Gallery of the Week-Jul.07●

(2007/07/27)



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日本ロック写真史 ANGLE OF ROCK展
LAPNET SHIP 原宿

1960年代以来、アルバムのジャケット写真や雑誌のグラビア、ポスターや広告写真など、日本のロックをヴィジュアル面から支えてきた8人の写真家、伊島薫氏、井出情児氏、ヒロ伊藤氏、迫水正一氏、鋤田正義氏、平間至氏、三浦憲治氏、ハービー山口氏。彼らの代表作を通じ、日本のロックが誕生し、ビッグビジネスとして定着したこの40年間を振り返る写真展である。
この企画自体は、この7月に出版された同名の写真集「ANGLE OF ROCK」を記念し、同書におさめられた写真の中から、代表的な100点あまりを選び出し、作者所蔵のオリジナルプリントで展示するものである。今も印象に残る「名作」も多く、見る者一人一人の心の中に、各作品にまつわる各時代ごとの思い出をよみがえらせてくれる。
しかし、こうやって振り返ると、「音」を聞く以上に、日本のロックというものが、先人も前例も、何もないところから素手で作り上げてきたものであることがよくわかる。そう、70年代は「リファレンスがない時代」だったのだ。何がROCKなのか、誰も知らないし、誰もわからない。そこで基準となるのは、自分がROCKと感じるかどうかだけだったのだ。
それは、あの時代の空気を吸ったことのある者だけが、理解できる感覚なのかもしれない。しかし、真っ暗闇の中を、自分の信念に向かって突っ走ってゆく、なんてことができた時代に育ったということは、きっと幸せなことなんだろう、と改めて感じることができた。ところで、この「ANGLE OF ROCK」、株式会社ぴあの創立35周年記念出版なんだそうだ。しかし、70年代の「ぴあ」って、あくまでもハコやイベンターの側に立ち、アーティストやコンテンツホルダーの側にはいなかったと思うのだが(笑)。そんなことまで、思い出させてくれる写真展だった。



7/3w
2007 ADC展
ギンザ・グラフィック・ギャラリー/クリエーション・ギャラリーG8 銀座

さて、今年もADC賞のシーズンだ。グラフィックのように、ヴィジュアル・イメージに訴える作品は、意図したメッセージ以外にも、時代や風の流れを、饒舌に語ってしまうことが多い。それだけに、今を読む上では、この手の「今年の作品」の傾向は多いにヒントになる。さて、そんな今年を代表する傾向はなんだろうか。それは、真向勝負ということになるのではないだろうか。
この数年、小手先のギミックではなく、真正面からがっぷり四つに組む「ストロングスタイル」の作品が目立ってきていた。そのトレンドの延長上で、よりストレートな勝負をかけている作品が目立つ。それも、自分がもっとも得意とするスタイルで、遠慮なく攻めてくる感じ。いわば、オールスターゲームに出場するスター選手のような感じである。
速球がウリのピッチャーは、あくまでもストレートの剛速球で。ホームランバッターは、姑息なヒットは狙わず、あくまでも特大の一本で。それがウマくハマった作品が、今年の特色ということができる。それも、会員による出展を前提とした作品だけでなく、一般参加で、実際のキャンペーンのために作られた作品にも、全く共通してみられる点が目立つ。
クライアントというのは、自分の業績や製品に自信のあるときしか、正攻法の語り口を好まない。そういう意味では、とやかく言うひとはいるものの、ひとまず日本経済が活性化してきたコトの現れといこともできるだろう。ところで、これだけ正面切ってやっちゃうと、次が大変なんだよね。今までより、さらに速いストレート。来年は、これを投げ切るコトができるのだろうか。それとも、トレンドか変わってしまうのだろうか。



7/2w
昭和への旅は列車に乗って 大鉄道博覧会
江戸東京博物館 両国

「昭和」モノが連続する感じになるが、今週は、夏休み企画として江戸東京博物館で開催されている、大鉄道博覧会である。鉄道そのものが主語となる「鉄道博物館」的な発想というよりは、子供から老人まで広いターゲットに対し、昭和の日本の社会や経済を支えた背骨ともいえる「鉄道」を通して、戦後昭和の世相を振り返ってみよう、という企画展である。
とはいうものの、メインターゲットは、世代全体に「鉄道へのロマン・ノスタルジー」が共有されているとともに、最近の「都心観光」の主役となっている、60歳前後の高度成長世代である。したがって、主たる対象は、新幹線以前の「在来線特急が華」だった時代であり、「集団就職」とか「修学旅行列車」といった、この世代特有の鉄道との接点が、テーマとしてクローズアップされている。
とはいえ、各趣味誌や斯界の大御所の全面的なバックアップの元に構成されているだけに、「鉄」分の濃い人が見ても、それなりに納得できる内容となっている。それにしても、ポスターに使われている臼井氏のカット、会場入り口を飾る竹島氏のカットなど、誰の写真かスグにわかってしまうというのも、深入りし過ぎということだろうか。
もともと、江戸東京博物館自体、中高年に強いし、実際、開幕早々の平日の昼休み時間ではあっても、60前後の、それもカップルが相当数来ていた点をみると、狙いはウマくいっているといえよう。しかし、それでは通常の動員と変わらないワケで、新幹線以降も入れて、子供の動員も考えた方が良かったのではないかという気もする。昭和は、終戦から新幹線開通までが19年、新幹線開通からXデイまでが25年。昭和の戦後は、新幹線がある時代の方が長いのだから。



7/1w
「昭和」写真の1945-1989 第2部 ヒーロー・ヒロインの時代
東京都写真美術館 恵比寿

平成19年度の東京都写真美術館の収蔵品展、「「昭和」写真の1945-1989」。今回は、その4部構成の第二回目。「ヒーロー・ヒロインの時代」と題し、主として昭和20年代から40年代にかけて撮影された人物写真にスポットを当てる。全体は3部構成となり、[パート1]スター-大衆のヒーロー・ヒロイン、[パート2]タレント-メディアがつくり出したヒーロー・ヒロイン、[パート3]有名人-グラフを飾ったヒーロー・ヒロインとして、今回また130点近くの作品が出品されている。
館蔵の収蔵作品を元にした企画展なので、どこかに無理がくることも確かだが、「ヒーロー・ヒロインの時代」とまでいうのは、ちといい切り過ぎという感じもする。とはいうものの、「ポートレートの戦後」といったコンセプトなら、これはなかなかよくまとまっているともいえる。戦後昭和の時代において、人物写真、肖像写真がどう変化し、どう受け入れられていったのかという流れは、よくつかまえられると思う。
昭和20年代から30年代というカメラマンの時代においては、フォトジャーナリズムにもつながるリアリズムの時代であり、スターをいかにスターらしく、文化人をいかに文化人らしく、実態以上に実態をリアルに見せるというのがテーマであった。昭和40年代に入り、フォトグラファーの時代になると、「表現としての写真」が重視されるようになり、写真家と被写体の共犯関係による「舞台」の創造がクリエーティビティーのカギとなる。
今回の対象は、あくまでも昭和時代ということなので、基本的にはこのレベルの作品までが対象ということになるのだが、昭和50年代の作品になると、「フィルムと印画紙の中にしかない世界」をどう創り出すか、というそれ以降の時代につながる指向も見え隠れしてくる。この延長上には、森村泰昌氏の作品のような、現代アートにおける肖像写真の意味が問われるワケだが、それを暗示しながら終わっているところも、なかなか構成としてはいいだろう。それにしてもタイトルが……。



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