Gallery of the Week-Jan.12●

(2012/01/27)



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フェルメールからのラブレター展 コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ
bunkamuraザ・ミュージアム 渋谷

日本で絶大な人気を誇る、17世紀オランダの巨匠フェルメール。昨年修復が成った、アムステルダム国立博物館蔵の「手紙を読む青衣の女」および、「手紙を書く女」、「手紙を書く女と召使い」という彼の3作品を集めるとともに、17世紀オランダ絵画の一つのテーマとなっていた、人々のコミュニケーションを表現した数々の作品を集めた展覧会である。
全体を見渡すと、細かい書き込みを活かしたタッチなどは、確かに同時代のオランダ絵画と共通しているものの、その画面の明るさという面では、フェルメールの作品は圧倒的な個性を放っている。まるで、アニメでオプティカル処理をしたセル画のような明るさである。個人的には、日本におけるフェルメールの人気の理由の一つは、この「セル画っぽさ」ではないかと思っている。
ファインアート系の方からは出てこない意見とは思うが、意外と大衆の好みというのはストレートなものである。もっというと、ちょうどこの時期のオランダは、貿易の独占を通じて、日本と関係が深かったことも興味をひく。和服風の衣装のブームが、当時のオランダであったことは、出展されている作品にも描かれているが、17世紀オランダ絵画が、その後の浮世絵に通じる江戸時代の大衆美術に与えた影響も考える必要があるかもしれない。
実はこれ、東京で初雪が降った、1月20日の午前中に訪れているのだが、それでもけっこうお客さんは多い。とはいえ、フェルメールの3作品でも、1分ほど順番を待つ気があれば、真正面からゆっくり鑑賞するポジションを得られる程度だが、一般の美術展、それも悪天候の時の客入りを考えると、これはたいしたものである。改めて、人気の高さを感じさせてくれた。



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今 和次郎 採集講義 展 - 時代のスケッチ。人のコレクション。-
パナソニック汐留ミュージアム 新橋

「考現学」の創始者として知られている今和次郎は、東京の街の様子や各地域の農村の変化、そしてそこに暮す人々の風俗や生活の変化を「採集」したことで知られている。特に、1980年代に「考現学」が、折りしもバブルに向かう首都圏の変貌の中で起こったレトロブームとともに復権し、再評価されるとともに、「サブカル」の元祖のように祭り上げられたきらいもある。
しかし、それは今氏の一面であり、実用性のあるモダニズムを実践した建築家・デザイナーとしての業績、「生活学」など新しい学問領域を築いた教育者としての成果も高い、マルチタレントな実績を残したヒトでもある。この回顧展では、その両面を立体的に見せることにより、今和次郎氏の世界の奥深さを見せてくれる。
そこに展示されている資料・作品が、基本的に小さいものということもあり、決して広くはないパナソニック汐留ミュージアムではあるが、ところ狭しと凝縮された今ワールドの深さは、この上なくその空間を広く感じさせるモノがある。それだけでなく、その密度の高さが、クールさとホットさを併せ持つ不思議な世界とマッチして、一段と趣を深くしている。
建築やデザインは、しばしばハコモノと揶揄されるように、ともすると建物そのもの、商品そのものに力点が入りすぎ、それを使うはずの人間の姿を見失ってしまう。というより、建築家やデザイナーは客体としての「モノ自身」にこだわりがありすぎるがゆえに、その世界に没入しがちである。しかし大事なのは、人々がその建物で生活する姿、その商品を使って幸せになる姿である。それを1920年代にすでに見抜いていた人がいたということを、我々は誇りにしていいだろう。改めてそれを感じた。



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第6回 shiseido art egg #1 three展
資生堂ギャラリー 銀座

資生堂ギャラリーが主催する、新進アーティストに個展の機会を与える公募展、shiseido art eggは、今年で第6回目を迎える。今回は、20代を核とした若手アーティストを中心に、314点の応募があり、その中から、three、鎌田友介氏、入江早耶氏の3組が入選となった。その第一弾として、3人組のアートユニット「three」の個展が開催された。
threeは、福島出身の25歳になる同級生の男性3人組である。身近な材料を使い、非日常的な空間を観衆参加型のインスタレーションで生み出すスタイルで知られる。今回も、約5万個の魚型醤油さしによるオブジェに、映像を投影した作品と、約7千個の飴めやグミでつくった巨大なインスタレーションを展示している。
醤油さしの作品では、映像の一部として観客の影が入り込み、見る人々の動きにより、作品の表情が変化する仕組みになっている。また、飴の作品では、もっと直接的に、観客が自由に飴を取って食べることにより、作品自体のカタチが、時間とともに変化するとともに、その「カス」もまた新たなインスタレーションの一部となるものである。
非日常的なものをつかって、日常的でないものを表現するのは、実は難しい。受け手が、それが日常的かどうかという判断自体を停止してしまうからである。そういう意味では、日常的なものを使って、日常的でないものを表現する手法こそ、シュールレアリズム以来の王道である。ディジタル化で非日常が作りやすくなった分、アナログでシュールな世界がまた重要になってきたことの現われと見ることも出来るだろう。



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