Gallery of the Week-Mar.15●

(2015/03/27)



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APPLE+ 三木 健|学び方のデザイン「りんご」と日常の仕事
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座
グラフィックデザイナーとして活躍する一方、大阪芸術大学教授として独創的なデザイン教育の実践でも実績を残している、三木健氏の業績を示す展覧会である。1F会場ではスイスで国際出版された「学びをデザインするプロジェクトAPPLE」を、B1会場では、ポスターやエディトリアルデザインなど、近年のデザイナーとしての作品を展示している。
学び方のデザイン「りんご」は、誰もが知っているが、それゆえ日常的・常識的にしか捉えられなくなってしまっている「りんご」を題材に、その形や存在、イメージの奥深さの再発見を体験することから、デザインの楽しさや奥深さに気づかせる教育メソッドである。
その内容は、グラフィックデザインを学ぶというよりは、発想法やイメージの膨らませ方を学ぶメソッドと呼べるような普遍性を持つものである。個人的な感想になるが、こういうカリキュラムは、美大の学生以上に、理系、特に工学系の学生にこそ学んでほしい内容である。化学の基礎実験など多くの工学系学科には必要ないが、こういう「発想法」の教育こそ必要なのだ。
B1の近作の展示は、ある意味「三木ワールド」炸裂とでもいえるように、独自のテイストが充満している。一階の展示を見てから地階に移ると、その特化している方向が、縦と横とでもいうように、全く違うベクトルなのが面白い。こういう立体構造を持っているからこそ、二足のわらじの両立がウマくできるのかもしれない。



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第9回shiseido art egg 狩野哲郎展 Nature/Ideals
資生堂ギャラリー 銀座
第9回の「shiseido art egg」、その第三弾は狩野哲郎氏によるインスタレーションである。狩野氏は、陶磁器やガラスなどの人工物と木の枝などの自然物を使用し、それらの色と形だけに着目して組合せ、本来の意味性や文脈から自由なインスタレーションを制作するスタイルを得意としている。
今回の作品も、同様のマテリアルを活用し、アプローチの階段から始まり、ギャラリーの3次元的空間を活用したインスタレーションを会場一杯に展開する。空間の広がりも活かしているものの、細かいマテリアルを使用しているだけに、かなりの密度で作品を展開している感じがある。
特に、今回は生きた鳥をインスタレーションの一部として使用し、会場内で放し飼いにするというユニークな試みも行なっている。動物園の放し飼いの鳥舎よろしく、二重カーテンになった入口をくぐってギャラリーに入るというのも、なんとも不思議な感覚である。
不思議なのは、これだけ大規模で大胆なインスタレーションなのに、ミクロなところへはものスゴく視線が集まるのだが、全体のイメージが極めて希薄な点である。これは良いとか悪いとかいうのではなく、そういう表現を意図した結果なのだろうと思う。これが意味するものは一体何なのか。それは極めて難解でよくわからないというのが正直なところではあるが。



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科学開講! 京大コレクションにみる教育事始展
LIXILギャラリー 京橋
京都大学総合博物館には、京都大学の前身である京都帝国大学、第三高等学校、さらにそのルーツといえる1869年に大阪に設置された理系教育機関である「舎密局」以来の、各種の歴史的教材が収蔵されている。その中でも、特に充実しているのが、それらの学校で理科系の教育・研究に力を入れていたこともあり、科学系の教材である。
この展覧会では、明治末から大正期という20世紀初頭に、三高で使われていた物理実験機器や生物標本、教育掛図などの科学教材の現物を約100点を展示することで、当時の西欧の最先端の科学技術を当時の日本人がどのように学び、それらを通じて日本の近代化を推進する人材が育っていったのかを振り返る。
当時は「未来派」ではないが、最先端の科学技術が人類に夢と希望を与え、あらたな発明発見が幸福をもたらすと信じられていた時代でもある。アールヌーボー、アールデコに通じる、レトロでゴージャスな実験器具や計測器のデザインは、まさにそういう時代の活力を感じさせる存在感がある。
それにしても、一部の好物標本を除くと、現物の標本でもよさそうな動植物まで、わざわざ模型やレプリカを作り、それを教材としている。このあたりには、理学部より工学部的なこだわりを感じてしまう。やはり、当時のように「欧米先進国に、追いつき追い越せ」が教育の主眼だった時代には、何かを発見することより、既知のものを効率的に身に付けるのが至上命題だったことを感じさせる。科学に疎い人でも、レトロなものやスチームパンクが好きな人には大いに楽しめる展覧会である。



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溝端貢展「play」
ガーディアン・ガーデン 銀座
ガーディアン・ガーデンが主催する公募展『ひとつぼ展』「1_WALL」の入選者のその後の活躍を紹介する、「The Second Stage at GG」シリーズ。その38回となる今回は、2002年の第20回グラフィックアート『ひとつぼ展』に入選した溝端貢の個展である。その後はエディトリアルデザインを中心に、アートディレクター、デザイナーとして活躍しているいという。
今回の個展は、それらの経験を活かし、カタチとコミュニケーションを結びつける参加型の作品を引っさげての登場となった。トリックアートとまでは言わないが、コロンブスの卵というか「こういう手があったか」と思わせる、誰もが見逃していたニッチからスルりと心の隙間に入り込んでしまうような作品群である。
あまり語りすぎるとネタバレになってしまうので、抽象的、一般的な説明にとどめるが、アナログ・デジタルとか、古典的・先端的みたいな対立軸ではなく、正攻法でオーソドックスなことをやっても、まだまだ可能性はあるというコトを身を持って示しているといえばいいのだろうか。
残り物に福というか、「ここにまだこんな表現の余地があったのね」という驚き。そこを突き詰めれば、その先にフロンティアが広がるというのは、ある意味表現の本質なのだが、この何十年か、ともすると忘れがちだったことかもしれない。足元にある鉱脈にもう一度目を向けることの重要さを気付かせてくれる何かがある。




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