Gallery of the Week-Feb.08●

(2008/02/29)



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建築の記憶 -写真と建築の近現代-
東京都庭園美術館 目黒

建築物を一つの作品として見る上では、今では、写真は欠かせない手段となっている。写真を通すことで、現地で実際の建築物を前にしても見ることのできないような、たとえば天井の子細な意匠などもじっくりと見ることができる。また、近代建築の手法が完成される時代は、表現としての写真手法の完成される時代とも重なっている。そんな日本における建築と写真の、一世紀半の軌跡を振り返る企画展である。
展覧会は、建築と写真の出会い、近代建築へのまなざし、建築史学構築のための写真、写真がとらえたモダンの相貌、写真家の目・建築家の仕事、日本建築の美、現代写真の建築という、7つのパートから構成され、写真に残された江戸期の建築に始まり、3世紀にわたる建築と写真の相思相愛関係を網羅している。
テーマも多義にわたる上、展示されている写真資料も膨大であり、見応えも充分にある。ともすると、対象とすべき領域が広くなり過ぎ、全体としては散漫になってしまう危険性もある中、きっちりとした統一感があるのは、「建築」という軸をストイックにキープしているためであろう。また、庭園美術館の独特な空間性も、流れを作るのに役立っている。
すでに現存しない建築物も、写真の中にその姿を残しているという現実は、一見極めて堅牢そうな建築物も、耐用年数のある実用品である一方、写真という表現手段によって作られた作品は、時の流れを越えて存在しつづけるという、皮肉な対象を感じさせてくれる。ところで、明治時代の建築写真の多くを、あの「岩崎・渡邉コレクション」を撮影した小川一真氏が撮影しているというのも興味をひいた。その時代随一の記録写真家であった証しなのだろうが、確かに建築写真と鉄道写真には共通するモノがあることも確かである。このあたりも、なかなか興味深いものがある。



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第30回写真『ひとつぼ展』
ガーディアン・ガーデン 銀座

毎度楽しみな、写真「ひとつぼ展」。今回は、第30回である。いつもながら、今度はどっちから何が飛んでくるのか、上から槍が降ってくるのか、横から鉄砲玉が飛び出してくるのか、ワクワクしながら地下道の階段を降りてゆく。それでいて、いつもほどほどの驚きと、ほどほどの納得を感じさせてくれるところが楽しい。
さて、今回はまさしく「写真」である。それも、フォトグラファー的ではなく、カメラマン的な、原点に戻った写真らしさが、一つの軸になっている。銀塩のモノクロで撮った作品なども、違和感なくそこに納まっている。とはいえ、世代的には20代も多く、輪廻が一巡りしたような感じである。よく見てゆくと、やはり、ディジタルを一度通過した上での、アナログ表現であることがわかる。
この2〜3年、非常に感じていたのだが、ディジタル写真では、作画において、撮影時の構図が非常に大きい意味を持つ。まるで、映画やヴィデオのような発想になってしまう。銀塩だと、モノクロなら、印画紙に焼くときの、トリミングや階調も含めて作画である。カラーポジにいたっては、ほぼ印刷原稿なので、作画はデザイナーとの協同作業になってしまう。
特に、ライカ版のモノクロネガでは、3:2というフレームは、コンポラ写真でパーフォレーションと共に焼き込んでしまうような表現を除くと、ほとんど意味がないいものだった。しかし、ディジタルでは、コンパクトの4:3と、一眼レフの3:2というのは、かなり決定的な違いをもってしまう。モノクロ銀塩写真のパネル張りで、3:2というバランスを敢えて選ぶ作品の登場は、この「似て非なる、時代の輪廻」を強力に感じさせてくれた。いろいろな意味で、面白い問題作が多い。久々に、ポートフォリオのほうまで、じっくり見入ってしまった。



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1-click Award Show #2
ガーディアン・ガーデン 銀座

リクルート主催のWebコンテスト、「1-click Award」。今年はその2回目にあたる。この「1-click Award Show #2」は、その一次審査を通過した入選作品を集めた作品展である。コンテストは、実際に製作された作品である「インタラクティブ部門」と、Webキャンペーン企画を競う「プランニング部門」に分かれ、それぞれ20作品、5作品が出品されている。
「Webコンテスト」といわれると、わかっているヒトほどとらえどころがなくなってしまうが、「インタラクティブ部門」は応募要領からすると、クリック等のユーザーアクションに反応するインタラクティブ作品、ということで、フラッシュ、CG、映像、音楽、テキストなどWebブラウザで閲覧できるものであればなんでもアリということのようだ。「プランニング部門」はシンプルに、大晦日の夜、TVではなくWebを見てしまうキャンペーンを考える、というモノである。
応募要領がそうなので、作品もそれなりに力と根性をカケたモノから、ほとんど瞬間芸的なモノまでが横並び状態。Webに新奇性のあった3〜4年前なら、こういう「新しい可能性」を拡げてみようという企画も意味があったかもしれないが、インターネットがコモディティーの極みとなった今となっては、「?」というところも多い。少なくとも、多少の工夫を凝らせば、Web上で実現できないアイディアはないと言っていい段階になっている以上、やるんであれば、高度な可能性を深掘りするモノでなくては意味がないのではないか。
「プランニング部門」も、そういう意味では物足りない。プロとしていわせてもらえば、単にWebイベントやWeb上の仕掛けとして面白いだけでなく、「大晦日」である必然性、「TVを見ない」必然性をビルトインしていなくては、このお題に応える企画足り得ない。とてもそのレベルに達しているものではないし、バブル期の大学のイベント研究会の企画アイディアの方が、そういう意味では余程インパクトがあったかもしれない。このような展開だと、早晩、このイベント自体の意義が問われかねない。



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工芸の力 -21世紀の展望
東京国立近代美術館工芸館 北の丸公園

2007年は、廃墟となっていた旧近衛師団司令部だった、明治のレンガ造りの建物を復元し、東京国立近代美術館工芸館としてオープンしてから30周年に当たる。これを記念して行われた、開館30周年記念展の第2段として開かれた展覧会である。現代の工芸を代表する14人の作家の作品を通じて、工芸世界の今とこれからを見通そうという企画展である。入場料も、東京国立近代美術館とバンドルなので、なんともおトクである。
陶磁、ガラス、染色、漆、金属など、代表的な工芸技術の作家が網羅されているだけでなく、伝統的な工芸製品としての作品を作る作家と、工芸技術を活用しオブジェなどの現代アートを作る作家の両方を、各分野ごとにフィーチャーしており、その意味でも、工芸界の拡がりを実感することができる。
面白いのは、やはり現代美術的な作品の方である。多くの現代美術のアーティストは、コンセプトワークとディレクションは行うものの、大型のオブジェなどでは、実際の「衣」のつく製作作業は、専門の職人にまかせることも一般的で、物理的な製作物という面では、実際に手を動かしたヒトとの共同製作物というべきモノも多い。
その点、ここに登場しているアーティストたちは、巨大なインスタレーションというべきオブジェも、自力で金属板を加工して、一からスクラッチで作っている。ある意味、これだけの存在感の作品を、全て自分の力で具現化することにより、そこに込められた表現力には、コンセプチュアルなコミットメント以上の何かがある。そのオーラを感じれたのが、大きな収穫といえるだろう。


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わたしいまめまいしたわ 現代美術に見る自己と他者 Self/Other
東京国立近代美術館 竹橋

自己を表現するモノとしてのアートの本質に立ち戻り、現代アートの試みた視点を振り返ってみる企画展。東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館所蔵の作品を中心に、キュレーターの構成で見せるコンセプチュアルな展示である。回文によるタイトル同様、このコンセプトをどう解釈するかは人によって異なるとは思うが、企画展示室をフルに使った、相当に力のはいった展示にはなっている。
それはさておき、20世紀以降の近・現代美術に関して、いろいろな施設に所蔵されている作品を、時代やアーティスト、具象・抽象といった作風、絵画・オブジェ・写真・映像といった形態を問わず、これだけ横串で鑑賞できる機会はそうない。それだけに、そこから読み取るモノも、ヒトそれぞれといえるだろう。
ぼくの場合は、なんといっても「心の中に表現したいモノさえあれば、作品はアートになる」というコトを、改めて実感できたことだ。原点といえば原点なのだが、人間、どうしても難しく考えがちになるのが常。しかし、そのタコ壷に陥ってしまうと、作品は表現からドンドン遠ざかってしまう。まあ、気楽に発想をリフレッシュするのには、常設展並みの入場料ということもあり、絶好の展覧会といえるだろう。



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