Gallery of the Week-Nov.10●

(2010/11/26)




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HEY! SHOES -160人のクリエイターによる履くアート-
クリエイションギャラリーG8 ガーディアン・ガーデン 銀座
昨年から始まった、アーティストがボランティアで制作した作品を展示・販売し、収益金をユニセフに寄付するという、アートやデザインを通じたチャリティー企画展。第2回目となる、今年のテーマは「シューズ」。160人のクリエイターが、PRO-Keds ROYALをベースに、オ生地にインクジェットプリントし、シューズに加工したリジナルデザインのスニーカーを競作する。
作品は、3つのタイプに大きくわけられる。第一のタイプは、布をキャンバスに見立てて、イラストや漫画など、作者の得意な芸風の作品を展開するもの。第二のタイプは、テキスタイルデザインとして、ユニークな布地を作り、それでスニーカーを縫製するもの。第三のタイプは、スニーカーのフォルムを前提に、それを引き立てるようなカラーリングや装飾をデザインするものである。
あらためてびっくりするのは、そのいずれもが、誰が見ても「スニーカー」だという範疇に収まっている点である。チャリティーで販売するという前提があるからかもしれないが、ある種機能を追及したスニーカーという存在感の強さをあらためて感じる。何を描こうが、何色に染めようが、そこにあるのはまぎれもなく「スニーカー」である。
そういう意味では、160人160様のバリエーションは、あくまでも多様なスニーカーのデザインの可能性へのトライして捉えられ、それが全体としての展示のまとまりにも繋がっている。しかし、中に一人ぐらい、どこから見ても地下足袋とか、どこからみても裸足とか、ちょっと見にはスニーカーに見えないようなデザインを提案しても良かったのではないかな、という気もしてしまう。そういうのがあったら、購入したくなるのにねえ。



11/3w
バウハウス・テイスト バウハウス・キッチン展
パナソニック電工 汐留ミュージアム 新橋
良きにつけ、悪しきにつけ、20世紀の日本人にとっては特別な響きをもつ「バウハウス」。その枕詞で語られるのは、建築や美術理論といった、モダニズムの権化ともいえる存在感のある領域が多い。しかし、バウハウスが扱ってきた領域は、そういう「記録に残る仕事」だけではない。人々、特に大衆の生活を、現代的・工業的な視点から文化的なものにしようというムーブメントにも、重要な業績は多い。
この展覧会は、そんな「家庭の中のバウハウス」に焦点を当てた、異色のバウハウスものの企画展である。バウハウスの中でも、織物・服飾デザインのコースには女性生徒が多く、フェミニズムが社会的潮流となり、家庭や社会における女性のありかたが大きく変化し、女性の社会進出が進んだ時代にふさわしい、新しいデザインを提案し、実際に商品化を図っていた。そんな服飾関係から、建築と車の両輪といえるインテリアデザイン、食器や調理器具といった家庭用品におけるバウハウスの成果を見せる。
この領域では、それまでの貴族的趣味の流れを受け継ぐデコラティブな意匠にかわり、20世紀的な、モダンで大衆ウケする、シンプルで合理的な現代的生活デザインの基礎を築いたということができる。そして、そこで想定されていた生活は、戦後日本の高度成長期の象徴ともいえる「団地生活」の直接の源流だったこともよくわかる。
子供が、実写よりアニメが好きなのは、画像がシンプルで、ストーリーが理解しやすいからだ。モダニズムが好かれる理由も、それと同じで、シンプルで明解、理解しやすく納得しやすいデザインだからだ。そういう意味では、クールジャパンと呼ばれる日本で、モダニズムが根強い人気を誇っていることもよくわかる。若い人にとっても、バウハウス的な世界は、今やなつかしさを感じさせる世界なんだろう。



11/2w
鈴木コレクション おもちゃ絵の世界
玉川大学教育博物館 町田
「おもちゃ絵」とは聞きなれない言葉だが、江戸時代から明治時代にかけて製作・販売された、子ども向けの錦絵のことである。浮世絵のような、一枚摺り・多色刷り木版画の技法で製作されているが、絵そのものを鑑賞するのではなく、厚紙に貼り付けた上で、絵柄をハサミや刃物で切り取りとって使用する。名所旧跡の風景や、歌舞伎の人気舞台を組み立てる「組上燈籠絵」のほか、着せ替え人形、紙相撲、メンコ、カルタ、絵合わせ、福笑い、豆本、絵巻など、玩具・遊具として楽しむものである。
この展覧会は、「おもちゃ絵」にのコレクターとして知られた味の素の鈴木三郎助氏が、玉川大学教育博物館と財団法人松竹大谷図書館に寄贈した200点あまりの資料を紹介するものである。玉川大学は、組上燈籠絵・物尽くし絵・姉様・両面絵・着せ替え絵・変り絵・武者絵・ 教育絵など91種、松竹大谷図書館では芝居関係の組上燈籠絵を中心とした資料93種を所蔵している。「おもちゃ絵」は、子供たちに遊ばれて散逸する運命にあるだけに、オリジナルを集めたコレクションは、大変貴重なものといえる。
文章だけだと、いまいちイメージが湧きにくいかもしれないが、学年誌の付録としておなじみのペーパークラフトを思い起してもらいたい。「おもちゃ絵」は、その100年以上前のルーツだと考えればわかりやすいだろう。会場では原版と同時に、それを複製したものを組み立てた見本も同時に飾られ、当時の子供たちがどう楽しんでいたかがわかりやすい。
特に、「組上燈籠絵」については、数枚組の大作も多く、今ハヤリの「ジオラマ」の原型としても捉えられる。明治期には、「おもちゃ絵」は専門のお店もあったぐらいポピュラーなものであったらしく、その世界は、出版、玩具、ホビーなど、その後の子供・少年少女向けビジネスのルーツとして、今に至るまで深く関わっている系譜図のミッシングリンクを明かしてくれるものといえる。玩具業界、模型業界、子供向け出版業界などに関わるヒトは、必見。目から鱗の発見があるはずだ。



11/1w
駒井哲郎作品展 福原コレクション 生誕90周年−闇と光のあわいに 色への憧憬
資生堂ギャラリー 銀座

1950年代から70年代にかけて世界的に活躍し、日本において銅版画を定着させた駒井哲郎氏の生誕90周年を記念して開催される回顧展。資生堂名誉会長・福原義春氏は、駒井氏が現役で活躍していた1960年代以来、氏の作品をコレクションし、その有数のコレクション世田谷美術館に寄託されている。今回の作品展も、その中から選ばれたものである。
資生堂ギャラリーというと、洋の東西を問わず、現代美術のアーチスト、それも若手の作家の作品というイメージが強い。そういう意味では、エスタブリッシュされた故人の巨匠の展覧会というのは、逆に新鮮な感じがする。会場内に入ると、白木の壁がしつらえられ、確かに日ごろの資生堂ギャラリーとは一味違う雰囲気である。
銀座会場での展覧会は、「色への憧憬」と題されているように、カラー版画、または彩色された作品が集められている。その独特の材質感は、時代性からも独立した、不思議な世界を織り成している。特に、小型の作品にみられる画面の凝縮感は、版画という複製技術を使いながら、現物ならではの存在感があり、銅板版画の深さを感じさせる。
さてこの駒井哲郎作品展、同時に静岡・掛川の資生堂アートハウスにおいて、「駒井哲郎作品展 福原コレクション 生誕90周年−闇と光のあわいに 黒と白の旋律」と題し、初期作品から代表作まで、「白と黒の造形美」で知られた駒井氏が得意としたモノクロ版画の作品展を開催している。とはいうものの、ハウス・オブ・資生堂ならいざしらず、掛川まで見に行くというのは、ちょっと大変かも。これは、なんかもったいない。



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