のあとのニオイとか、その場を見た人間でなくてはわからないモノの一つだろう。
それはさておき、この手の展覧会としては珍しく、創成期の60年代から、「アングラ」という概念自体が死語になる80年代まで、広くカバーして収集している所が面白い。まるで、生まれてから死ぬまでという感じで、そのエネルギー感の変化が、ポスターの表面からも感じられる。そういう意味では、変曲点はやはり74〜5年ぐらいだろうか。団塊の世代が完全に送り手の側に入ってしまうところ。この辺は、ぼくにとっては永遠のテーマの一つなのかもしれない。



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現代デンマークポスターの10年
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

この10年間のポスターの代表作から、デンマーク国立のデザイン振興機関である、デンマーク・デザイン・センターによるセレクションで、デンマークのグラフィックデザインの今を見つめる企画展。デンマークといえば、スカンジナビア各国ほどではないものの、JR北海道とも提携している、デンマーク国鉄のデザイン・アイデンティティーのように、独自のデザイン文化を持っていることで知られる。しかし、グラフィック関係はあまり情報がないだけに、興味を惹かれる。
結論からいってしまうと、これは極めてエキゾチック。あまりに独自なアイデンティティーに驚いてしまう。中東のデザインシーンも、南米のデザインシーンも、それなりに面白かったが、やはりグローバルなデザインの価値観の中に位置付け得るモノであった。しかし、ここに集められたポスターの個性は何というべきなのだろうか。
個々に見てゆけば、1920年代っぽいのとか、50年代っぽいのとか、いろいろ語ることはできるのだろうが、別に引用や借用ではなく、明らかに今の時代のデンマークのトーンアンドマナー何だと思う。ある意味では、こういう「個性」こそが、ヨーロッパをヨーロッパ足らしめているのではないだろうか。政治や経済といった、理性的部分では、EU統合のように、新しいスキームが生まれているが、その一方で、もっとネイティブなところでは、民族意識や伝統文化への回帰も強く出ている。まさに、安易なグローバル化にははしらないところにこそ、ヨーロッパならではの伝統があるのではないか。そんなコトまで感じさせてくれる。

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発掘された日本列島 2004
江戸東京博物館 両国

その年に新発見された考古資料を集めた、「発掘された日本列島」展。今年は、シリーズがはじまって10周年ということもあり、今までの東博の狭い部屋での展示からうってかわって、江戸東京博物館の企画展会場をフルに使った、ゴージャスな展示に生まれ変わっての登場である。
会場は、時代別に旧石器時代から、近世まで、最近発掘された各時代毎の遺跡およぶび、そこからの出土品の紹介と、10周年記念ということで、この10年間に発掘され、時代を画することになった、「歴史的遺跡」の紹介という、二つの軸から構成されている。
広い会場をフルに使い、各遺跡からの出土品についても、たとえば、大型の土器や埴輪なども、タップリ展示してある。ある意味で、新出土品を使った、日本の考古歴史そのものの展示といってもいいくらい充実している。こういう通史的な考古物の展示は少ないだけに、中々見ごたえがある。
しかし、この十年間における「話題遺跡」といえば、なんといっても「捏造石器」ではないだろうか。反省の意味も含めて、なんか言及があるかな、とひそかな期待を持っていたのだが、それこそ「カケラ」すらなかった。NHK紅白歌合戦の歴史における「ミソラ」みたいなものだろうか。あれも、「誰もがまた見たい紅白の名シーン」だと思うのだが、絶対その手の番組では見られないし(笑)。



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