Gallery of the Week-Feb.12●

(2012/02/24)



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畑直幸展「Pelletron new no.4」
ガーディアン・ガーデン 銀座

畑直幸氏は、第4回写真「1_WALL」グランプリ受賞者であり、その副賞として開催される今回の展覧会が、初の個展となる。ユニークな経歴を経てアーティストとなった畑氏であるが、その作品世界も彼の履歴に負けず劣らずユニークな世界を持っている。「1_WALL」では、「メタ写真」とでもいえるような構成の作品でグランプリに輝いたが、今回はそれ以上に独自の世界を構築した。
今回の作品は、確かに要素として写真プリントを使っているものの、写真作品ではない。ガーディアン・ガーデン全体を使い、空間インスタレーションとしか言いようのない、ひとつの作品に仕上げてしまっている。資生堂ギャラリーなどではよくあるが、この会場で、個展で、一つの空間作品に仕上げてしまったアーティストは、記憶にない。
作品は、東京工業大学の研究室の実験設備を撮影した写真と、ケーブルや実験用機械の部品などを使ったオブジェを組みあわせたものである。モノが極めて具象的なだけに、ヒトによって何をどう感じるかは大きく異なるだろう。少なくとも、理系なおかつ工学系の出身者と、そういう場所に縁のない人では、全く見え方が違うだろうし。
それも含めて、結果の知れない波紋を投じるというのが、この作品の意義かもしれない。とにかく、進化中のアーティストなので、次は一体何を出してくるか、皆目想像できない。そこがまた、彼の魅力であり味わいであるといえるだろう。ところで、前回の「電線画家」石原一博氏に続き、妙にこのギャラリー、電線・部品づいているなあ。なんか、今後もいろいろでてきそう。



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芳賀一洋&渋谷クラフト倶楽部展
東京交通会館・ゴールドサロン 有楽町

ドールハウス、建築模型等で活躍する立体絵画作家芳賀一洋氏の作品と、氏の主宰する模型工作教室「渋谷クラフト倶楽部」メンバーの作品を集めたグループ展である。この場で取り上げるのがふさわしいかどうかはさておき、グループメンバーの中に知人もいたりするので、過去の「異種格闘技戦」的なグループ展と同様に、このコーナーで取り上げてみたい。
世間一般から見れば、ぼくのやっている「ジオラマ」的なものと、今回の展示の中心になっている「ドールハウス」的なものとは、大きくいって「同じナカマ」に見えているのだろう。しかし、プロスポーツ選手といっても、野球選手とサッカー選手では、必要な筋肉も判断力も違うし、求められるトレーニングも違うように、それぞれ違うところはかなり違う。
とはいっても、一流選手になれば、スポーツマンシップ的な部分は全く共通だし、互いに違うからこそ新しい刺激を得て学びあえるところも多い。まさに、そういう感じの発見と刺激の多い場だった。そこで使っている材料や技法はかなり共通しているので、現物を見れば、どうやって製作しているのかはすぐにわかる。しかし、最初の発想が違うのだ。
ドールハウスはその名の通り、完全に家の中を描くことがメインであり、ミクロの発想をベースにしている。そして、家構えは、それを包み込む額縁である。ジオラマはそれに対して、街や景色といった家の外側の風景を描くことがメインであり、マクロの発想である。ここでは、家構えは出演者の一つである。
とはいえ、そこで繰り広げられているであろう、人々の生活を描くのが、第1のポイントである点は、全く共通している。だからこそ、立体絵画なのだ。もしかすると、即物的な車輛模型の人たちに一番足りないのは、このヒトの生活への視点なのだ。工学的な模型と、アート的な作品を切り分ける境目も、どうもこの辺にありそうだ。なかなか、面白い発見があった。



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第6回 shiseido art egg #2 鎌田友介展
資生堂ギャラリー 銀座

今年の「第6回shiseido art egg」、二番手に登場するのは、まだ芸大の修士課程に在籍する新進アーチスト鎌田友介氏である。彼の作品は、アルミサッシやガラスといった建材を使用し、立体的な構造物を歪めて平面化した要素を組合せ、空間的なインスタレーションを作り出すところに特徴がある。
ユニークな発想と、大胆な構成で、インパクトのある空間を創りだしている。面白いのは、これだけデカいインスタレーションなだけに、動的でエネルギッシュな要素を持ちながら、同時に、極めて静的でクールな側面も持っているアンビバレントさだ。同様に、何かメッセージがありそうに思わせておいて、純粋な形の面白さに引き込んでしまう二面性も特徴的だ。
特に、奥の回廊の踊り場の下のインスタレーションが興味をひく。まるで、最初からそこにその天井があったかのようなハマリ具合が、シュールさをさらに引き立てている。また、それが入ってくるときには全く目に入らず、会場内、それも奥の空間に入って初めて見えてくるというアイディアもいい。形式というより発想のヒトという感じがするので、今後の大化けに期待したい。
ところで、このGallery of the Week、先週の更新時の手違いから、12年1月のファイルに12年2月のヤツを上書きしてしまい、さらにメニューも、1月、2月とも同じ2月のファイルにリンクさせてしまったという、とんでもない二重ミスがありました。1月のファイルも、けっきょくgoogleのキャッシュから復元するというていたらく。どうもあいすいません。お詫びいたします。



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石原一博展「巽電気〜制御盤制作企画室〜」
ガーディアン・ガーデン 銀座

第4回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者である石原一博氏は、「巽電気」という工場を営む家で育ち、デザイナーを経て、現在はその工場で電気工事士として働いている。氏は、その経験を活かし、電気の配線部品をモチーフとし、好んで作品としている得意なアーチストである。描きます。その配線は自由に経験があるからこそ、描ける世界です。今回の個展は、「1_WALL」グランプリの副賞であり、やはり得意の「電気モノ」の作品を発表している。
フィクションではあっても、技術やメカのわかっている人が創り出すモノは、それなりにリアリティーがある。蒸気機関車の仕組み、プロペラ機の仕組みがわかっている人が描くメカは、実際には存在しないモノでも、作れば実際に機能するモノが多い。アニメのメカ設定でも、わかる人が見ればわかる。
配線(廃線萌えな人もいるが、こりゃ字が違う)やデバイスに対する造詣とロマン、そして深い愛情が伝わってくるからこそ、多くの人に対して、不思議な共感を生む。ジャンクパーツを組み合わせて、立体作品を創り出す、現代アートの作家は多い。しかし、そういう作品と決定的に違うのは、題材への愛だろう。
おたくならずとも、モノに感情をこめて接することができるのは、全てのモノに神を見いだす、八百万の神の国ならではである。愛車とは、愛用のクルマという意味でなく、愛情をかけているクルマという意味である。昔住んでいた家の、柱や壁についた傷跡に、懐かしさを感じるヒトも多い。そういうメンタリティーのない、キリスト教圏の人たちが、これを見て何を思うか、大変興味深い。



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