Gallery of the Week-Jun.06●

(2006/06/30)



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小さな骨の動物園展
INAXギャラリー 京橋

動物の骨の持つ、カタチの面白さや、構造の美しさを、実際の骨格標本でみせる展示会。アートとは一風異なるが、ギャラリーで行われている展示会なので、まあいいか。そういう意味では、科学博物館というか、理科準備室というか、ノリはそっちである。室内の空気も、それ系の「標本の臭い」がいっぱい。しかし、限られたスペースの中に、所狭しと並べられた骨格標本は、先住民アートに通じる、ミニマルな美しさがある。
全身骨格こそ、魚や鳥、小動物など、小さめのモノが多いが、頭部や脊椎などは、大型獣のモノもフィーチャーされ、確かに「動物園」である。科博には、去年の模様替えで「剥製の動物園」ができたが、あれが上野とすれば、井の頭といおうか、鴨川シーワールドに対する、犬吠崎マリンパークというか、こじんまりとした面白さはある。その分、一つ一つはじっくり見ることができ、いろいろ発見もある。もともと、生物とか地学とか、理科でも「標本」を扱う科目はあまり得手ではなかったのだが、こうやって見るとこれはこれで面白い。
INAXギャラリーは、INAXのショールームビルの最上階にある。それほど大きいビルではないのだが、さすがにどの階にも、ちゃんとトイレが設置されている。INAXといえば、もともと衛生陶器メーカーなだけに、どこも最新式のトイレが設置され、それ自体が「使用感」を味わえるショールームになっているのかと思ったら、あに図らず。内装は、ごくごく通常のトイレであった。もちろん、INAX製品を使用し、手入れはよく行われているので、その機数の多さとあいまって、「銀座周辺で、タダで使えるきれいなトイレ」という意味では、ポイントが高いかもしれない。



6/4w
田名網敬一主義展
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

60年代から、アニメーションや絵画、イラストレーション、エディトリアル・デザインなど、多彩な領域にわたり、前衛的で独自な表現世界を築いてきた田名網敬一氏。その40年以上の活動の中から、グラフィックデザイン作品に焦点を当て、最近の作品と、60年代以来のポスター作品でその足跡を振り返る企画展。田名網氏というと、60年代のサイケデリックブームの頃に一世を風靡し、時代の寵児となっただけに、その時代性により捉えられることが多い。
しかし、時代を越えた作品に一貫して流れる世界を見ると、彼の個性はサイケデリックがブームになる以前から彼独自の世界を築いていたことがよくわかる。それが、偶然時代とシンクロしてしまったから、アタってしまった。このあたりが、アートディレクションに強いタイプのヒトと違い、アーティスティックな世界を築ける由縁なのであろう。
彼はまたアニメーションを得意とするが、静止画像のグラフィックでも、その志向はよくわかる。アニメーションでは時系列の「動き」こそがストーリーを伝え、「絵」はその動きを作り出すための手段に過ぎない。彼のグラフィック作品でも、この「ストーリー」を伝える動きこそが主軸となり、画像はあくまでも演者なのだ。それが60年代に時代感覚と妙に一致してしまった理由でもある。
しかし、それ以上に面白いのは、90年代後半に入ってディジタル機器を使いこなすようになると、この発想が実に生きてくる点だ。ディジタルの世界もまた、コピーアンドペーストやモーフィングが容易な分、時系列的動きが静止画でも重要になるし、表現しやすい。まさに、ここにきて2度目の時代とのシンクロが起きてしまったのだ。時代より強烈な個性を持っているヒトは、何よりも強い、ということだろう。



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イサム・ノグチ 世界とつながる彫刻展
横浜美術館 みなとみらい

日本人の父と米国人の母の間に生まれ、世界をまたにかけて活躍したアーティスト、イサム・ノグチの大型回顧展。大物アーティストの回顧展も、最近はあまり行ってなかったので、こういう企画展に行くのも久々、という感じがする。それにしても、かつては「陸の孤島」のようだった横浜美術館も、みなとみらい線が開通したおかげで、簡単に行けるようになったものだ。
イサム・ノグチといえば、金属や石を使った彫刻家、陶芸家といったアーティストとしてのみならず、建築やプロダクトのクリエーターやデザイナーとしても活躍し、広い領域にわたる多彩な活動で知られる。その中でも、今回の展覧会は、いわばアーティスティックな領域を中心にその活躍を振り返る構成となっている。
発想もスケールも大きい作品を、「世界とつながる彫刻」と名付け、今回のメインテーマとしている。作品は「顔」、「神話・民族」、「コミュニティーのために」、「太陽」の四つのキーワードによって分類され、それぞれ充分なスペースをとって展示されている。
もちろん「作品にはお手を触れないでください」なのだが、なぜか触れたくなってしまう。というか、見ている者を引き寄せるような不思議な感覚こそが、イサムワールドの神髄なのだろう。そういえば、客の入りがいかにも悪そうなタイミングで行ったのだが、けっこう観客も入っていた。そういう意味でも、「引き寄せる」ものがあるのだろう。



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天上のシェリー 西野達展
メゾンエルメス・フォーラム 銀座

ドイツ在住の日本人アーティスト西野達氏が、エルメスとのコラボレーションで、とんでもないインスタレーションを銀座に出現させた。西野氏といえば、公共的なモニュメントを取り込んだ空間を作るという、独自のスケールの大きいインスタレーションで知られているが、今回の作品は、銀座のメゾンエルメス屋上に燦然とその姿を見せる「馬」を、部屋の中に取り込んでしまうというもの。
屋上にイントレで仮設の構造物を作り、その上に女性の一人暮らしをイメージした部屋を建設。そのベッドの上に馬が跳ねている、という仕掛け。一度あの像を近くで見たいと思っていただけに、これはまたとないチャンスでもある。8階のフォーラム(改装中)から階段で屋上へ、そこから仮設の階段で「部屋」の中へ入ってゆく。これも竹中工務店がちゃんと建築許可をとって仮設した、というのだからスゴい。
非日常的な、シュールな空間という意味では、これだけでも充分なインパクト。テーマパーク並である。そして部屋に入ると、像とご対面という次第。件の像は、実はFRP製で、ペンキでの着色でありました。ご丁寧に、旗もエルメスのスカーフになっていたり。それにしても、スタッフが4人張りついているというのも大したモノ。家を作品として作るというのはあったが、これは完全にアイディアの勝利。是非一度は見てみるべきだ。
銀座の上空で、仮設の構築物の上を歩くというのは、ほどほどスリリングでなかなか新鮮な刺激。見慣れた街並みも、ちょっと変わった雰囲気に見えてくるから不思議。今なら、隣のビルのネオンが工事中で、妙な一体感もあるし。しかしスリリングといえば、上空の階段より、メゾンエルメスのエレベータ。なんと、あの「シンドラー社」製なのだ。暴走するんじゃないか、挟まれるんじゃないか、こっちのほうが余程ヒヤヒヤする。



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デスティニー・ディーコン展
東京都写真美術館 恵比寿

オーストラリアの現代美術アーティスト、デスティニー・ディーコンの、本邦初の個展。昨年、シドニーで行われた彼女の初の個展から選び抜いた作品を、巡回展用にアレンジしたモノ。豪日交流年関連企画でもある。デスティニー・ディーコンは、最近オーストラリアで注目を集めるインディジネス・アーティスト(先住民族出身の芸術家)の代表格であり、独自の世界を構築し活躍している。
デスティニー・ディーコンについては、全く予備知識がない。実は、年に何度かは、今週はどれを見に行こうか考えて、ハタと迷ってしまう「端境期」がある。今週も、実はそれ。こういうときは、全く知らない作家やジャンルを狙うといい、というのが今までの経験。ということで、足を運んでみた。
彼女は、人形や身近な人々をモチーフとし、写真やヴィデオを通じて「ストーリー」を構築するという手法で、作品を制作する。基本的には、オーストラリアで先住民が置かれてきた社会的ポジショニングが、そのテーマの中心となっている。社会的メッセージのある「作品」というのは、えてしてそのバックグラウンドがわからないと、なかなか「読みづらい」ところがある。
彼女の作品も、実はそうである。読み取ろうにも、読み切れないメッセージがあるような気がして、何とも歯切れが悪い。その分、なんか後味が悪く、重いのだ。しかし、もしかすると、この「キレの悪さ」こそが、これらの作品の一番のメッセージなのかもしれない。なんか、そんな気もしてきた。



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