Gallery of the Week-Jun.08●

(2008/06/27)



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昭和を白黒で旅する 薗部澄写真展
旧新橋停車場 鉄道歴史展示室 新橋

今月は、何気に取り込み中で忙しく、ワリと安易な企画でお茶をにごしているが、今週もその延長で、おとなりさん。旧新橋停車場 鉄道歴史展示室というと、このところ、団塊以上のシニアをターゲットとした企画展が目立つが、これもその延長上。昭和の乗物や街並み、人々の生活を撮影した、財団法人日本カメラ財団所蔵の、薗部澄氏の作品で構成した写真展である。
昭和20年代半ばから、30年代半ばにかけて撮影された80点のカットは、尖鋭なニュープリントで展示されている。また、当時の生活用具やオモチャ、子供向け雑誌といった、「昭和日常博物館」所蔵の生活資料も展示され、「いかにも」なところもあるが、それだけに終わっていないのが、薗部氏の写真の力だろう。
薗部氏は、あの「岩波写真文庫」出身で、いわば最後の「社会派カメラマン」といえる世代である。それだけに、全体を通じて、戦後の混乱が終わり、戦前レベルの経済力が復活したが、まだ高度成長が始っていない、という、その時期ならではの、人々の生きざまやエネルギーが、会場に渦巻いている。そういう意味では、薗部氏の回顧展としても、充分評価できるだろう。
それにしても、同じ時代とはいえ、都市部と山間地のこの落差はなんだろう。都会では、すでに「サラリーマン」がラッシュにもまれている時に、田舎では牛で野良仕事である。今でこそ、全国一律のユニバーサルサービスが「常識」のように語られるが、昭和30年代にはまだ、はなはだしい「格差」が歴然とあったのだ。補助金行政に浸り切った日本が、何を得て、何を失ったのか、それを気付かせてくれるタイムカプセルでもある。流石、社会派の作品といえよう。



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タカハシカオリ個展02 コウエンジアニマルストリート 番外編その2
「僕のあゆみ」-すべては2人の愛の営みから始まった-
ギャラリーR 高円寺

石膏粘土で作ったフィギュアを街頭で撮影し、フォトイラストストーリーを創るという、独自の手法で表現するタカハシカオリ氏。今回は、初の作品集「ボクノトモダチ KOENJI ANIMAL STREET」の出版を記念し、同書の中に登場するキャラを総動員し、主役たる「ケン」の半生記をくりひろげる展示となっている。
実は、この作品集のプロデュースとエディトリアルデザインをやっているのがぼくの友人で、その縁で見に行ったのだが、これはなかなか面白い。高円寺にこだわる作者だからこそ、高円寺でやらなくては意味のない個展となっている。
氏のフィギュアは、一見可愛い感じに見せて、よく見ると斜に構えた皮肉たっぷりな表情という、70年代のオルタナティブ的なヒネりが特徴だが、今回は「動物」が主題となったキャラ設定。それらのフィギュアが、実際の高円寺の街角に配置され、リアルとフェイクの倒錯した、シュールな世界を形作る。
要はこれ、模型の「借景撮影」なのだ。ジオラマの撮影では、実際の太陽光線を使うことでリアルな雰囲気を出すのは基本であるが、氏のフィギュアも、露天で撮影することにより、妙な「活き活き感」をかもしだしている。また、実際の景色を、ある時はアウトフォーカスで、またある時はピンを持っていって取り込む手法は、三木浩三氏のジオラマ写真とも共通する。作者とお話したところ、そのあたりの発想や苦労は、まさに共通するものだった。そういう意味では、そっちの趣味があるヒトにも、なかなか興味を引く作品である。



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佐々木加奈子展 ウキヨ
ガーディアン・ガーデン 銀座

過去の「ひとつぼ展」入選者の中から、活躍中のアーティストにスポットライトを当てる「The Second Stage at GG」シリーズ展。その第22回は、2004年、第23回「写真『ひとつぼ展』」で入賞した、ニューヨークを拠点に活躍する写真アーティスト、佐々木加奈子氏の個展である。「ひとつぼ展」では、セルフ・ポートレートの作品を発表したが、今回はその延長上で発表された、女性ポートレートシリーズである。
世界各地で撮影されたポートレート群は、自室に代表されるプライベートな空間の女性を、独特のタッチでとらえたモノ。その不思議なトーンは、写真の何がリアルで何がフェイクなのかを覆い隠し、「見えているだけの世界」を現出させる。キャプションとして名前だけが出ているが、それとて本当なのかどうかわからないし、そんなこともどうでもよくなる。
そういう表情をした女性がそこにいて、そういう空間がそこにある。それだけがリアルなのだ。そして、それが強烈なメッセージになっている。ある意味、こういうフェイズにまで昇華した写真作品って、今までなかったのではないか。まだ、表現形式としての完成にまでは至ってはいないものの、彼女の中からは、何かとんでもない表現が生まれてきそうな気がする。



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超ミニチュアで見る、昭和の情景 「エコーモデル・その世界」展
丸善ギャラリー 丸の内

このコーナーで取り上げるテーマとしては、ちょっとそぐわない感じもあるが、年に1〜2回は、友人が自費で開催している個展とかも取り上げているので、そういうイメージでとらえて欲しい。鉄道模型をやっているヒトにとっては、今や有数のパーツ販売元であるエコーモデルであるが、そのパーツの原点は、やはりジオラマ用の各種パーツにある。16番やHOスケール(これは、模型の縮尺を示す規格)のジオラマにおいては、日本においてはその原点ともいえるエコーモデル35年の歴史を振り返りつつ、最近人気が高まっている「昭和風ジオラマ」の数々を味わう企画展である。
会場は基本的には、4つの要素から構成されている。それは、原点ともいえる「城新鉄道」に使われた、阿部社長自作のジオラマ。著名なジオラマ作家による作品展示。エコーモデルの製品紹介。阿部氏の撮影した、都電と東京の懐かしい街角風景。これらに加えて、制作協力した「映画・三丁目の夕日シリーズ」や、昭和の名列車の模型がアクセントとなった展示となっている。
なんせ、昭和の時代から「レトロな昭和」の再現を追求してきたワケで、最近のブームへの便乗とは年期が違う。そんなこともあって、ある種、阿部さんとその仲間の個展ともいえるような、トータルな世界観が会場にあふれている。出品している作者にも、個人的に親しいかたがけっこう多いので、そういう目で見てしまうのだが、全く一般の方でも、昭和の記憶が鮮烈に残っている方なら、充分に楽しめる世界といえよう。



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