Gallery of the Week-Jan.11●

(2011/2/25)




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イアン・アンダーソン/ザ・デザイナーズ・リパブリックがトーキョーに帰ってきた
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

独特のポップ感覚あふれるデザインで、世紀の変わり目で一世を風靡した、イアン・アンダーソンが設立した、ザ・デザイナーズ・リパブリック。 2009年の「解散」宣言以降、バージョンアップして活動を再開した。その新しいコンセプトを宣言するかのごとく、、第2の故郷と呼ぶ東京で開かれる個展である。
会場は、ギンザ・グラフィック・ギャラリー全体が一つのインスタレーションとなっており、大型の作品パネルで構成されたその世界は、画面のインパクトが一層の迫力で見るものに迫ってくる。まさに、TDR的な小宇宙に迷い込む感じといえる。
TDRは、日本の若者のポップカルチャーや、キッチュな東京の街角の印象を引用したデザインで知られている。実際、作品にはそういうイメージのアイテムがあふれている。しかし、これを実際に東京の街の中に置いてみると、妙に溶け込まず浮き上がるのだ。引用元になったモノは、非日常的でもウマく街の中に溶け込んでいるというのに。
多分、その「違和感」の部分が、今の時代における「日本的」とか「イギリス的」とか言える部分なのだろう。グローバル化し、外見的に世界が均質化するように見えても、今度はもう一段上のレイヤーでの違いが顕在化する。この差異性を極めることが、これからの時代においては重要になるのだろう。



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横田大輔展 indication
ガーディアン・ガーデン 銀座

おなじみ、ガーディアン・ガーデン恒例の、「1_WALL」展入賞者による個展。今回は、第2回写真部門グランプリ受賞者、横田大輔氏の個展である。ディジタルの波がアート界に押し寄せはじめてから、もはや20年以上。21世紀に入ると共に、ディジタルによる「目眩ませ」的な習作は影を潜め(まだ絶滅していないのは、悲しい限りだが)、ディジタルという新しい「画材」を、表現の可能性として生かせるか、というフェーズに入ったといえるだろう。
特に、その影響が大きいのは、写真表現の領域である。銀塩写真とディジタル写真の表現としての違いは、大きくわけて二つのポイントに集約できる。一つは、銀塩写真の場合、撮影時点でプリプロ的にかなり決め込んで撮影する必要があるのに対し、ディジタル写真では、かなりの作画意図をポストプロのプロセスで決められる点である。もう一つは、ハードウェアの特性と、ワンカット当たりのコストが極めて低いことから、撮り手の意思とは関係なく、何かが偶然に写ってしまう可能性が非常に高いことである。
実は、この特徴は、人間の目の特徴によく似ている。目にはズームレンズは装備されていないが、デジタルズームよろしく、目が捉えた映像のある部分を集中的に見ることができるし、視野がさえぎられている間、対象物の動きを想像しつつ追いかけることも可能だ。また、テレビの広告効果のように、意識しなくても、偶然情報が目に入ったところから、意識を集中させることもしばしばある。
横田氏の作品は、写真用具を使って作成されるものの、旧来の意味での写真作品と呼べるかどうかわからない。しかし、その「写真」はディジタルの特性ならではの、人間の目のナチュラルな働きに近いモノをシミュレートしているコトは間違いない。レンズの外側にあるものを、リアルに焼きつける手段だった写真は、ディジタルの時代になって、レンズの内側にある「光に呼び覚まされた心」を、ストレートに具現化するものになった。これもまた、新たな表現の可能性への、大きな一歩といえるだろう。



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shiseido art egg vol.5
今村遼佑展 <かすみをたべて幻視する>
資生堂ギャラリー 銀座

資生堂ギャラリー恒例の、「shiseido art egg」も5回目。今月はその第二段として、今村遼佑氏の登場である。作品は、ギャラリー全体を利用した、ミニマルなインスタレーションというべきだろうか。広い空間の中で、LEDや小物が、オルゴールをスイッチとして「気配」を作るという作品になっている。
主客逆転という視点の変化は、時として極めてドラスティックなインパクトを生み出す。「無の用」を説いた「老荘思想」など最たるものだが、ロールシャッハテストのような視点の変化は、ある種のビジュアルギミックとしてよく使われる。そういう文脈では、この作品は、アートにおける主客逆転といえるだろう。
眼科の視野検査を受けた人は経験があると思うが、空間の中でランダムな光を追うそのテストは、受検者の異常なまでの緊張感をもたらす。テストの機械自体は、ただ単に光が点々と移ろうだけであり、極めて淡々とした世界である。しかし、受検者の心の中は、並みのサスペンス映画を見る以上の激しい展開になる。
今村氏の作品は、まさにこういう感じで、客観的にはミニマルな世界でしかない作品が、見る人の心の中には、極めて波乱万丈の刺激とインパクトを生み出すという。今まで、こういう「静が動を生む」ようなアートってあっただろうか。習作的要素も強いが、なにかここから今までにない世界が生まれてきそうな予感さえさせる作品である。



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