Gallery of the Week-Jul.11●

(2011/07/15)




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榮榮&映里 写真展 -三生万物-
資生堂ギャラリー 銀座

榮榮&映里は、中国人写真家の榮榮と日本人写真家の映里の夫妻による、アーティストユニットである。榮榮氏は、中国で現代美術が興隆しはじめた1990年代から、写真家として注目を集めるだけでなく、写真雑誌の創刊やアートイベントの実施など、写真を中心とする現代アートのキュレーター・プロデューサーとしても活躍し、中国の現代アートを世界へ発信し続けてきた。
映里氏は、新聞社の女性報道カメラマンからフリーの写真家となり、写真アーティストとして創作活動を始めたという、アート系の写真家としては、ちょっと珍しいキャリアを持っている。2000年以降ユニットを組み、北京を拠点に共同制作を行っている。また2007年からは、中国初の写真専門現代アートセンター、三影堂撮影芸術中心を設立し、若手作家の紹介、育成も行っている。
高度成長期の日本には、西洋の現代美術史を一人で数年の間に駆け抜け、さらにその勢いで、前人未到の境地へと飛び出してしまったアーティストがけっこういた。榮榮&映里の作品も、古典的な写真手法から、70年代以降の表現主導の写真手法、はたまた同時代的な現代アートの手段としての写真まで、この10年間で、20世紀の写真世界を一気に突き抜ける勢いを見せてくれる。
というより、これは今の中国において写真に求められる役割の多様性、はたまた国内に抱えている発展段階の多様性を象徴しているのではないだろうか。成長の恩恵が得られない地域がある時期においては、20世紀初頭のアメリカがそうであったように、写真は作者の表現以前のジャーナリスティックな役割を求められる。その後成長の成果は廻ってくるものの、その分け前の多寡が問題になる時期になると、写真は作者の意思の表現となるものの、メッセージアートとしての役割が求められる。
そして、社会が豊かな安定成長の時代になってはじめて、純粋なアートとしての表現が求められるようになる。今の中国では、その莫大な人口、巨大な国土の中に、その全ての要素が並存してしまっている。その全てを自分たちの中で体現できる榮榮&映里は、そういう意味で極めて中国を象徴する写真家といえるのだろう。そう考えてみると、映里氏の元報道カメラマンという経歴も、極めて深いモノがあるではないか。



7/2w
2011 ADC展
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座
クリエイションギャラリーG8 銀座

今年もまた、ADC展の季節がやってきた。ADC賞は、けっこうその年の雰囲気を表しているところが面白い。デザイン賞・広告賞の常として、賞狙いの作品やエッジなクライアントに特化した作品もノミネートされるものの、8000点以上という応募作品の多さがなせる技か、全体としてみると、毎年毎年の「色」を、濃厚に反映している。それがまた、デザインの面白いところでもある。
さて、2011年といえば、どうしても震災である。デザインというコミュニケーションに関わるモノが対象である以上、これは避けて通れない。しかし、今回の対象期間は2010年5月から、2011年4月。震災後の期間は一月ちょっとしかない。もっとも、グランプリこそ震災後の作品だが、ここに展示されているほとんどの作品は、それ以前に制作され発表されたものである。
であっても、明らかにそこから読み取れるのは、デザインにおける「ひとつの時代の終わり」である。もっと端的に言えば、奇をてらったり、目眩ましをかけたりする技が通用しなくなり、結果的にストロングスタイルというか、正攻法でいくしかない時代になった、という実感である。「デジタル」がもてはやされた20年間、あるいは30年間が、ついに尽き果てた。
そういう意味では、震災が何かを変えたというより、最後のダメ押しの赤い玉ということなのだろう。気付いている人は、前からすでに気付いていたし、この数年、その傾向は明らかに顕著になっていた。しかし、デジタルやハイテクの幻想に幻惑され続けていたヒトはいた。そういう連中への最後の一発といった方が、より適切だろう。もっとも、ずっとストロングスタイルでやってきた人にとっては、釈迦に説法なのだろうが。



7/1w
華麗なる日本の輸出工芸 〜世界を驚かせた精美の技〜
たばこと塩の博物館 渋谷

江戸時代、鎖国といわれながらも、長崎出島を舞台として、オランダ東インド会社による貿易は盛んに行われ、陶磁器や漆器などは、当時のヨーロッパの王侯貴族の間で珍重され、大いなるブームを引き起こしていた。その波は、開国、そして明治維新を迎えるとともに、工芸品の海外輸出は一段と盛んになり、日本にとって主要な外貨獲得手段の一つとなった。
これらの工芸品が横浜港を中心に大量に輸出されたのは、明治から昭和初期にかけてだが、その中でも明治初期〜中期の作品は、欧米諸国での評価が極めて高い。時に近代社会の黎明期と合致し、ジャポニズムという文化的流行を引き起こし、上層階級だけでなく、資産家層、中産層も巻き込むブームを引き起こした。
この展覧会は、螺鈿・芝山細工、漆器・蒔絵、陶磁器、寄木細工、金工・象牙鼈甲細工など、コレクターとして知られる金子皓彦氏の収蔵品の中から、約200点を選び展示するものである。美術史というと、アカデミックには、西欧の影響を受けたハイブローなファインアートの流れだけが強調されがちだ。しかし、そのバックグラウンドには、江戸時代から続く、幅広いバックグラウンドがある。
昨今話題の「クールジャパン」もそうだが、この手の「商業的」美術は、日本国内ではポピュラリティーはあるものの、学識者・有識者からは評価されず、海外で、それも商品・ビジネスという文脈から着目・評価され、それが逆輸入されてはじめて、アカデミックな文脈で語られる傾向がある。ある意味、それは100年も、200年も変わっていないコトに気付かせてくれる。



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