Gallery of the Week-Jun.11●

(2011/6/24)




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レイモン・サヴィニャック展 ─ 41歳、「牛乳石鹸モンサヴォン」のポスターで生まれた巨匠
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座

1949年、「牛乳石鹸モンサヴォン」でがポスター作家としてデビューしたサヴィニャック。二度の兵役や何度も転職と解雇のを繰り返した後、ベルナール・ヴィルモと行った二人展で、モンサヴォン石鹼のポスターを展示したものが、同社の社長の目にとまり、実際に採用されてデビューに至ったのは、41歳の時だった。
独特の親しみやすいタッチで、ユーモアとエスプリたっぷりに描くその作風は、大戦後のパリの雰囲気にピッタリで、多くのフランス人の心を捉えた。ある意味、フランスのよき時代を思わせるその作品は、ポスター史上に残るものも多く、時代を代表するポスター作家として、今も世界的ナニ人気がある。
彼のポスターは、アールデコ期の作品のように、イラストからコピーから、全て「絵」として手描きで描いてしまうところにある。古くは、このようにポスター作家が「原画」を完パケで作ってしまうのが一般的だったが、印刷技術の発達とともに過去のものとなった。彼が活躍した1950年代は、ちょうどその転換点の末期にあたっている。
そういう意味では、「現代」になる直前の、「古き良き世界」のムードをまだ残した世界を体現した作品群といえる。多分、彼がデビューした時点で、すでにその世界はノスタルジックなイメージで捉えられていたと思われる。しかし、最初からレトロだっただけに、逆に朽ちることなく、人々の心にアピールし続けてきたということができるだろう。



6/3w
榊原美土里展「愛とバカ」
ガーディアン・ガーデン 銀座

第3回グラフィック「1_WALL」グランプリを受賞した榊原美土里氏が、その副賞として開いた個展が、この「愛とバカ」である。このタイトルもタイトルだが、彼女の作品、それ以上にその作品達がおりなす「サカキバラ・ワールド」は、それ以上にインパクトがある。「1_WALL」展のときから、その存在感は折り紙付きだが、それが全面展開である。
確かに、どこでも見たことがないし、そのキッチュさポップさだけではなく、誰しも思わず顔がほころんでしまうその世界観は、一見非常にわかりやすい気がする。しかし、実は誰にも見えている世界は、彼女の世界からすると氷山の一角で、その裏側にさらにとてつもない世界があることを、この個展は垣間見せてくれる。
ミニマルな感じもするが、彼女の描く「絵」には、すでにあふれるような動きと立体性がある。色物のように見てしまうと見落としがちだが、絵として独立した作品を見ると、それがよくわかる。その動きや立体性が強すぎて、2Dの世界にハマりきらず、3Dの世界に飛び出してきてしまったということなのだろう。
そういう意味では、彼女の描く世界を、アニメーションで動かしてみたい。あるいはそのタッチを活かせば、ものスゴく「動き」のある4コマ漫画が書けるかもしれない。なんか、そういうコラボレーションの可能性を強く感じさせる個展だった。



6/2w
凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展
INAXギャラリー 京橋

建築やインテリア関係の企画展でおなじみの小ギャラリー、INAXギャラリーで「模型」の展覧会があるという。模型とはいっても、スクラッチビルドのクルマのモデルだが、工芸的な作品として捉えた展示になるという。分野は違うが、模型に携わっているので、一体どういう視点から「作品」を捉えているのか、大いに興味がある。そういうことで、開幕とともに、早速行ってみた。
会場は、日本を代表する5人のモデラー、斎藤勉氏、高梨廣孝氏、濱上晴市氏、山田健二氏、水野秀夫氏と、世界的なプロモデラーとして評価の高い英国のG.ウィングローブ氏、オーストラリアのA.ブルックマン氏、日本の酒井文雄氏の作品を一同に集めて展示している。作品そのものが小さい空間に凝縮されたものだけに、限られたギャラリーのスペースでも、相当に濃い展示となっている。
8人のモデラーは、それぞれ得意とする世界が違う。テーマとする車種も、クラシックカーやレーシングカー、モーターサイクルなど、それぞれの世界を持っているし、それにあわせて主として用いる手法も、木製、レジン製、金属製等々、皆異なっている。これもまた、スクラッチモデルの世界の奥深さを見せるのに役立っている。
着眼点や作り上げる方向性は、我々のやっている鉄道模型とかなり違うものの、個々の技法としてはけっこう共通するものもある。しかし、鉄道模型でも自家製のキャスティングやプラ材のプレス成型はやるものの、レジンで作った型を使い金属板をプレスして部品を作っていたのには驚いた。ある意味、実車のレストアが趣味として成り立ってしまう世界だけに、このあたりが一番違うところだろうか。
だが、それにしても、鉄道模型がこういうカタチでギャラリーの展示物になるのだろうか。車輌の模型については、プロトタイプである実物の自動車でも、カスタムメイド的なものには手工工芸品的な要素があるが、鉄道車輌はあくまでも「機械」で、そういう華がないというハンディキャップがある(古典的な御召車輌は別として)。けれど、ジオラマなら何とかなりそうな気もしてきた。このあたりが、斯界で言われる「車輌模型と鉄道模型」という問題のルーツになっているのだろうが。

6/1w
コレクション展「こどもの情景−戦争とこどもたち」
東京都写真美術館 恵比寿

毎年恒例となった、東京都写真美術館のコレクション展は、館蔵作品の中から年間を通じたテーマで選ばれた作品を紹介する企画展である。平成23年度は「こどもの情景」をテーマとし、その第一弾として開かれたのが、20世紀の戦争と子供の関り合いを捉えた写真を集めた展覧会である、この「こどもの情景−戦争とこどもたち」である。
しかし、子供と動物は、画像や映像で表現する場合には、この上ない「飛び道具」である。ましてや、「戦争と子供たち」である。クールなジャーナリズムの視点ではなく、センセーショナルな「お涙ちょうだい」で正義ぶりたい人たちにとっては、格好な餌食となりかねない。その辺をどうクリアしているかが、ある意味ポイントとなるが、さすがにそれはほとんど問題がなかった。
というのは、海外写真家の作品と、国内写真家の作品の一部を除いたほとんどの作品は、「戦争が行われていた前後の時代」に撮影されたということ以外、直接的なテーマとしては戦争との繋がりはないからだ。そういう意味では、この企画展が「戦争とこどもたち」を主題としたキュレーションだとするなら、その企画意図はあまり成功しているとはいえない。
そうではなく、時代と子供たちをテーマとしていると考えるなら、それなりに感じるものはある。それなら、海外作家の作品を除き、もっと同時代の日常生活の中の子供を捉えた作品を加え、「こどもの情景−昭和のこどもたち」とでもしたほうが、もっとストレートかもしれない。館蔵作品展としては、それなりに楽しめるのは間違いない。



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