Gallery of the Week-Nov.15●

(2015/11/27)



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三井家伝世の至宝
三井記念美術館 日本橋
三井文庫開設50周年、三井記念美術館開館10周年を記念して開催された特別展。三井家にゆかりのある美術・工芸品を一同に集め、展示する。三井記念美術館では、常設展や館蔵品点を行なわないため、コレクションを目にできる貴重な機会といえる。現在館蔵の作品だけでなく、かつて三井家が所蔵し、現在は他の美術館や博物館が所蔵する作品も含めて展示しているところがユニークである。
展示品の半分以上が、国宝・重要文化財というところにも、江戸時代から続く三井家のコレクションという歴史を感じさせる。当然対象も、茶道具、絵画、書蹟、工芸、考古資料、能面、刀剣と幅広い。三井家という冠がなくても、日本美術のコレクションとして味わうことができる。
しかし、今でこそCSRだ、社会貢献だと、企業の社会的責任が世界的に言われるようになっているが、すでに300年以上前から、日本の豪商は「文化を育て伝える」ための活動を積極的に行なっていたのだ。江戸時代の豪商が、このような社会的な視点を持った上で経営を行っていたことは、もっと着目されていい。
経営史的な視点からの研究は多くなされるようになったが、経営史と美術史の接点のようなところから、社会的役割を重視するようなマインドがどこから生まれてきたのかを解明する研究がもっと行なわれても良い。明治以降西欧化が進むとともに、秀才主義・偏差値主義が広まってしまう前の、本来の意味での日本的経営の特色こそ、今また再発見・再評価が必要なものではないだろうか。



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小沢剛展 帰って来たペインターF
資生堂ギャラリー 銀座
小沢剛氏は、独特なオリジナリティーとユーモアを感じさせる多様な作品を国内外で発表しているアーティストである。この展覧会は「帰って来た」シリーズ第二弾として、戦争中にインドネシアで従軍した架空の日本人画家「ペインターF」の戦前から戦後のストーリーを、絵画と映像作品にとして仕上げたものである。
「ペインターF」の物語は、実在した従軍画家たちのリサーチや、残されている記録や研究をベースに構築されている。日本人の一方的な考えとならないよう、インドネシアの美術史家、ペインター、ミュージシャンらと、全てのプロセスにおいて共同制作で作品を仕上げていったという。
まあ、いいたいことはすぐにわかるし、何の話かも見ればわかる。なんらかの「作品」であることは間違いないのだが、これがアートなのかどうかということについては、にわかに頭を抱え込んでしまう。キャンバスに油絵の具で描かれてギャラリーに展示されているものがアートだと単純に思える人なら、何も迷うことはないだろう。
しかし、表現のあり方こそアート性のカギだと考える向きには、これをどう捉えるかは、ほとんど踏み絵のようである。個人的には「キャンバスに描かれたコミックス」だと感じた。そして、コミックスはアートとは違う表現だと思う。まあ、そのくらい議論を呼ぶような実験性を持った問題作であることは間違いないし、この作品を2015年に見ておく意味はそこにあると思う。



11/2w
字字字 大日本タイポ組合
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 銀座
秀親氏と塚田哲也氏の二人により1993年結成された実験的タイポグラフィユニット、「大日本タイポ組合」。結成以来、カナや漢字、英数字などいろいろな文字を、一旦解体しそれを再び文字に再構築することにより、新たな文字表現の可能性を追及している。この展覧会は、そのユニークな活動をオリジナルポスターの展示で紹介する。
Facebookで友達になっている方は良くご存知だと思うが、フォントやタイポグラフィーは、ぼくの好物の一つである。もちろん、マトモにデザイン的な意味でそれらを捉えるのも、仕事柄専門ではあるが、この「文字で遊ぶ」という発想がこれまた好きなのである。高校生の頃は、実在する部首を組合せ、存在しない漢字を作り出して、それを組み合わせた熟語を創出、その意味を勝手に考える遊びなんてのを友達とやっていた。
さらにエスカレートすると、駅名を圧縮してひとつの文字にしてしまう、なんて遊びも流行らせた。けい構えの中に大と山を入れて「岡」みたいな字にし「大岡山」なんてのは、けっこう傑作だったと思う。それをまことしやかに、半紙に毛筆で「書き初め」するのである。これはけっこうシュールな「作品」ができる。なんか脱線しまくってしまったが、パズル的・ゲーム的に文字で遊ぶのは大好きなのだ。
当然、今回の展覧会も顔がほころびっぱなしである。高校生の頃にこういう展覧会を見れたら、その後進んだ道もずいぶん違っていたんじゃないだろうか、と思わせるぐらい楽しめる。説明してもネタバレなんで、とにかく見てほしい。特に、中高生とか若い人には、ぜひみてもらい、ピンときた人はカミングアウトしてもらいたいものだ。



11/1w
春画展
永青文庫 目白台
その実施が発表されて以来、美術展としては今年最大の話題を呼んでいる「春画展」。連日、客の入りも上々ということで、ますます人気は高まっているという。最初のアナウンスがあったときから、江戸時代の大衆文化には関心が高いこともあり、これはぜひ見に行かなくてはと思っていた。ということで、比較的お客さんの数が少なそうなタイミングを狙って、鑑賞に行ってきた。
実は、永青文庫に足を踏み入れるのは、今回が初めてである。なるほど、電車だとどの駅からも同じように遠いところにある。歩いてゆくと、会場付近の狭い道にはすでにお客さんと思しき人の姿も見える。運良く、会場から溢れるほどの人波ではない。館内の人数もほどほどではあるものの、永青文庫自体がこじんまりとまとまった洋館で決して広くないため、展示室の密度はそこそこ高い。
今回の展示は、2013〜14年に大英博物館で開かれた春画展をベースに、日本で初の春画専門の展覧会として実施された。実施までには、いろいろな苦労や曲折があったと聞くが、肉筆春画から浮世絵、版本など、菱川師宣、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、葛飾北斎など、錚々たる絵師と有名な版元が創り上げた代表的な作品が展示されている。
これだけの数が並ぶと、単体で見たのとは違う世界が見えてくる。エロスや耽美的な世界は一歩後ろに退き、江戸文化らしい滑稽さや風流さが全面に出てくるのだ。これはまぎれもなく、クリエーターの側がアンダーグラウンドなモノとしてではなく、メインストリームの作品として表現したからに他ならないことを示している。「性」は目的ではなく、手段。ある意味、今のアダルトな業界にもある部分受け継がれてるメンタリティー、江戸時代の「業界」から脈々と受け継がれているものであることを改めて実感した。




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