Gallery of the Week-Jan.15●

(2015/01/30)



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LEE KAN KYO展 「ドリーム・あの子(Don't stop)」
ガーディアン・ガーデン 銀座
日本のカルチャーに興味を持ち、2007年以来日本で活躍する台湾出身のアーティストLEE KAN KYO氏の、第10回グラフィック「1_WALL」グランプリの受賞賞品としての個展である。今回の展示も、グランプリを取った作品「あの子のバッチ」と同様、架空のアイドルをモチーフにした数々の作品を組み合わせたインスタレーションとなっている。
「マイルドヤンキー」ではないが、今の日本の大衆文化が、かつての70年代80年代のような、「背伸びをする上昇志向を持った若者の、海外トレンドや先端文化への憧れ」から生まれるのではなく、「まったりと生きる若者の、当たり前の等身大の日常の繰り返し」の中から生まれてくることを見事に見抜いている。それは、日本の大衆のインサイダーでもなく、かといって全くそれと違うカルチャーの中にいるのでもないという、台湾出身という絶妙な立ち位置のなせるワザだろう。
日本人ならベタで当たり前に思っていることも、それはそれなりにユニークで個性的なポップカルチャーである。とはいえ欧米人のように、それをエキゾチックでファンタスティックな視線で見つめるわけではない。それどころか、日本の大衆と同じ目線でのあこがれやワクワク感さえ持って接している。それは、中国式の「Lee Huan Jiang」ではなく、あえて日本語読みの「Lee Kan Kyo」と名乗っているところからも見て取れる。
かつては日本の中で、首都圏と地方という構造的な違いがあり、求心力が働くことで、文化も経済も臨界反応が起こるというパターンがあった。しかし、まさに「マイルドヤンキー」のように、究極の均質化が成し遂げられ、マントル対流のようなダイナミズムは見えなくなった。しかし、視点をアジア全体に向ければ、日本全体とアジア全体とで、ある種のダイナミックな構造が生まれていることがわかる。そういう橋渡しとして、Lee氏は貴重な存在ということができるだろう。



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浅葉克己のタイポグラフィ展「ASABA’S TYPOGRAPHY.」
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座
今やアートディレクター界のビッグネームのひとりである、ミスタータイポグラフィー浅葉克己氏の個展、「ASABA'S TYPOGRAPHY.」。マルチアーティストである浅葉氏の世界は、ギンザ・グラフィック・ギャラリーという限られた空間では、ほんの断片しか展示することができない。しかし今回の展示会では網羅的にせず、「浅葉氏の今」という「輪切り」見せるという発想の転換で、密度の濃い展示を実現している。
今回の展覧会では、最近作を中心に、数々のタイポグラフィー作品やアートディレクションを行なったグラフィック作品も多数出品されている、しかし、今回のメインといえるのが、壁一面に張り出された「日記」であろう。2008年に21_21 Design Sightで行なわれた「祈りの痕跡。」展で発表された浅葉氏の日記。その後の展開を含む十数年分の日記のページが、1階、地下1階を通して埋め尽くされている。
一般に、アーティストのメモというのは面白い。それは、完成した作品がどのように生まれ出て、どのように形になっていったか、その完成に至るプロセスが手に取るように記録されているからだ。これは最終的な完成作品だけを見たのではわからない部分である。特に、自分もクリエイターである人間にとっては、非常に啓発される。
さらに、浅葉氏の日記は、多分自分自身がそのプロセスを再現できるようにということだと思うのだが、そのモヤモヤした原始的な状態から、かなり克明に時系列的な記録が成されている。そして、マルチアーチストの浅葉氏らしく、それが面白いのである。これはじっくり読んでいると、いくら時間があっても足りなくなる。会場を訪ねた方は、ぜひこれを味わっていただきたい。



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第9回shiseido art egg 川内理香子展 Go down the throat
資生堂ギャラリー 銀座
資生堂ギャラリーは1919年のオープン以来、各種の企画展の実施だけではなく、アーティストの育成・支援のための活動を継続してきたことでも知られている。その活動の一環として今世紀になってから始まったのが、「shiseido art egg」という名の、新進アーティストにギャラリーという場を直接提供する公募プログラムである。
早くも9回目となる本年度は、340件の応募が集まり、その80%が20代〜30代の若手アーティストであったという。その中から3名のアーティストが選ばれ、ほぼ1月、2月、3月と一月単位で個展を開催する権利を得た。その第一弾として登場するのが、まだ20代半ばという川内理香子氏である。
彼女は、「食べモノ」と「人のカラダ」をテーマとした絵画を描く。これら「命の原点」といえるものを、シンプルなドローイングで描写する中に、精神や思考を表現した作品を作っている。今回も、会場全体にこれらの世界をち構成したような展示となっている。
このところ、比較的狭い資生堂ギャラリー全体を一つの作品として構成する大胆なインスタレーションの展覧会が多かったが、今回はやけに会場が広く見える。会場の白い壁に、ミニマルな作品がちりばめられている様子は、まるでギャラリーというよりはアーティストのアトリエという雰囲気である。特に習作っぽいドローイングが特徴なだけに、あたかもアーティストがそこで次の作品を構想しているような感じも伝わっている。そう思うと、この余白感は、川内氏のこれからのノビシロを暗示しているような気さえする。今後の発展に期待がかかるところだ。



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東京駅開業百年記念 東京駅100年の記憶
東京ステーションギャラリー 丸の内
東京駅開業100周年を記念して、東日本鉄道文化財団の運営する3つの施設、「鉄道博物館、」「旧新橋停車場 鉄道歴史展示室」そしてこの「東京ステーションギャラリー」で並行して行なわれる3つのイベント。その2つ目として「東京駅100年の記憶」を観覧した。正月の端境期で、イベントが限られていたということもあるのだが、ひとまずは足を運ぼうと思っていたものでもある。
それぞれ会場毎に特色を出した展示となっているが、まさに東京駅の構内で行なわれるイベントということで、文字通り東京駅と丸の内の100年にスポットライトを当てた企画となっている。会場は3部構成で、東京駅の開業とともに日本を代表するビジネス街として整備の進んだ丸の内の歴史を振り返る「丸の内の100年」、建築物としての東京駅の歴史を振り返る「東京駅の100年」、小説や絵画、写真といった作品の中で特徴的に扱われてきた東京駅の姿を振り返る「記憶の中の東京駅」からなっている。
果たしてこの企画内容自体が「東京ステーションギャラリー」にふさわしいのかどうかという問題はあるものの、東京駅を主語に考えれば、この手のイベントを実施するスペースは他にはなく、100周年というエポックを記念するものという意味では、それほど違和感はない。というのも、内容的には第三部を除けば、「100年の歴史」というところにかなりハードに迫っている構成だからである。
そういう意味では、鉄道ファンをはじめとして、近代史フォン、都市ファン、建築ファン等々、コアな人々にも充分楽しめる内容となっている。もちろん一般の人も、レトロブームで昔を懐かしんだり、社会科見学的なノリだったりという感じで充分楽しんでいただけると思う。実は東京駅の復元作業の工事中には、仕事で何回か現場を見学しているんだよね。その時の印象で言うと、100年の躯体の上と下に新しい構造物をくっつけていて、その接続部分が実に面白いのだが、これはマル秘なのかな。




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