Gallery of the Week-Jan.09●

(2008/01/30)



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第3回 shiseido art egg 宮永愛子展 地中から放つ島
資生堂ギャラリー 銀座

資生堂のアート活動の原点の一つともいえる、「新進アーティストの支援」という視点から、新たに開始された公募展「shiseido art egg」。今年は、はや第三回ということで、321件の応募の中から、宮永愛子氏、佐々木加奈子氏、小野耕石氏という3氏の作品が選ばれ、1月から3月にかけて、順次展示される。その第一弾としては、宮永氏の登場である。
宮永氏は、ナフタリンで作られた彫刻が、時と共に昇華し形を失っていく様を見せる作品や、塩の結晶がだんだんと析出し、育ってゆく様を見せる作品など、時間と共に変化するインスタレーションで知られている。今回も、資生堂ギャラリーが地下にあるというコトで、地下水脈をイメージしたオブジェの中に、得意のナフタリン彫刻の昇華を組み合わせた作品のインスタレーションでの参加である。
しかし、このインスタレーションは、それ以前に、すでに地下に降りる階段のところから強烈なインパクトを持っている。ほの暗い地下室へ続く階段に漂う、作品から漏れるナフタリンの臭い。その雰囲気は、あの、おどろおどろしい学校の理科準備室を思いださせる。
これは、作者の狙ったモノなのか、はたまた創発的なモノなのかはわからないが、「匂い」が強烈にイメージを誘起するインスタレーションというのは、極めて新鮮で、刺激的である。これには、いまだかつてなかったぐらい、イマジネーションを刺激される。目から鱗(鼻から鱗??)の体験といえよう。



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1-click Award #3
ガーディアン・ガーデン 銀座

インタラクティブなコミュニケーションの可能性を追求するコンテストとしてはじめられた、ワンクリック・アワード。今年はその3回目である。この時代、ことさらにインタラクティブだ、Webだ、というのは、なかなか難しいものがあるのだが、このコンテストも、その呪縛からのがれることはできなかったようだ。昨年も危ういものがあったのだが、今年ははっきりいって、このイベントの意味自体が問われるような結果となっていることは否定できないだろう。
これは、なにも応募するクリエイターの側の問題ではない。コンテストを主催する側の、コンセプトの立て方の問題だ。ことしで第三回目ということだが、世の中におけるインタラクティブ・コミュニケーションの位置付けは、毎年毎年大きく変わっている。いまや、インターネットやケータイによるコミュニケーションは、特別なものでもなんでもなく、一番ベタなモノになってしまった。
その一方で、コンテンツそのもののあり方も変わった。瞬間芸でも、ネタになれば話題になり大ヒットになる。どんなに本格派のすばらしいドラマでも、ネタにならなければ、ロングテールにしかならない。これが、今のコンテンツのオキテである。若い人で、コンテンツの「中身」を味わえる「コンテンツ・リテラシー」があるヒトは少数なのだ。
このような状況は、数年前の、インタラクティブ・コミュニケーションが、何か特別なもののように感じられ、そこに夢さえあった時代とは大きく違う。どうせコンテストをやるのなら、ベタだからできる面白さ、ベタだからできる共感、といったものをどう正面切って捉え、その中で個性と斬新さを出すかを問うべきではないか。なんのことはない、今や、リアルとヴァーチャルには、なんの垣根もなくなったのだから。



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きらめくデザイナーたちの競演 ―DNPグラフィックデザイン・アーカイブ収蔵品展
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

ギンザ・グラフィック・ギャラリー等のギャラリーを持つ、財団法人DNP文化振興財団では、保有するギャラリースペースを活用した企画展の実施のみならず、優れたグラフィックデザイン作品を周辺情報も含め、収集・保存・管理し、後世に伝えてゆくDNPグラフィックデザイン・アーカイブの運営も行っている。これらを合わせることで、グラフィック作品の美術館としての機能を担っていることになる。
今回の企画展は、このアーカイブに収蔵された作品により構成された、いわば館蔵品展であり、戦後日本を代表する69人のグラフィックデザイナーやイラストレーターの作品、125点を展示する。展示は、時代性や経歴などで並び称される作家を、ペアで対比させる構成となっており、ポスターを中心として、各人2点の作品を展示するのが基本となっている。
結果的には、1950年代から21世紀まで、代表的なグラフィックデザイン作家と、各時代を象徴するような代表的な作品が網羅された展覧会となっており、戦後日本のデザイン史としても楽しむことができる。ヨーロッパでは、ポスターを中心とした、グラフィックデザイン美術館も多く存在するが、日本でもそういう施設があっておかしくはないし、もはやなくてはならないのではないか、という気分にさせてくれる。



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制定80年 トレインマークの誕生
旧新橋停車場 鉄道歴史展示室 新橋

優等列車の前後を飾ってきた「トレインマーク」が、昭和4年の特急「富士」ではじめて使われて以来、80周年となることを記念した展覧会。鉄道歴史展示室では、久々の鉄道関係の展覧会であるとともに、これまた久々の、「鉄道とデザイン」という視点からの展覧会である。大宮の鉄道博物館、大阪の交通科学博物館所蔵の実物やレプリカを中心に、個人蔵のコレクション等も加えて、趣味人的に見ても、限られたスペースながら、なかなかの充実度である。
このコーナー的な視点からの見所は、旧国鉄専属のデザイナーとして、ほとんどのトレインマークをデザインした、黒岩保美氏の足跡に関する展示だろう。JNRマークやグリーン車マークなど、国鉄で採用されたロゴマークの多くをデザインしたことからもわかるように、日本のグラフィックデザイン史ではあまり語られることがないものの、時代を考えると多くの業績を残したデザイナーということができる。
特に、アイディアスケッチ等を見ると、列車名のロゴをデザインするのに、並々ならぬエネルギーとクリエイティビティーを発揮しているのがわかる。黒岩氏がこの分野で活躍したのは、昭和20年代から30年代、化粧品などデザインが特殊な付加価値を生み出す業界を除くと、まだ企業ロゴ、商品ロゴの重要性すら、一般的には認知されていなかった時代だ。その時代に、それぞれのイメージにあった、独自のフォントを創り出していたのだ。
元々、書と画が一体になる世界である日本画を学んだ方だけに、タイポグラフィーにも並々ならぬセンスを発揮したものと思われる。黒岩氏というと趣味界では、その絵心や色彩感覚を活かした、すばらしい鉄道写真の写真家として知られているが、デザイナー、アートディレクターという視点からも、再評価が必要であろう。それはまた、日本のCIデザイン史を塗り替えることにもなるだろう。



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