Gallery of the Week-Jun.07●

(2007/06/29)



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時光 蔡國強と資生堂
資生堂ギャラリー 銀座

今や、現代中国を代表するアーティストとなった、蔡國強氏。火薬を使ったパフォーマンスをはじめ、屋外での大型インスタレーションなど、スケール感の大きい、独特な世界は、まさに21世紀に入ってからの中国の力強い経済発展を思わせるところがある。
そのグローバルな活躍の第一歩となったのが、80年代の日本であり、それ以来、いろいろなカタチで、日本のアートシーンとも深い関係を保ってきた。アジアのアーティストの紹介や支援にも力を入れてきた資生堂は、1994年以来、国内外で行われてきた蔡氏の展覧会やイベントをサポートしてきた。
今回は、その集大成として、四季をテーマにした得意の火薬ドローイング作品と、それを組み合わせたインスタレーション、また、資生堂がサポートしてきた展覧会やイベントの映像により、「蔡ワールド」を垣間見せる企画展である。
ところで蔡さんといえば、個人的にも縁があり、嘉峪関の「万里の長城プロジェクト」とか、現地までいってサポートしたりしたコトなどもあり(公式記録映像のフッテージの一部はぼくが撮影していたりするし)、その後の活躍ぶりにはうれしいものがある。来年の北京オリンピックでは、ビジュアルディレクターを勤めるという。開会式では、文字通り「でっかい花火」をあげてくれるのだろうか。実に楽しみだ。



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JAGDA新人賞受賞作家作品展2007 軍司匡寛・小林洋介・古屋友章
クリエイションギャラリーG8 銀座

日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)は、会員作品集である『Graphic Design in Japan』出品者の中から、毎年、39歳以下の「新鮮かつ、作品の質の高いデザイナー」を選び、贈っているのが「JAGDA新人賞」である。第25回となる今年は、新人賞対象者178名の中から、軍司匡寛氏、小林洋介氏、古屋友章氏の3氏が受賞者となった。3名の受賞作品を中心に、最近の作品を展示している。
古屋友章氏は、「ストロングスタイル」の作風である。今時珍しい正攻法だし、その中で自分らしさをキチンと出しているのだから、実力の高さを示している。今回出品されている、ブライトリングのクロノメーターの広告では、剛直な商品の特性と、氏の作風とがマッチして、異様な迫力を示している。
小林洋介氏は、この3氏の中では、一番イマ風というところだろうか。引き出しの数もけっこう多そうだが、飄々としていつつも暖かみのある作風は共通しており、こちらのほうにこそ本領があるのだろう。受賞作より、それ以外の作品の方がレベルが高いと思うのだが、それがまた実力なのだろう。
軍司匡寛氏は、独特の世界観と構成力を持ち、オリジナリティーの高さが引き立っている。最もその分、好き・嫌いや、ピンと来る・来ない、といったリアクションは、受け手によって大きく違うと思う。しかし、その「踏絵力」もまた、作品の存在感であり、作者の個性の発露ということができるだろう。



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廣村正彰 2D⇔3D
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

企業や商品ブランドの「VI計画」にはじまり、建築や開発の「サイン計画」において、独自の世界を築いて活躍するデザイナー、廣村正彰氏。その「三次元空間の中でのデザイン」を前提にした、オリジナリティーあふれる表現世界を紹介する展覧会だ。
我々の業界では、通常のデザイン作業は、あくまでも2次元のグラフィックデザインが基本である。VIでも、通常扱うものは、商品ロゴでいえば、商品パッケージや広告、ポスターといった「平面上」にあるのが普通だし、企業CIでも、名刺やステーショナリー、企業案内、そして企業広告に展開したところで、これまた「平面上」である。
そういうワケで、通常のグラフィックデザイン作業の延長上でのVI作業が多い。しかし、コンビニやファーストフード、ガソリンスタンドといったフランチャイズ・チェーンのVIとなると、ちょっと違う視点が必要になる。それは、自立型の看板や店舗といった、立体物のデザインが求められるからである。
そこには、当然違う世界が成り立つはずである。通常、こういう3次元的発想は、建築やインテリアといった、立体造形の視点からデザインされることが多い。しかし、廣村氏は、造形のほうではなく、その中の空間に着目する。空間をデザインする発想、それは、2次元にひとつ軸を足したモノとしての立体造形とは全く違う視点である。必ずしも、あらゆる場合に有効な方法論ではないと思うが、ここからでなくては答が出せない局面があることも確かである。



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藤森 建築と路上観察
東京オペラシティーアートギャラリー 初台

建築史家として知られ、最近では極めて独創的な作風の建築家としても知られる、藤森照信氏。今回の展覧会は、2006年のヴェネチアビエンナーレ・建築展で開催された藤森氏の個展を、帰国展として再現したモノだ。この展覧会は、建築家としての作品や作風を示すインスタレーションだけではなく、もう一つの顔である「路上観察」と組みあわせて展示したところにミソがある。
藤森氏の建築家としての作風は、極めて個性がはっきりしており、各人の好き嫌いや評価といった「受け止め方」はまちまちだと思うが、独創性という面は、誰もが納得するところであろう。しかし、その作品は、果して正面から受け止めることができるモノなのだろうか。誰もが、心の隅にいだくこの疑問に、今回の展覧会は見事に応えてくれる。
あの荒木経惟師匠も大活躍した、オルタナティブエロ雑誌「写真時代」。その人気連載に、超芸術「トマソン」というコーナーがあった。藤森氏は、この「トマソン」の流れを汲む、路上観察学会のメンバーでもあったのだ。基本的に、街のおかしなモノ、不思議なモノが大好きで、そこにワクワクするヒトでもあるワケなのだ。で、今回の展覧会の後半は、この路上観察モノとなっている。
答えは、この二つのコーナーのつなぎの部分にあった。建築コーナーの最後に、「影響を受けた世界の建物」の写真が、8点ほど飾られている。ここから、路上観察コーナーへと続く。そして、その連続性には、全く違和感がない。そう、彼の建築の極意は、ドキドキ・ワクワクする「物体」を、地上に現出させるところにある。今回の展覧会は、まさにそのマニュフェストとして受け取るのが正解なのだろう。



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荒木経惟 「67反撃」
Taka Ishii Gallery 清澄

アラーキー67歳の誕生日に際して、6×7判の作品で構成する、11回目の個展。過去の作品に未発表の新作を組み合わせた、100点以上の写真から構成されている。テーマは、まさに彼の原点ともいえる、アナーキーな反骨精神である。過去の作品も、また新しいエネルギーを注入され、作品群の中でまた違ったオーラを放っている。
個人的には、「ウィークエンドスーパー」の頃から見ているので、もう30年以上になるのだろうか。昨今のような「芸術界の巨匠」ではなく、「オルタナティブの巨匠」の頃の勢いは、少しも衰えていない。その健在ぶりを見せつけてくれる写真展だ。それは、やはりフォロワーが登場し得ない強みのなせるワザだろう。
写真における「テーマ」が虚構で、楽屋オチ的なところがリアルという「逆転」は、そもそも「二番煎じ」を許さない。マネようにも、マネた時点で全てがフェイクになってしまい、マネができない寸法だ。コレがある限り、エロ写真らしい作品を極めれば極めるほど芸術になり、シリアスな作品になればなるほどエロになる。
それにしても、このTaka Ishii Gallery、なんともスゴい立地である。完全に「倉庫の5階」であり、エレベーターも貨物用。入り口も、荷物と一緒に出入りする。絶対に見に行く、という目的意識がなければ、とても到達できないような場所だ。その「極北感」が、なかなか作品とマッチしていて、効果をあげている感じだ。



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