Gallery of the Week-May.07●

(2007/05/25)



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本橋成一 写真と映画と
クリエイションギャラリーG8/ガーディアン・ガーデン 銀座

タイムトンネルシリーズのvol.24として、クリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンを会場として開かれた、写真家としても映画監督としても、独自の世界を持った作風で知られる本橋成一氏の作品展。写真学校時代の習作に始り、「炭坑<ヤマ>」「サーカスの時間」「上野駅の幕間」「魚河岸 ひとの町」「老人と海」といった代表的な作品、雑誌の企画で撮影した作品、ライフワークともいえるチェルノブイリ関連の作品、現在も制作中の「パオパブ」まで、主要な作品を網羅した構成となっている。
本橋氏の作品のテーマは、一つ間違うと社会派やフォトジャーナリストと思われてしまいそうなモノが多いが、それと正反対の視線を持っているのが特徴といえる。声高に「弱者だ」「社会正義だ」と叫び出しそうな状況の中で、等身大の人間としての優しさ・強さを描いてゆく。エッジな状況下だからこそ、生身の飾らない人間の表情が、周りに勇気を希望を与えるだけでなく、ある種のステレオタイプな「主義」に対する風刺にさえなっている。この「柔よく剛を制する」感じは、いかにも風流を感じさせる。
ところで本橋氏は、実は東中野駅近くの山手通り沿いにあった、「青林堂書店」という本屋さんが実家である。ぼくが子供のころは、中央線の中野と東中野の真ん中付近に住んでいた。距離的には東中野の方がちょっと近く、日々の買い物などは、東中野の商店街に行くことが多かった。ということで、この「青林堂書店」には、いろいろとお世話になった。また、ぼくが中学生で、写真に興味を持ち始めた頃、本橋氏が写真家として活躍をはじめたこともあり、いろんなカタチでご縁があったりする。そのあたりの思い出まで含めて、なにかと思うことが多い写真展だった。



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「昭和」写真の1945-1989 第1部 オキュパイド・ジャパン(占領下の日本)
東京都写真美術館 恵比寿

東京都写真美術館では、毎年テーマを決めて、収蔵作品による企画展を行っているが、平成19年度の東京都写真美術館の収蔵品展は、「「昭和」写真の1945-1989」と題して、4部構成で展開される。既に歴史になってしまった昭和、それもその2/3以上に渡る第二次世界大戦後の昭和を、それぞれの時代を焼きつけた写真で振り返ろう、という企画である。
今回はその第一回目として、「オキュパイド・ジャパン」と題し、昭和20年代にスポットを当て、[パート1]廃墟-焦土からの出発、[パート2]オキュパイド・ジャパン-闇市・PX・女性、[パート3]解放-エロスとリアル、という3部で構成されている。有名な作品も含む、130点あまりが出品されている。
全体を見通して気付くのは、作品の不思議な偏りである。選者の意思もあるかもしれないが、フォトジャーナリズム的な「社会派」と、極端に内面に寄った「表現派」と、どちらかしかないのだ。すくなくとも、この前行われていた企画展である「マグナムがとった東京」の昭和20年代の作品には、そういう面はなかったので、これは社会の側というより、写真家の側の問題である。
よく考えてみれば、これは戦前の日本の写真のあり方をそのまま引きずっている、ということに他ならない。もっとも、この時代にこれらの作品を撮影したのは、すでに戦前にエスタブリッシュされていた写真家たちなので、戦前と同じ視線を持っているのが当たり前といえば当たり前である。そういう意味では、図らずして、大衆や文化という面では、戦前と戦後は断絶ではなく、連続的な変化であることを示しているといえるのではないだろうか。



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田中功起 「サウンド・テストほか」
NADiffギャラリー 表参道

アートショップ「NADiff」の小さなギャラリーで開かれた、田中功起氏のこじんまりとまとまった個展。日常性を切り取った映像とインスタレーションを中心に活躍する田中功起氏の、この10年間の活動を収録した作品集の刊行を機に行われた、作品集に収録されたビデオ作品の上映と、インスタレーションの展示である。
空間自体と、作品の持ち味が妙に共鳴していて、ここを会場とした意味がしっかり伝わってくる。ところで、この映像作品。なんというか、みうらじゅん氏の「アウトドア般若心経」を思い起こしてしまう。が、そこまでヒトをほほえませることを割り切っていない感じがするのが、ちょっと残念。このコンセプトで、もうふたヒネりぐらいすれば、けっこう面白いシリーズになるのに、と思ってしまう。
しかし、NADiffは10周年という。店舗のほうでは、記念セールをやっていた。最近では、東京都写真美術館や東京都現代美術館など、各地の美術館のミュージアムショップを運営するなど、手広く業態を拡げ、アートショップの代名詞的な存在になっているだけに、意外に新しいんだ、という感じである。
それだけでなく、本店はビル建て替えのため、来る5月末で閉店になるという。表参道ヒルズの裏手に位置するだけに、確かに建った頃には住宅地の中に忽然と、という感じだったのだろうが、廻りが大きめのビルばかりになった今となっては、逆にひっそりと佇んでいる感じさえする。



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ART AWARD TOKYO
行幸地下ギャラリー 丸の内

新丸ビルのオープンと共に、また新しいギャラリーが東京に生まれた。行幸通りの地下通路を利用した、行幸地下ギャラリーである。もともと、ここには地下駐車場が設けられていたが、通りの両側の丸ビル、新丸ビルが、共に建て替ったことにより、再開発され、その通路部分がギャラリーとして利用できる空間となった。
基本的には、通路は通路として供されているが、両側の壁面に、ちょうど昔の百貨店のショーウィンドウのようなガラス張りの空間が、延々と設置されている。ここに作品を展示し、ガラス窓越しに眺めるという寸法である。ギャラリートしての空間というよりは、空間を演出するためのギャラリーという感じであり、これはこれでやり方によっては、イベント的なモノも含め、けっこう使い手がありそうだ。
そのオープニングとして開かれたのが、ART AWARD TOKYO。これは、東京・京都を中心とする美術大学の卒業制作展に出品された作品の中から、主催者が選抜審査した作品を展示し、その中から公開審査でアワード受賞者を選び出す美術イベントである。都合、51点の作品がノミネート、展示されている。
ある種、主催者の方針も入っていると思うが、比較的オーソドックスな作品が多く、いい意味で「若い」作品が目立っていた。昨今、若者が老成し、身の丈にあった範囲にしか挑戦せず、リスクを取らない傾向が強く見られるが、まだまだ失敗をおそれず、「若気の至り」に敢然と挑戦してゆくヤツもいるんだ、と改めて感心したし、安心もした。



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