西九州の追憶 その3 佐世保線 2 -1971年11月-


今回も前回に引き続き、C11とC57が重連で牽引する佐世保線の下り旅客列車の追いかけ撮影の続編です。この時は父親の用事への同行で九州へ入ったので、料金は父親持ちで、タクシーでの追いかけ撮影が可能でした。ダイヤの関係で撮影地まで歩いていたのでは、目玉の列車を撮り逃してしまうというので、片道のみなけなしでタクシー代奮発というのはやったことがありますが、さすがに追いかけて併走というのは、こういう機会しかできません。その割には、ちゃんとした装備を持って行けなかったのが残念。とはいえ、この機会がなかったら、長崎本線、佐世保線、松浦線という長崎県内の路線は全くコミットできなかったのですから、今となっては貴重なチャンスだったといえるでしょう。ということで、引き続きお届けします。



さて、前回の最後のカットのように国道35号線を併走して列車を抜き去り、先回りします。地形からすると、永尾駅でしょうか。場内信号のあたりで、駅の発車を狙うべく待ちます。そこに上りのディーゼル急行がやってきました。キハ58系の4連。朝という時間帯を考えると、博多行きの「弓張1号」でしょうか。キハ-キロ-キハ-キハという、模型でも走らせやすい編成です。こういうのが実物でもあるところが、ディーゼルカーのいい所ですね。登り10‰の勾配票、たちのぼる二条の煙など、露出は悪いですが、トリミングすれば絵になる構図ではあります。煙こそ出せませんが、絵柄としては模型のジオラマ撮影でも使えそうなコンセプトですね。


発車シーンは、もう少し駅の方に近づいての撮影です。状態が良くないのではっきりは見えていませんが、本務機のC57155号機は黒煙ではなくドラフトの蒸気を吐いていますし、すでにドレンを切っているようにも見えます。すでに、動き出しているのでしょうか。それにしては、C11はまだのんびりとカマを作っていて、押してもらっている感じです。まあ、永尾をすぎれば単機でも牽けますので、そんなにあくせくする必要もないのかもしれませんが。褪色・変色の甚だしいこの頃の国産ネガカラーだと、機関車のアップはさすがにつらいものがありますが、こういうフォトジェニックな雰囲気を写したカットは、まだゴマかしようがあります。こういうトーンから、何度もダビングを重ねたVHSを思い起こしてしまうのは、やはりいま50代以上の人になってしまうんでしょうね。


ということで、出発シーン。さすがにここは両機ともバッチリ力行です。力行時には、しっかり白煙になっているのは、冬の九州らしい雰囲気。なんどもいいますが、九州の機関助士はウマいです。石炭に豆炭を使っていて、高カロリーで質が良かったこともありますが、やはり「黒煙防止」は九州のお家芸ですよ。これは覚えていた方がいいですね。ところで、小工デフにLP403。九州のC11らしい出で立ちといえます。好みはわかれるものと思われますが、個人的にはC11やC56といった小径ボイラーのカマにLP403を装着したのって、愛嬌があって好きですよ。バックの里山の、稜線に照葉樹が生えそろってる感じ。これがいいんですよ。なんとか模型でも再現してますが。


見返りカットで、もう一枚。いいところに、たわわに実った柿の木がありました。柿の木も、九州は多いんです。晩秋から初冬にかけては、いい具合に、ワンポイントの色味を提供してくれています。もうちょっとネガの状態、欲を言えば最初の露出の状態が良ければ、なかなかいい感じだったと思いますが、過去に文句を言っても仕方ありません。状態が悪くても記録があることの方が、よほど重要です。こういうカットだと、小工デフ同士の重連というのが生きてきますね。機関車は辛いですが、柿の実は意外とちゃんと写ってます。このあたりも、そもそものフィルムの特性なんでしょうか。改めて、背伸びして奮発しても、コダック社製のフィルムをメインにしててよかったと思います。


再び、国道をタクシーで併走して、次のチャンスを狙います。国道35号線と佐世保線が併走しているところで、キャッチアップ。再び追い越します。追い越しざまに一枚。今度は前補機(この区間では正しくは回送ですが)のC11をアップで捉えます。ちょうど国道標識のオニギリも入っていい感じ。何度も言いますが、これムービーだったら最高ですね。状態はかなり悪いのですが、ナンバープレートはきっちり読み取れます。それだけでなく、前デッキのツカミ棒や解放テコがステンレスになっているのもわかります。こういう感じで、国道35号線が佐世保線の南側に寄り添う区間は、上有田の東側しかありませんから、そのどこかで撮影したものと推定されます。


最後のカットは、水辺をゆく列車の姿です。力行していますし、バックの紅葉もいい感じで、ネガが傷んでいるのが惜しいですね。C11はあまり華はないものの、ローカル線区の貨客両用万能機として改良された三次型以降は、それなりに「小柄ながら力強く働く男」というイメージの実直な機関車という感じがします。これも、どこで撮ったかは記憶にありませんが、この地形はかなり特徴的。これなら、Googleマップと航空写真で撮影地が考証できそうです。前のカットから、上有田以西ということはわかるので、スクロールしながら追ってゆきます。すると、有田を出て、松浦線が北方に分かれた後、南に大きくカーブを切ったアタリに、線路を越えて川が流れ込む溜池が、線路の北側にあるではないですか。ということで、このカットは有田-三河内間と比定いたしました。


(c)2016 FUJII Yoshihiko よろず表現屋


「記憶の中の鉄道風景」にもどる

はじめにもどる
inserted by FC2 system