Gallery of the Week-Mar.05●

(2005/03/25)



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飯田竜太 「Story line」
ガーディアン・ガーデン 銀座

今度はグラフィックの方の、第22回「ひとつぼ展」グランプリ受賞者である、飯田竜太氏の個展である。「本」を物理的な素材として創り上げたオブジェ、というより、これはもう彫刻といったほうがいいかもしれない。とにかく、コロンブスの卵ともいえるような、発想の転換で、どこにでもある素材から、どこにもない世界を表現してしまう、独自の世界を持ったアーティストである。
「本」というと、その社会的な存在感や、アカデミズムやジャーナリズム的な意味づけが先に立ってしまい、ともすると、人々は単なる紙の塊以上のプレゼンスを感じ取ってしまう。飯田氏のユニークな点は、そういう「シガラミ」から自由に、純粋に造形素材としての「本」の魅力や面白さを引っ張り出した点だろう。
まるで、本というメディアを知らない赤ん坊や宇宙人が、純粋にそのカタチや色の面白さに着目したような造形。あたかも、面白いカタチをした河原の石や、海岸の流木からイマジネーションが拡がるように。これが元になっているからこそ、頭でっかちにならず、純粋に表現が先にたった作品となっているのだろう。
それは、あたかもフォンタナの「裂け目」が、その切れ目から滴れる絵の具の生き生きとした表情ゆえ、絵画の象徴としてのキャンパスを切り裂くこと以上に、表現のためにはこれ以上の手段はない、と人々に実感させるのと通じるところがある。本なんて、読み手の思い入れを取り去ったら、色と模様のついた紙の塊でしかない。かえって、「知識」が意味を持たない時代だからこそマッチしているのかもしれない。



3/3w
文化遺産としてのモダニズム建築 DOCOMOMO100選展
汐留ミュージアム 新橋

20世紀の近代モダニズム建築を見直し、その保存と再評価を進める国際組織DOCOMOMO(The Documentation and Consservation of buildings, sites and neiborhoods of the Modern Movement)。その日本支部が、世界各国で行われているプロジェクトと並行する形で、日本の代表的な現存モダニズム建築100点を選び出した。これを記念して、この100の現代建築を紹介する企画展。
一部で誤解している向きがあるようだが、ぼくは決して「アンチ・モダニズム」ではない。それどころか、モダニズムとしての美学を感じさせるモノはキライではないし、高く評価している。ぼくが嫌いなのは、モダニズムの「カタチ」に、必要以上の意味性や価値性を見出そうとすることだけである。虚飾がないのがモダニズムの条件だし、カタチには付加価値を見出す余地がないハズだ。それは、モダニズムが「カタチが機能に殉じる」美学だからだ。
機能性をとことんまで追求するあまり、カタチにおける「美」を追求する上でどうしても必要となる冗長性を切り捨てる。ちょうど、桜が、その散り際の美しさゆえに愛でられるように、その冗長性のなさが、ある種の美意識にまで達している。ここに、モダニズム的な美学を感じる。ちょうど、機能に徹した超音速戦闘機のデザインは、空気との戦いの中で、ほとんど自由な発想が許されない分、ある種の美しさがあるように。
そういう意味では、モダニズムとは、その機能がアウト・オブ・デイトになったら、もはや消え去るしかないからこそ美しいのだ。こう考えてみると、ここにはモダニズムと呼ぶには、冗長性の高い建物が多い理由もわかるというモノ。実は、こういうところに出てこないまま、ヒソかにその使命を終えてしまった建物こそ、もっとも「モダン」だったのではないかという気がする。



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マルセル・デュシャンと20世紀美術 -芸術が裸になった、その後で-
横浜美術館 桜木町

アートの位置付けを大きく変え、20世紀の美術史上で特異な存在を示すマルセル・デュシャン。その主要な「作品」と、陰に陽にデュシャンの影響を感じさせる「その後」のアーティストの作品とを対比させる形で提示し、デュシャンの現代美術への影響を存在感を語る企画展。現代美術にこだわりのある企画展を開催してきた、横浜美術館らしい企画ともいえる。
会場は、キャンバスに油彩絵具で「絵画」を書いていた時代の作品に始まり、「泉」に代表される「レディーメイド」「大ガラス」「遺作」など、主要な作品ごとに、それにまつわるデュシャン本人の作品や資料と、その影響を感じさせる現代作家の作品をまとめる形で展示されている。
改めて感じるのは、デュシャン自身の作品は、オーソドックスなアートとコンテンポラリーなアートという二分法で行くならば、あくまでもオーソドックスのほうにあり、その内部からの破壊者という立脚点を取っている点だ。だからこそ、彼が破壊した古いアートのガレキを拾って再構築することにより、新たなアートを構成することも可能だし、彼のとった表現をなぞることで、古いアートへの斜に構えたパロディーも可能ということになる。
だからこそ、同時代のアバンギャルドなアーティストに比して圧倒的にわかりやすく、ポピュラリティーも得ているのだろう。そういう意味で言えば、デュシャンといえば、「レディーメイド」に作品名をつけることで、古いアートの枠組みを破壊したように思われがちだが、「レディーメイド」であるがゆえに、サインだけすることで、何度でも作品を「再製作」してしまったところにこそ、破壊力の源泉があったのだということも、改めて気付かされる。



3/1w
元木みゆき 「学籍番号011145」
ガーディアン・ガーデン 銀座

第22写真「ひとつぼ展」グランプリ受賞者である、元木みゆき氏の初の個展であり、グランプリ受賞の副賞として実施されたモノ。独特の視点を活かして、学生生活の日常をデジカメで切り取った組写真が、会場いっぱいに展開する。確かに、インパクトの強い、他にない強烈な個性があふれている。
そのポイントは、画面が、スチル写真の画面のあり方とは全く違っているからだろう。止まった映像といったほうがいいくらい、そもそも動画なのだ。発想が画像でなくて映像になっている。一つ一つのカットをマジマジとみると半ば判じモンになってしまうのだが、カットの前後にあるであろう「コマ」を想像すると、実に生き生きとイメージが捉えられる。
そういう意味では、是非スチルの組写真ではなく、映像作品を発表してほしい気がする。映像としても、相当にユニークなモノを創り出すのではないかと期待される。それにしても、ここに登場してくる若者の表情の多彩なこと。ものスゴくイキイキしたヤツから、ほとんど目が死んでいるヤツまで千差万別。ある意味で、これが今の学生の実態なんだろうと思うが、これが一番妙かもしれない。



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