雨の加太越え その3 -1971年3月31日-


さて、雨の加太での一日も、これで3回目。この一日も半ばを過ぎてきました。ときおり強く降ったり、少し収まったり、雨脚こそ変化しているものの、相変わらず雨は続いています。逆説的ですが、これ雨が降っていて、かつその表情が刻々と変化しているので、同じような景色でもメリハリが付いたとも言えるのではないでしょうか。ピーカンだったら、「お立ち台から、おなじみの構図で撮影して終わり」だった気もします。当時は、ギリギリのスケジュールとギリギリの予算の中で、できるだけ日数を長く、なおかつ撮れる列車数も多くして撮れるだけ撮るというプランを立てていますので、一旦スタートしたからには天気に贅沢は言えません。振り返ってみると、この時代の撮影旅行では、天気に恵まれた日のほうが少ないかもしれません。それでも今から見ると、結果的に「他人が撮っていないカット」になっているという意味では、それはそれで運がよかったのかもしれませんね。では、「雨の加太越え」第三回参ります。



たて続けて、上り列車が中在家信号所から坂を下ってきます。やってきたのは、実車13輌。それも空荷の無蓋車がほとんどで、前位のワフと後位のヨを除くと、有蓋車はワム90000とワラ1が1輌づつという、いたって軽装な編成。1輌混じったトキ15000がアクセントになっています。それでもちゃんと後補機がついていますね。なんか、模型で走らすにも好適なプロトタイプという感じです。このぐらいの長さなら、ハコモノのフル編成より短いですから、運転会とかなら楽々走らせられますね。実物は、日によって荷動きが違いますから、いつでも定数一杯というわけではありません。大築堤ですが、通常と逆のアウトカーブ側からの撮影です。


同列車の本務機のアップ。雄大な築堤もいいですが、こういうこじんまりとした築堤も、ジオラマ派としては創作意欲を刺激されます。とはいっても、これ同じ築堤の裏表。谷筋のところを築堤でカットしているので、表と裏で標高差があり、その分高さが違って見えるということなのですが。雨が小降りになっているので、ネガを拡大してみると、かろうじてナンバーが読み取れます。それによるとこの機関車は亀山機関区のD51759号機。製造以来一貫して近畿地区で活躍してきたカマです。なるほど鷹取工場持ちのカマの特徴が随所に見られ、この線区で出会うと、あたかも奈良機関区のカマかと思わせます。


続いて同列車の後補機のアップ。アンダークロスする大和街道が、レンガ造りのポータルで抜けているのが、なんとも雰囲気を出しています。反対側のポータルと築堤との関係と比較すると、このトンネル内部もかなりの勾配になっていることがわかります。しかし、このカットは微妙にナンバーが読み取れません。本務機亀山区ということと、デフ穴の形状からこのカマも亀山機関区所属ということはわかります。あと拡大してみると、3桁ナンバーで600番台ということはおぼろげにわかります。しかし、当時亀山区には600番台は、613号機、623号機、689号機、693号機と4輌もいました。そこで1輌づつ特徴を照合してゆき、キャブの機関士席の特殊ベンチレーターから613号機と比定しました。


築堤も切り上げて、あとは駅まで戻りながらの撮影です。狙って撮るというよりは、もうこうなると撮れるところで撮るという感じですね。加太越えに向かって、一直線に上り勾配を駆け上がってくる地点があったので、そこで撮影です。やってきたのは、竜華機関区のD51452号機が単機で牽引する、下り貨物列車。上り勾配に備えて、給水ポンプもフル回転。またも強まった雨脚の中、給水温メ器からの排気も、ドレーンを切ったかのように激しくまとわりついています。すっかり雨水がたまってしまった田んぼに、半逆光気味の甲線が反射し、白と黒の対比が何か墨絵のようです。デジタルマスタリング時にかなりトーンを出すのに苦労しましたが、これ出すの、印画紙じゃ難しいですね。


同列車のアップ。D51452号機は製造以来東北地区での活躍が長かったカマで、関西地区での活躍は、廃車までの最後の5年間。そう思ってみると、鷹取工場式の重装備改造がされているとはいえ、随所に東北風の特徴が残っています。こうやって見ると、砂撒き管のとりまわしから、汽車会社製ということも見て取れます。近畿地区のカマは、他地区と比較してオリジナル装備を残している部分も多かったのですが、鷹取式集煙装置と重油併燃装置を取り付け重装備化しているものも多く、このあたりの印象は関西出身者とその他の地区の人達とで大きく変わってくることでしょう。なぜかこのカマ、今は青梅鉄道公園に保存されていますが。


(c)2015 FUJII Yoshihiko


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