Gallery of the Week-Oct.07●

(2007/10/26)



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「昭和」写真の1945-1989 オイルショックからバブルへ
東京都写真美術館 恵比寿

平成19年度の東京都写真美術館の収蔵品展、「「昭和」写真の1945-1989」。いよいよ最終回の、第4部。「オイルショックからバブルへ」と題し、1970年代末から〜80年代にかけて発表された、組写真的な作品を紹介する。今回もまた、パート1「崩れゆく風景」、パート2「内向する風景」、パート3「変化する風景」と、3部構成になっているが、これはどちらかというと、内容というより、作品が発表された時期別という色合いが濃い。
歴史の中となってしまった昭和時代とはいえ、これはその最後のパート。取り上げられているアーチストは、今でも現役で活躍している方々である。そういう意味では、それまでの3部のような「過去を振り返る」展示というよりは、今につながる時代をもう一度見つめ直す展示という印象が強い。
「オイルショックからバブルへ」というのも、例によってベタなキャプションだが、80年代というのは、日本の写真表現にとっては大きな転換期であったことは確かだ。70年代までは、フォトジャーナリズムなどにも通じる「現実を見つめるモノ」であった写真が、80年代以降は、「虚構のコンテクストを伝える」ための手段となった。それは、「写真家」が「アーティスト」になったということもできる。
紹介されている作家は、この両系列が併存しており、それなりにうまくこの時代の写真の流れを紹介しているとは思う。しかしそれなら、「写真家とアーティストの間に」とかして欲しかったが。ところで、時代を代表する雑誌として、「写真時代」が「展示」されていたのにはビックリ。写真を中心にしたサブカルチャー誌だって。それなら、アラーキー師匠が初期にそのホームグラウンドとしていた、白夜の先輩格「ウィークエンド・スーパー」を出して欲しかった気もするが。まあ、こちらはサブカルチャー以前に「エロ雑誌」なのだろうけど。



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中島信也CM展
中島信也と29人のアートディレクター
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座
絵コンテ原画展
クリエーションギャラリー G8 銀座

人々の心に残る数々の名CFを演出すると共に、東北新社の専務、はたまた武蔵美・多摩美の教壇でも活躍する、現代日本の代表的CMディレクター、中島信也氏。彼の持つ世界を、ギンザ・グラフィック・ギャラリーとクリエーションギャラリー G8の連動で紹介する展覧会である。まず、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されている「中島信也と29人のアートディレクター」は、中島氏が、アートディレクターがグラフィックだけでなく、映像の世界でも活躍するきっかけを切り開いたという視点から、中島ワールドを垣間見てゆく企画である。
1Fでは、商品も広告もヒットとなった、サントリーの「伊右衛門」キャンペーンを例に、企画から実際の作品が出来るまでを、映像資料を元に展示している。各クライアントと作業をする広告代理店はさておき、制作プロダクションの仕事がどう行われているのかは、業界外のヒトの目に触れる機会があまりないだけに、広告関係の仕事を志望しているヒトには必見である。もっとも、こう絵になるスマートな仕事というのは、トップレベルのヒトだからこそ、ともいえるのだが(笑)。
地下では、タイトルに合わせ、名うてのアートディレクター29人との仕事を、実際の作品を通して振り返る展示となっている。中には、作品がオンエア前で公開できない方もいるのがご愛敬であるが。一方、クリエーションギャラリー G8で開かれている「絵コンテ原画展」は、中島氏が制作したCFの演出コンテの実物を展示するという、非常にユニークな企画だ。
ぼくらのように業界内の人間は、日常的に絵コンテに接するし、映像のプラン以外でも、タイムシーケンスにしたがって進行するものは、絵コンテにして説明することも多い。しかし、これまた業界外では、アニメマニア等を除けば、なかなか縁遠い世界でもある。そういう意味では、アイディアをどうやってカタチにするのか、これまた広告志望の方ならずとも参考になるだろう。
もっとも中島氏は、実際の現場でCFを演出・制作する方なので、そのアタマの中には、映像から音から、完成された作品が存在している。それを、スタッフと共有するための演出コンテなので、コンテの完成度は極めて高くなっている。一般に代理店のプランナーが描くアイディアメモ的なコンテとは、レベルが一桁も二桁も違うので、その点はご安心願いたい(って何が)。逆に言えば、このレベルのモノが描けるなら、代理店より制作プロダクションの方が志望先としては向いている、ともいえるのだが(笑)。



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第29回 グラフィックアート「ひとつぼ展」
ガーディアン・ガーデン 銀座

お楽しみの「ひとつぼ展」。今度は、グラフィックアートである。毎回毎回、「想定外」の何かが出てくるワリには、それなりにリアルタイムの時代の感覚を汲み取っていて、いろいろな面から興味をひく。審査や運営にあたっているスタッフの意気込みやセンスは、高く評価するべきものだろう。
今回の入選作を語るなら、「多義性とマテリアル」ということになろうか。このところ何回かのグラフィックアート「ひとつぼ展」の傾向を受けて、今回もオーソドックスな絵画的な素材や手法を用い、正攻法で攻めている作品群がある。が、これらの特徴は、描かれている「絵」自体が多義的な点にある。騙し絵的なストレートな多義性から、精神的な多義性まで、作品による違いはあるが、一筋縄ではない、というところがアイデンティティーといえようか。
一方、もうひとつの作品群は、ベースとして扱っている素材のユニークさに特徴がある。想定外のマテリアルが、アイキャッチャーになっている。こちらは、表現の中身自体はどちらかというと正統的なものになっているが、その「落差」が新鮮なビジュアルショックをもたらしてくれる。どちらかといわれれば、今回の主役は「マテリアル」派ということになろうか。個人的には、ひさびさに気に入った作品もありました。



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ヴェネツィア絵画のきらめき 栄光のルネサンスから華麗なる18世紀へ
Bunkamura ザ・ミュージアム 渋谷

今でも、美術の聖地となっているヴェネツィアは、古くから貿易など東西交流の要として、いろいろな文化が交流する地であり、美術に関しても長い歴史を誇っている。特に、ルネサンス以降の経済発展は、交易によって世界の美術品が集められるだけではなく、それまでの美術の集大成として、ヴェネツィアの画家たちによってイタリア・ルネサンスとして、独自の世界を確立するに至った。この、15世紀から18世紀にかけて、ヴェネツィア絵画が隆盛を極めた時代の代表的な作品を、イタリア本国に所蔵される、個人コレクションや国公立美術館所蔵の作品を中心に紹介する企画展である。大型の作品が所狭しと並ぶ、迫力のある展覧会となっている。
イタリア・ルネサンス期というと、芸風から遠いように思えるかもしれないが、実はそうではない。ヨーロッパ美術という意味では、現代美術の次ぐらいに好きな世界なのだ。その理由は、まず第一に、具象性を持った絵画ではあるものの、写実的ではなく、空想のイマジネーションをグラフィック化したモノである点だ。この時期の代表的な絵画といえば、聖書や神話に題材を得た作品が多いが、ヒトのカタチをしたキリストや聖者が出てくるものの、それは誰も見たことがない姿である。つまり、実は極めて抽象性が高いのだ。
次は、セル画的というか、細かい書き込みがあるワリに、色数や彩度のレンジがそれほど広くない点である。絵らしい絵を目指しているといおうか。三つ目は、産業革命以降のように大衆的市民が勃興する前であり、まだ貴族や富豪が美術のパトロンだった時代である点だ。誰にでもわかりやすくウケるものではなく、パトロンの見識や審美眼だけに対応すればよい分、作品そのもののパワーは直裁的になる。
要は、作者とパトロンの求めているイメージが、より直接的、より明解に表現されているのだ。日本では、ともすると19世紀の声が聴こえるようになってからの美術作品を、西欧美術の代表としてとらえがちだが、かえって、この時代の作品の方が、ファンタジー系のノベルスの挿絵のように、小学生の子供とかにも、ストレートに伝わるものがあるのではないかと思う。食わず嫌いなら、見て損はないだろう。



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