レスポール・バイヤーズガイド

現行モデル・リイッシューモデルの選び方





・カスタムのほうがよりソリッドな音色
カスタムというと、ルックスや仕様がゴージャスな分、音色もスタンダードよりゴージャスと思いがちだ。エボニー指板や、フレットレスワンダー仕様といったところから、ジャズ向きと思っている人もいるだろう。だが、これがそうではないのが面白いところだ。オールドのカスタムは、マホガニー単板ボディーで作られている。そして、それがカスタムのトーンキャラクターを決めている。そのトーンキャラクタをスタンダードと比べれば、一言でいって「よりワイルドで切れのいい音色」いうことになる。
生鳴りそのものは、スタンダードよりは、ジュニアとかスペシャルとかの単板ソリッドボディーのモデルに近い。P-90とハムバッカーというピックアップの差もあるが、それ以上にトーンキャラクタへの影響は大きい。人によっては、アンプの出音でもスタンダードよりスペシャルの方に似ていると感じるだろう。この違いがわかってくると、カスタムの魅力も見えてくる。
スタンダードこそ、フルアコースティックギターのような、太くてゴージャスな音色が特徴だ。だから、ソリッドで切れのい音色が好きな人には、スタンダードは必ずしも向いていない。そういうガッツのある音を期待している人にとっては、カスタムの方がスタンダードより向いている。実際、ロックンロール系バンドやビート系バンドでは、カスタムユーザも多い。その理由がこの音色の違いだ。
そう考えてゆくと、レスポールの音としてイメージする音が、スタンダードの音ではなく、カスタムの音という人も多いだろう。それだったら、カスタムの方が割安だし、無理にスタンダードにはこだわらないのが得策だ。同じようにプレイ面からいうと、コードストロークプレイを多用する人なら、カスタムが向いている。クランチサウンドで6弦全部奏いても、充分キレがいいサウンドが出る。似ていても違うモデルとして、使い分けている人も多い。違いを知って活かせば、魅力はさらに広がる。
さて、カスタムといえばヒストリックで68年モデルが出ているくらいで、オリジナルのオールドよりも、68年以降に再生産されたモデルの方がなじみが多いかもしれない。しかし68年に再生産されたカスタムは、残念ながら50年代のモデルとは違い、センターマッチングのメイプル・トップ構造となっている。とはいうものの、なぜかスタンダードとはトーンニュアンスが違い、どちらかというとカスタムっぽいストレートな音色がする。不思議なモノだ。
不思議ついでにいえば、68年モデルと69年モデルでは、見た目以上に音が違う。木材の質と、工作の精度の違いが大きいのだが、マトモな音なのは、68年モデルだけ。69年のヤツはすでに70年代のモデルと同じクオリティーに落ちてしまっている。耳のいいヒトが奏けばすぐにわかるのだが、一応アタマの隅に置いておいてもいい情報だ。

・オールドレスポールは高いか
たしかにオールドレスポールには、破格の相場がついている。しかしそれが高いか安いかということになると、単に数字の0の数を数えればいいというモノではない。それにはまず、あのクオリティーのギターを今作るにはいくらかかるかという視点から考える必要がある。それには、お店で今売っているギブソンギターの値段を見ても始まらない。現行のスタンダードモデルはもちろん、ヒストリック・コレクションだって、あのクオリティーに達したモデルとは言い難いからだ。
とにかく材がない。そんな材は高くて使えない。現在のマンコストや、ギター市場を考えると、それだけの手間をかけられない。マスプロダクトとしては、そんなギターはとても間尺に合わないのだ。では、市場性を度外視して、マニアックにオールドに匹敵するレスポールを今新たに作るコストを考えてみよう。
手工ギターを作る名ルシアーに、レスポール・スタンダードをオーダーした場合、今手に入る一般的な材を用いても、5千ドルから1万ドルはするだろう。しかし、これはいわば手間賃代だ。これらのモデルは、現行のプロダクトモデルよりはもちろんいい音がする。しかし、オールドのクオリティーには達していない。それは木が違うからだ。出音で比べれば、その差は歴然としている。
比較的相場が安めのオールドギターを解体して、木部を取りだし、それを利用してギターを組む人もいる。言い換えればそれでも間尺に合うぐらい、オールドギターに使われている材は価値があるということだ。ワシントン条約で輸入できない木材だとかいう前に、生産地に行っても、ギターに使えるような材を取り出せる原木がない。アメリカでは、それらの木材の流通が皆無ではない。しかし今取り引きされているのは、その昔ギター作りに使って残った部分に過ぎない。これでは本来のオールドギターに使われているクオリティーを確保できない。
これらを総合して、バーストに匹敵するクオリティーのギターを作ったとする。そうなるとかかるコストは、およそ2万ドルから2万5千ドルとみるべきだろう。ここまで来るとプレイヤーズ・コンディションだったり、リフィニッシュだったりするバーストと五十歩百歩だ。あとは、ここに骨董品としてのプレミアムが加わるだけ。これでもバーストは高いといえるだろうか。

・80年代プレミアム・リイシューの魅力
ヒストリック・コレクションのブームで、以前ほど騒がれなくなったモノの、80年代にアメリカの大手ギターショップがギブソン社に特注して作らせたカスタムモデル、いわゆる「プレミアム・リイシュー」もお買得なギターだ。この時期のレギュラーのリイッシューの人気が落ちたのに引っ張られて、以前ほど騒がれなくなったが、どうしてどうしてルックスも音もいいモデルがある。
この時期は、トップ材もハードメイプルがまだ入手できた時期であり、マホガニーの質ともあいまって、オールド的なニュアンスを持ったボディー鳴りをもった個体も多い。またハードメイプルだけに、トラ杢もソフトメイプルのギトギトしたトラではなく、オールドのバーストに通じる、味わいの深いトラが入った個体を見つけることもできる。これら最後に残った「いい材」は、ほとんどこの時期にプレミアム・リイシューに使われてしまった。実際、これらのモデルは重さもこの時期のリイッシューとは違い、オールド並みとは言いづらいが、それに次ぐぐらいの軽さを誇っている。
この時期のモデルは、ディープジョイントではない。しかし、中子の工作の精度は高く、音的には何ら問題はない。何度も言っているように、音に影響するのは構造より、工作の精度だからだ。PUはモデルによっては、パワーがありすぎるタイプが乗っていることもある。しかし、これはナンバードでも、リンディーでも、ダンカンでも交換可能なので、マッチするモノをゆっくり選べばいい。個人的には、パワーのバランスを取りながら、マッチングのいいナンバードを載せるのがおすすめだ。ウマくいくと、60年代にそのままレスポールスタンダードが発売され続けていれば、60年代末から70年代初めのモデルはこんな感じだったんだろうなとでもいえるような、バーストが時代と共に正常進化したようなトーンニュアンスが手に入る。
これらプレミアム・リイッシューには、ギタートレーダーモデル、ジミー・ウォレスモデル、ノーマン・ハリスモデルなど、発注したショップやディーラーごとにいろいろな名前がついているが、相対的に買い得といえるのは、83年の59ヴィンテージだろう。比較的本数がある分、値段はこなれているが、逆に「当り」の個体を見つけられる楽しみもある。ここで気をつけなくてはいけないのは、あくまでもアメリカ仕様の59ヴィンテージということ。日本仕様にも、当時の日本ギブソンが発注した59ヴィンテージというモデルがあるが、それは外見は似ているモノの、ただ重いばっかりで全然プレミアムリイッシューではない。
プレミアム・リイッシューを選ぶ場合、ただ一つ問題なのは、個体差というかムラがかなりある点だ。オールドのようにどれを取ってもよく鳴る、というワケにはいかないので、しっかりした耳を持って選ぶと良い。だから、鳴るヤツなら、即買いだ。鳴るかどうかは、生音の腰の強さですぐわかる。弦だけがシャカシャカ鳴るのではなく、ボディー全体がグオーンと鳴ってればバッチリ。アンプを繋いだら、リアを鳴らすこと。クリントーンで鳴らしても、リアが太くて豊かな音色なら、間違いなくよく鳴る個体だ。ためらわずゲットすべきだ。

・コンバージョンは是か非か
オールドギターをもとに、現代的な意味で使いやすく改造を施した「コンバージョン」と呼ばれる仕様が、一部で人気を呼んでいる。オールドストラトのネックやボディーのみ利用し、現代的なハードウェアやピックアップをつけたコンポーネントギターもコンバージョンの一種だが、日本では特にオールドレスポールの改造モノを「コンバージョン」と称することが多い。
改造のポイントとしては、52〜55のモデルに、アジャスタブルブリッジとテールピースを取りつけるモノと、P-90をハムバッカーに換装するものが双璧だろう。もちろん、この両者を併用したモノも多い。52年モデルでは、ブリッジを入れる弦高を稼ぐため、ネック仕込み角度を変えるという、大がかりな改造を施したモノも見かける。
コンバージョンをどう評価するかは、つきつめればユーザー次第だ。しかし、音という面からみればかなりのクオリティーを得ることができることと、改造によりオールドギターとしての価値はなくなることの二点は、基本的なポイントとして認識され、共通見解となっている。
コンバージョンといえども、レスポールの場合では、改造されるのは今述べたようにPUおよびブリッジ・テイルピースに限られる。木の部分は、オールドそのものだということができる。だから、ギターとしての鳴りはオールドそのままだ。このニュアンスは、新しく作られたギターでは出せない。もちろん作りもオールドそのままだ。「木も工作も違う」部分はそのまま受け継がれているので、音に関してはバッチリだ。
一方、オールドギターとしてのプレミアムは失われる。だから状態も良く、コレクションとしての価値のあるモノをコンバージョンにしてしまうのは、考えものだ。
しかしオールドギターには、保存状態が悪く、大々的にリペアしなくてはギターとして使えないモノや、長い間に何度もリペアを受け、すでにコレクションとしてのプレミアムがほとんどないものもある。こういう個体なら、修理してオリジナル状態に戻してもオールドとしての価値は低くなってしまう。それならコンバージョンにして、使いやすいコンディションに改造するのもいいだろう。実際そうやって作られたモノが多く、あくまでも鬼っ子というか、例外的な存在と考えるべきだろう。
とにかくオールドに使われている木は、それだけでも高い価値がある。解体して木材として取り出して、新たなギターを作ることもあるという。それなら、まがりなりにもレスポールとして、今まで以上にバリバリと使われることを前提にしているのだから、ギターとしても幸せといえるだろう。ただし、コンバージョンは音が命。使ってこそ意味がある。奏き倒さなくては改造した元がとれないということは、いつも頭に置いておこう。それがギターの幸せにもつながる。

・音かトラか
最近のバリトラリイッシューでは、トップ材としてソフトメイプル材が使われている。ソフトメイプル材は、音響的にはよくないが、加工がしやすく、きれいなトラ杢が出るため、見栄え重視のモデルでは結果的によく使われている。ハードメイプルに比べれば、ソフトメイプルは疎で柔らかい木材だ。合板の表面だけ使うのならいざ知らず、ソフトメイプルを主要な材に使ったギターでは、ある程度耳のいいヒトならすぐわかるくらいに音がよくない。こういう状況にある以上、新品のモデルを買うならば、音かトラかという二種択一をせまられることになる。
もちろん今手に入る材でも、それなりに組み合わせれば、オールドとは若干ニュアンスは違うモノの、それなりに艶があって、抜けのいい音のギターを作ることができる。93年〜94年にかけてのヒストリックなどは、そのいい例だろう。実際、かなりのプレミアムがつきだしている。しかし、こういういい音のするメイプルのトップ材には、あまりトラが出てくれない。おいおい、ゴールドトップかプレーントップということになる。
本物のバーストのバリトラを見る機会があったら、ぜひ着目してほしいのだが、ハードメイプルの場合だと、バリトラでも、文字通り「絵にかいたよう」な、どこから見ても同じようにくっきりしたトラではなく、3D写真のように、光の具合によって淡く変化するトラ杢になる。写真で見る限り、ある角度から「切り取った」ものなので違いは出ないが、生で見ればそのニュアンスは大きく違う。そもそもバリトラといえどもそんなに派手な杢がでているわけではないのだ。それがわかってくれば割り切りもしやすいだろう。
自分がプレイするなら、なんといっても音で選ぼう。プレーントップが寂しいなら、ゴールドトップを選べばいい。トラ杢コレクターなら、文句なしに杢で選べばいい。そのかわり音は余り期待しないこと。そう割り切って選ぶ分には、比較的懐が寂しくても、そこそこ満足のいく一本を手に入れられるだろう。それで満足できないなら、これはもう清水の舞台から飛び降りた気でローンを組むしかないだろう。どちらにしろカギは割り切りだ。

・レスポールの踏み絵
68年以降のいわゆる再生産もののレスポールを選ぶ場合。そのレスポールが「買い」かどうかは、ひとえに鳴りにかかっている。個体差が大きいのと、オールドとしてのプレミアムより、やはり「使ってなんぼ」の世界だからだ。実際価格をみても、鳴りによってかなり相場が変わっている。特に68年以降の再生産カスタムでは、68年物と69年物の間で、場合によっては二倍近い相場の差がある。93年、94年初期モノヒストリックの、ゴールドトップやプレーントップには、かなりのプレミアムつけられており、その後のトラのあるモデルとさして変わらない相場がついている。いかに鳴りが大事かは、これらが顕著に示している。
鳴ると定評のある年式のモデルは、けっこうな値段がする。しかし、個体差が大きいだけに安めの年式、モデルでも、時として鳴る個体に出会う場合もある。もちろんその逆もしかりだが。とにかく、これらのモデルを買う場合には徹底的に試奏して、鳴りを確かめる必要がある。
まず大事なのは、生鳴りを試すことだ。一度オールドを触っておくとわかるようになるのだが、ボディー鳴りのいい個体は、生音が良く出ている。音が太く、実に大きい。それだけではなく、ネックやボディー全体が実に豊かに振動している。ネックを握る指、そしてボディーを支える胸や腹に響きがズンズンと力強く伝わってくる。これは明らかに違うので、一度経験するとすぐわかるようになるだろう。
アンプからの出音でいえば、銀パネ・マスター付きツインリバーブやザ・ツインが踏み絵になる。一言でいえば、鳴るヤツだと音になるが、鳴らないヤツだとテンで音にならないからだ。鳴るヤツは、こういうアンプでオーバドライブさせても、実に抜けがよく、輪郭のくっきりした音で鳴る。オーバドライブ状態で、ギター側のヴォリュームコントロールを絞ると、ちゃんとクリントーンになる。さらに、ドライブつまみを極小、ヴォリュームつまみを極大にして、ブースター状態にしたオーバードライブエフェクタを間に繋いでも、コシ・ハリのある音が出る。しかし、並みのヤツだと、ブオンブオンに音が回ってしまい、平板でメリハリのないツブれた音になってしまう。いってみればコンピュータのビープ音みたいな感じだ。どうにも頂けない音だ。このテストの結果はかなりあからさまなので、試してみれば誰でもわかるだろう。先ほどのカスタムの68、69の例とか、ヒストリックの93、95の例とかは、このテストにかけてみると面白い。だが、敵もさる者、試奏用アンプにこういうモデルを用意している店はさすがに少ない。逆に、そういう店なら、そうとうに良心的ということができるだろう。




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