はるか三瓶山を望んで -1971年12月21日-


さて、こうなるともう流れですから、例によってシーケンシャルに続けまっせ。ということで前回の続きで、同じ1971年12月21日の午後。当然、山陰本線での撮影の続きです。駆け足なんですが、山陰周辺では、浜田機関区(米子機関区に予備車)と豊岡機関区にC57の配置があり、風前のともしびの定期運用を持っていました。これを、ひとまず押えておきたかったのです。そもそもぼくが本格的に蒸気機関車の撮影にのめりこんだきっかけは、松本さんや平井さんなどがアトリエS名義で発表した「Light Pacific '70」。元々C55、C57といったライトパシフィックは大好きでしたが、この写真集を見て、ライトパシフィックの走っている路線には、まだまだ誰も発表していないフォトジェニックな撮影地があることを確信し、それを一つでも見つけてフィルムに残すことがぼくの使命だ、と勝手に思い上がったところから始まっています。すでにSLブームが始まっていたので、すでに著名な写真家が名ショットを残している著名お立ち台で撮影しても、それでは自分が撮影する意味がないと、生意気にもガキながらに感じていたぼくとしては、これには背中を押されました。同書に掲載されている線区については、紀伊半島の参宮線や紀勢線以外は、一応すべて何らかの形では制覇しました。その中で山陰本線中部は、出雲市-直江間の斐伊川橋梁のところで松・謙さんが撮影したカットが印象的でした。が、そういうことなので、同じところには行きません。しかし、午前中は湖バックだったので、今度は南向きで山をバックにしたい。ということで、隣の川とばかりに、出雲市-江南間の神戸川橋梁を撮影地に選びました。特に景色がいいワケでも、迫力がある光景が現出するわけでもありませんが、遙か中国山地を背景に、冬の山陰らしい雰囲気は出たんじゃないかと思います。



河岸から、神戸川橋梁を見上げての撮影。やってきたのは浜田機関区のC5712号機が牽引する、上り旅客列車。ハーフシルエットで、曇り空にくっきりと浮かぶC57と、オハフ61 -オハ35-オハ35と続く客車。このあたりは、模型ファンが一番グッとくる距離感でもあります。さて、この機番の考証は、意外とあっさり決めることができます。まず、テンダの台車から、このC57は1次型です。この時期この区間にやってくる可能性のあるC57の1次型で、集煙装置のついているカマは、12号機、88号機、101号機、120号機の4両。しかし、この中で重油併燃タンクがついていないのは、12号機だけ。ということで、細かいところは見えませんが、あっさり比定されました。しかし、12号機を撮影していたなんて、40年以上経って、初めて知りました。9号機、11号機は撮影していますので、5輌しかない汽車会社製C57は、その内3輌出会って撮影していたんですね。いやあ、発見はあるものです。


今度は、国道9号線のところまで下がって、バックの山並みを背景にしての撮影。下り旅客列車を牽引しているのは、朝も撮影した、浜田機関区のD5780号機。これは、集煙装置がついていないので、すぐに比定できます。ぼくは、このぐらい列車が引きなカットって、好きというか得意というか、かなり好んでました。やっぱり、地面屋というか、「車輌だけじゃ鉄道模型にならない」という血が、そうサセるんでしょうか。あと、走っている機関車には、最低限、乗務員の人形が乗っていないと落ち好かないというのも、根っコが同じような気がします。それにしても、1輌目は、スユニ60ですよ。スユニ60-マニ60-マニ60ときて、やっと座席車が出てくるというのは、いかにも亜幹線の普通列車という感じです。「ユ」のところは、新聞輸送でもしていたのでしょうか。スユニ60をマトモに撮ったのって、これっきゃないんじゃないでしょうかね。


さて、このポイントでは2列車しか撮っていません。というか、これしか蒸気機関車牽引の列車は、午後来ないかったんですね。そんなワケですから、同じ列車をカラーで撮影したカットも掲載して、お茶を濁しましょう。実は、こっちのカラーのカットの方が、50mぐらい手前での撮影です。しかし、モノクロが標準55mmでの撮影なのに対し、ブローニーで75mmと広角気味なので、同じ地点ながら、パースペクティブが広がっています。フル編成が写っていますが、なんと10輌編成。平坦区間の通勤列車とかでは、蒸気機関車牽引で10輌以上という編成が、終末期になってもそこそこありました。国鉄末期になると、編成を短くして、フリクエントサービスを目指しますが、まだまだこの頃は「ダイヤに合わせて乗れ」という、上から目線のお役所業務だったことがわかります。蒸気の牽く長編成。模型ではこれ、難しいんですよね。


(c)2014 FUJII Yoshihiko


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