Gallery of the Week-Aug.11●

(2011/08/26




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コレクション展「こどもの情景−こどもを撮る技術」
東京都写真美術館 恵比寿

平成23年度の東京都写真美術館のコレクション展「こどもの情景」の第二弾は、第一弾の「戦争とこどもたち」から打って変わって、「こどもを撮る技術」と題し、作品制作に関わる撮影技術、フィルムやカメラといった写真技術の変化を、こどもの写真の変化・発展を通じて見て行こうという企画展である。
会場は大きく二部に分かれている。前半は、ダゲレオタイプ写真の発明から、乾板、フィルム方式の実用化まで、19世紀を通した写真技術の進歩が、いかに子供の写真の撮影を可能とし、それを広く大衆の間に普及して行ったかを見て行く。後半では、主として20世紀の欧米・日本の著名写真家の作品の中から、子供を被写体としたものを取り上げ、題材としての子供がどう扱われてきたかを見て行く。
第一弾もそうだが、「こどもの情景」というテーマ設定は、企画展としてはかなり厳しいモノがある。今回も、子供を主語に持ってきてしまうと、どうしても展覧会自体のテーマ性が曖昧になってしまうことは、否定できない。しかし、「子供を媒介として見た、写真の発達史」としてみると、これはこれで、けっこう面白いモノがある。
被写体としての子供は、いつの時代でも極めて魅力的だったことは間違いない。しかし、初期においては子供の姿を撮影することは難しく、それらしい姿が写っているだけでも、大人たちは充分「可愛がる」ことができた。しかし、技術の進歩とともに、より愛らしい表情や仕草の瞬間を捉えられるようになる。これは、写真の技術が発展するとともに、表現としての写真の世界が広がっていったこととシンクロしている。そういう視点からみれば、なかなか興味深い展示とも言えるだろう。。



8/3w
東京の交通100年博
江戸東京博物館 両国

明治時代に、東京の路面電車を経営していた東京鉄道株式会社(東京電車鉄道、東京市街鉄道、東京電気鉄道の三社が合併して成立)が、東京市により買収され、東京市電気局として市営電車が走り出してから、8月1日で100年になるのを記念して開催された、都営交通の歴史を振り返るイベントである。もちろん、昨今流行りの鉄道ブームを意識したつくりにもなっているが、ある意味、江戸東京博物館で開催するにふさわしい展覧会である。
基本的には、路面電車、バス、地下鉄などなど、過去、東京市営、東京都営で運行されてきた交通機関の歴史を踏まえつつ、それが東京市民、東京都民の暮らしをどう支え、東京という都市のインフラとして機能してきたか、という視点から構成されている。事実上、都が主催者のようなものなので、どうしてもそういう構成にならざるを得ないと思うが、逆にそれが、より広い客層にアピールする要因となっている。
そういう意味では、ポスターの図柄に尽きる。実際に展示でタイアップもしているが、まさに「三丁目の夕日」の世界なのである。昨今の鉄道ブームとは、実は「昭和レトロブーム」であるというのは、鉄道趣味人としてのぼくが看破したところだが、これもまたその「リアルテーマパーク」なのだ。昭和の東京を生きた人なら、それなりにノスタルジーに浸ることができる。
実際、子供にせがまれてきたと思われるアラフォーのお母さんが、「あ、私が生まれた頃ってこんなだったんだ」みたいに、新たな発見に目から鱗、というような場面にも、会場で何例も出会った。とかく、公営事業は、役所がやっているという面が表にでがちである。しかし、地方公共団体は、そのメインの業務自体も住民へのサービス業というのが本質である。この切り口を思い立ったセンスは良いと思うので、それを都が他の行政でも見せてくれるといいのだが。



8/1・2w
Gallery of the Week番外編

今年の夏は、7月末から8月頭にかけて、「中学に入ったら、行きたい外国に旅行につれていってあげる」という子供との約束を果たすべく、彼の希望でロンドンとパリを訪ねることにした。もう中学生なので、行きたい場所、見たい所は、基本的に自分で選ばせたが、当然のように大英博物館とルーブル美術館は入っている。しかしRPGゲーム好きだけに、それだけではなく、案内マップを検討して、クエストよろしく「全部屋制覇」を目指したいとのたまう。ぼくはどちらも行ったことがあるし、大英博物館については複数回行ったが、流石に全部屋制覇はやっていない。ということで、展示中の全作品を見たわけではないものの、廻るだけは当日オープンしている全部屋制覇を達成。おバカな記録ではありますが、以下その感想など。


大英博物館 British Museum

ここはロンドンに来るたびに立ち寄っているが、1997年に図書館が大英図書館として独立し、2000年にグレート・コートが完成してからは、初めての訪問。要は、今世紀になってから初めてということである。まず気がつくのは、大英博物館といえども、博物館のグローバル・スタンダードに近づいてきたな、という点。アメリカや日本の博物館、また故宮博物院などでもそうだが、重要な収蔵品は、うやうやしくガラスケースの中で温度・湿度を管理しながら展示しているが、大英博物館では、石造の大きな収蔵品が多いこともあって、ポロっとそのまま置いているモノが多かった。たしか、ロゼッタストーンも、前来たときはそのままドカっと置いてあるだけで、触ろうと思えば触れる状態だったが(触っているヒトもいた)、今回は立派なガラスケースの中に鎮座していた。もちろん、今でもそのまま「置いてあるだけ」の展示もあるが、触ろうとすると、ちゃんと係員が注意してくれる。まあそれでも、注意しないと肘がぶつかっちゃうような展示もまだあるのも確かだ。全部廻ってみると気付くのは、コレクションだけでなく、博物館の各棟自体も、篤志家の寄贈によって建てられたものであり、その創設者の意思を尊重するような形で運営されていることである。一見、温泉旅館の増築のようなつくりだが、それにも意味があるのだ。ある意味、こういう施設が国立や公営ではないというところが、英国の文化的な深さを示しているということだろう。

ルーブル美術館 Musee du Louvre

パリ自体が40年近く前の学生時代に来て以来なので、当然ここもそれ以来ということになる。したがって、1980年代のグラン・ルーブル計画が完成して以降のルーブルは、これまた初めてということである。大英博物館と対照的に、ここはもともと国家プロジェクトとして、文化国家としての国威発揚の象徴として建設され、発展してきた。ある意味、これは非常にフランスらしいところでもあるが、良い面でも悪い面でも、そのあり方を根底的に規定している感じがする。よく、大英博物館の収蔵品に対し、帝国主義時代の略奪品という言いかたをすることが多いが、古代文明の遺物については、あちらが植民地で貴族などが集めたコレクションを核としているのに対し、こちらの方が余程国家的な収奪の成果といえるだろう。とにかく、その物量のスゴさには、改めてびっくりする。18世紀までの、あらゆる文化を収集したかのようである。まさに、中国の歴代王朝にとっては、歴史的な文物四宝の所有が王権の正当性につながるように、フランスこそが、有史以前から続く西欧の文化の正当な継承者であり、その最高峰であることを誇示しているのだろう。ところで、全部廻ってみると非常に面白いことを発見する。最近では、東洋人では圧倒的に中国人が多い。しかし中国人の団体は、モナリザ、ミロのヴィーナスなど、出没するところが限られている。日本人と韓国人は、かなりマイナーなところも、それなりに鑑賞しているヒトがいる。しかし、マイナーなところに来る韓国人は、いかにも美大生や美術ファンといった濃いヒトが中心だが、日本人は普通のシニアカップルでも、自分たちの興味のあるところにはちゃんと出没している。微妙に、今の世界の中での東アジア3国の位置付けを反映しているようで面白い。ところで、ここの呼び方は国によって微妙に違って、日本語ではルーブル「美術館」、韓国語ではルーブル「博物館」、中国語ではルーブル「宮」となっている。このココロ、わかる人にはわかると思うけど、なかなか面白いモノがある。



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