Gallery of the Week-Oct.12●

(2012/10/26)



10/4w
磯部昭子展「u r so beautiful」
ガーディアン・ガーデン 銀座

ガーディアン・ガーデンの「The Second Stage at GG」シリーズは、『ひとつぼ展』および「1_WALL」の入選者の、その後の活動を個展として紹介する展覧会である。その第32弾として、2001年第18回写真『ひとつぼ展』に入選し、現在はファッション写真などで活躍する、磯部昭子の個展が行なわれた。
今回の作品は、夜のドライブでヘッドライトの明かりに景色が浮かび上がるという、幼い頃の光景をモチーフとした組写真である。ある意味、光と闇、あるいは光と陰というのは、写真作品の基本である。その対比が、あらゆる画像を生み、あらゆる表現を生み出す。そういう意味では、作者の言う「幻想的で不思議な物語」とは、写真が本質的に持つフィクション性に他ならない。
現実のシーンを撮影し、画像上に定着させているにもかかわらず、そこには現実になかったストーリーやコンテクストが生まれている。だからこそ、記録ではなく、作品になる。逆に、演出を凝らして撮影したカットであっても、被写体がリアルで生身である以上、演出意図にとどまらないものが「記録」されてしまう。
デジタルの時代になり、写真のための照明がなくても、どんな明かりでもそのまま写真が記録される時代になった。原点は原点を押えているのだが、まさにその技術的進歩が生み出した広がりが、作品の演出という面でも、実際にそこに見えていたものの記録という意味でも、効果的に生きているといえるだろう。



10/3w
東京駅復原工事完成記念展 始発電車を待ちながら
東京駅と鉄道をめぐる現代アート9つの物語
東京ステーションギャラリー 丸の内

2006年以来進められてきた東京駅の復原工事が完成し、同じく2006年以来休館していた「東京ステーションギャラリー」も、6年ぶりに復活した。そのこけらおろしとして、復原工事完成を記念して開催された企画展である。秋山さやか、大洲大作、クワクボリョウタ、柴川敏之、パラモデル、廣瀬通孝、廣村正彰、本城直季、ヤマガミユキヒロという9人の現代アート作家が、「東京駅」あるいは「鉄道」をテーマとして制作した作品が発表されている。
前のギャラリーは、北口ドームと中央部を結ぶ2階の部分にあったが、今度のギャラリーは、北口ドームの改札口より北側の部分を、3階分フルに使っている。スペース的にもかなり広がり、新しい東京名所としての赤レンガ駅舎の、ホテルと並ぶ顔としてのプレゼンスも充分示している。
建物の機能としては、現代的にリファインされているだけに、前のギャラリーよりもアコモデーションは各段によい。とはいえ、2階部分の展示室は、赤レンガの壁面やクラシカルな窓を活かすなど、前のギャラリーのイメージもウマく引き継いでおり、スペースの意匠としてはなかなか良いのではないか。
まあ、内容については、ひとこと「オープンのご祝儀」といっておこう。ぼく自身が、鉄道の写真を撮ったり、鉄道のジオラマを作ったり、鉄道をテーマとした作品について語れといえば、いくらでも語ることはあるのだが、500円という入場料金も含めて、美術館に来る人というより、東京駅の赤レンガ駅舎を見に来た人がターゲットだと思うので、これはこれでいいのではないか。これで、今まで関心のなかった人が、アートに興味を持ってくれれば御の字、というところであろう。



10/2w
機械の眼 カメラとレンズ
東京都写真美術館 恵比寿

平成24年度の東京都写真美術館コレクション展は、写真の技法と表現にスポットを当てた「光と影の芸術 写真の表現と技法」をテーマとして展開されているが、その最後となる第三弾として開催されるのが、この「機械の眼 カメラとレンズ」である。その名の通り、写真作品はボディーとレンズを駆使して初めて作ることができる。そして、表現に最適なその組合せと使いかたが、多くの印象的な作品を生み出してきた。
全体は、「シャープ・フォーカスとソフト・フォーカス」「パン・フォーカスとディファレンシャル・フォーカス」「レンズの視覚−広角レンズと望遠レンズ」「カメラ・アングルの解放−俯瞰撮影と仰角撮影」「時間−長時間露光/ブレ/瞬間」「人工光」「未知の世界へ」「特殊効果」の8部構成となっており、それぞれの手法を活かした名作により、そのテクニックが紹介される。
今年のコレクション展は、どちらかというとコンセプト先行で、無理にとってつけたような構成になってしまった部分も見られたが、今回のは一味違う。まさに、「実作品でみる写真の教科書」という感じで、今となっては基本的とも言えるカメラテクニックをリアルに知ることができる、なかなかいい企画といえるだろう。
特に、ここに取り上げられたような基本表現は、ミラーレス一眼以上のデジカメならば、自由に縦横に駆使することが可能である。いや、銀塩ではなくデジタルだからこそ、よりイージーかつ自由に表現を駆使できるのだ。たとえばコマ毎にISO感度を、それもフィルムではありえないような幅で設定できるだけでも、これらのテクニックの利用範囲がどれだけ広がることか。まさに、デジカメから入った写真ファンにこそ、ぜひ見てほしい企画展である。



10/1w
操上和美 時のポートレイト ノスタルジックな存在になりかけた時間。
東京都写真美術館 恵比寿

広告や出版物などコマーシャルフォトの分野で、1970〜80年代にかけて一世を風靡した写操上和美氏。その後も、常に新たな画像・映像表現に挑戦し続けてきた。そんな彼の作品を一堂に集め、独自の視覚世界を表現するユニークな個展である。代表的な作品集である、『陽と骨』『NORTHERN』『Diary』『陽と骨U』から選ばれた作品を再構成し、会場全体を使って一つのインスタレーション作品としている。
通常、写真作品というと、写真家のある特定の意図に基づき撮影されたカット、もしくは複数の同一の意図により撮影されたカットを構成した組写真により構成される。そこには、明確な意思があり・意図があり、それにより伝えようというメッセージなりイメージが存在している。しかし、それをバラバラに解体してしまうことにより、まったく別のストーリーが生まれてくる。
今回の「作品」の面白いところは、再構成により、同じ画面から、当初の意図とは全く別の意味性が生まれてくる点である。これを突き詰めてゆくと、必然性や意味性のない、偶然に取れてしまったコマに対しても、息吹を吹き込めることになる。これは、写真のカットの中には、ファクトが写りこんでいるがゆえに、なせるワザである。
そういう意味では、どんな写真のどんなカットでも、ポストプロ的な構成というプロセスまで考えれば、無駄なコマというのはありえないのだ。あらゆる写真には、それなりのリアルが宿っている。それが写真家の意図と違うものでも、全く意図しなかったものであっても。それを引き出すプロセスもまた、写真表現の中なのだということを、改めて感じさせてくれた。



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