おたくの煩悩

第七章 銃器・その他ミリタリー


煩悩 その67
ワルサー P-38
ぼくが小さい頃にも、モデルガンブームがあった。当時は、全金属製で、なおかつ銃身がくりぬいてあるやつ、つまり「改造モデルガン」に改造可能なヤツが、大手をふって売られていた。なんともいい時代だ。
しかし、この手のものは、概して親がうるさい。ひそか買って、ひそかにしまっておく必要がある。学校なんかに持ってゆくと、見つかると一発で取り上げられる。それだからこそ持ってゆきたいし、見せびらかしたい。このあたりから、子供は社会の渡りかたを知るのだ。
さて、当時もっとも人気があったのは、ワルサーP-38だ。第二次世界大戦時の、ナチスドイツ軍の制式拳銃だ。とにかくごっつくてメカっぽさは随一。いかにもドイツという感じのハンドガンで、また、陸軍版、空軍版、SS版とか、とにかくバリエーションも多く、この面でもマニア心をくすぐる。
また、テレビ映画 0011ナポレオンソロでも、主人公ソロの愛機であったので人気があった。しかし、こんなでかいピストルでは、私服の下に隠せなくて、シークレット・エージェントとしては困ると思うのだが、どうだろうか。

煩悩 その68
ワルサーPPK
ワルサー社の小型オートマティックピストルのベストセラーだ。これは007シリーズで、主人公のジェームス・ボンドが愛用して人気がでたピストルだ。実際これは、小型のピストルの中では精度も高く、マニアとしてもうなずける選択であった。
現実にも、世界各国の私服刑事や、軍事スパイなども多く使っている。日本でも、このほど警察の機動捜査隊員の制式ピストルとして採用されることになったそうだ。
小さいぶん、これは学校とかにも持ってゆきやすい。そして、ちらっと見せて自慢するのにぴったりだ。その半面、スパイごっことか、戦争ごっことか、「ごっこもの」をやるにはどうにも目立たなくてさえない。屋外なら、やはり長ものというぐらいで、この手の小型ピストルはつらい。
意味もなく、いつも持ち歩くという、マニアックな愛情を注ぐにふさわしい一丁だ。

煩悩 その69
ルガー08
これまたドイツの拳銃だが、こちらは第一次世界大戦時の、ドイツ軍の制式拳銃だ。ワルサーP-38が、ドイツのメカニカルな魅力だったのに対して、ルガーは、時代が時代だけに中世のギルドから続く、ドイツ工芸のマイスターといった、凝った作りが魅力だ。
まず、木製のグリップと、金属部分の対比が美しい。次に、複雑に曲線を組み合わせたグリップ部(弾倉の引きだし部のデザインが格別)と、パイプそのものという銃身との対比がまたいい。
それから、なんといってもその特異なメカニズムだ。ふつうのオートマチック拳銃とは違い、全体は前後にスライドせず、コッキングようのリンクだけが、尺取り虫のように動いて、薬莢を放出、次の実包を装填する。
ここはなんとも魅力なのだが、モデルガンでも泣き所、よく壊れるのだ。これは、実物でも同様だったみたいで、その後、このメカニズムは受け継がれてはいない。

煩悩 その70
コルト ガバメント
日本でオートマチック拳銃といえば、まず「ガバ」をイメージするひとが多いのではないだろうか。それほどまでに親しまれている拳銃だ。なんといっても、第二次世界大戦以来、1970年代に至るまで、米軍の制式拳銃だったことが大きい。つまり、「進駐軍のピストル」なのだ。
これは、日本人にとって大きな擦り込みだ。あのコルトガバメントの大きなボディーそのものが、大きなアメリカの象徴だったのかもしれない。その証拠に、昭和30年代の映画やテレビ映画で活躍する拳銃は、オートマチックなら決って「ガバ」だ。
それだけでない。米軍横流しとかで、当時のヤクザの使っていた拳銃でもっとも強力なのも、これだ。
当然モデルガンも、人気があった。ただ、ぼくらの世代になるとテレビや映画の影響が大きく、軍事用のイメージよりは、なんかヒーローものの感じがするのだ。当時のヒーローは、まだ未来兵器は入手できない、等身大のヒーローだったのだ。

煩悩 その71
ニューナンブ
「カッコよく」はないけれど、親しみが持てることからいったら、ナンバーワンなのが、このニューナンブであろう。なんたって、「お巡りさんのピストル」だ。本物のピストルをみれるのは、ほぼこれしかない。
それに、むかしのお巡りさんは優しかったので、男の子が「見せて」とかいうと、規律違反ではあるが、ケースからだして見せてくれることもあった。田舎の駐在さんとかだと、触らせてくれる場合もあったらしい。
これは、それまで警察用に使われていたS&WのM-36をもとに、日本向けの改良を加えたもので、リボルバーにしては小型にできていて、日本のお巡りさんにもぴったり。
そもそもリボルバーというのは、メカそのものが外部に露出しているという、蒸気機関車のようなメカ美がある。
だからこそ、マニアはリボルバーが好きだし、コクサイは、ガスガン化しにくいにもかかわらず、ひたすらリボルバーにこだわる。
ロシアン・ルーレットも、撃鉄のコッキングとともに、ぐぐーっと弾倉がまわるからこそスリリングなのであって、あれがインナーメカなら、恐くもなんともないではないか。

煩悩 その72
ベレッタ
ベレッタと聞いてなにを思い浮かべるかによって、年がわかるといてもよい。第二次世界大戦中のイタリアファシスト軍の制式拳銃だった、ベレッタ1934を思い浮かべるのはオールドファン。
これは、小型オートマチックとしては最高なピストルの一つだ。なんとっても、さすがイタリア製、デザインがきれいだ。グリップに大きく刻印された装飾ロゴはもちろん、銃身とグリップのバランスとか、引金の曲線とか、さすがだ。もともと銃には、ヨーロッパ貴族のコレクション的趣味の対象としての側面があり、大量生産の時代になっても、そのアイデンティティを守っているともいえるだろう。
若いファンにとっては、何といっても、ベレッタM-92Fだ。コルト・ガバメントの後を次いで、「外国製品」ながら米軍の制式拳銃に指定された拳銃だ。いま、モデルガンではいちばん人気がある機種ではないだろうか。
これは、さすがに設計が新しいだけに、どちらかというとメカっぽい、ワルサーP-38なんかにも通じるところのあるデザインだか、必要以上に大きさを感じさせず、実際の大きさのわりには良くてになじむデザインだ。
じつは、数年前、何年ぶりかで買ってしまったモデルガンでもある。

煩悩 その73
AK-47
M-16とならび称される、ベトナム戦争当時大活躍した、ソ連製の小銃だ。独特の半月型弾倉をはじめ、第二次世界大戦当時のドイツ軍の突撃銃を基本にデザインされた伝統を受け継ぐ、名銃だ。それだけに、使われている技術は、いたってローテクであり、木製の銃床、鋼パイプを利用した銃身、鉄板をプレス加工した主要部品など、実に素朴でもある。この「手作りの暖かみ」こそ、AK-47の本領だ。
しかし、これは実戦でも役に経っている。つまり、世界内戦ゲリラの友なのだ。
まず、とにかく安い。中国製だと、一丁何千円ぐらいのオーダーというハナシを聞いたこともある。下手すると、モデルガンよりも安い。これなら、民力の低い地域のゲリラでも、充分買える。
それと、シンプルな構造だ。M-16では、部品の補給がなくなったらお手上げだが、AK-47なら、器用なひとなら簡単に修理できる。これも、ゲリラ戦では需要なポイントだ。
しかし、このAK-47を、タマが出ないようにした「置物」をマニア向けに日本で売っているが、これが十何万もするのだ。
これはいくらなんでも許し難い。中国の軍工廠も、いっそのこと置物専門にしたほうが、大量に日本に輸出してもうかるのではないだろうか。

煩悩 その74
Jeep
さて、ちょっと小火器に寄りすぎたキライもあるが、ここではその他の兵器も扱うつもりであったので、そっちにもふれてみたい。まず最初はジープだ。ひとことで兵器とはいいにくい面もあるが、軍用車とすればこれ以上の活躍をしたものはないかもしれない。いかにもアメリカ軍らしい、合理的な車輌だ。
こういう車輌をたくさん揃えて、手軽に戦争できる体制を作るアメリカには、根性論の帝国陸軍など勝てるわけがない。逆に、根性だけで戦った日本の兵隊さんをみて、アメリカ兵は、どうしても理解ができなかったというのもうなづける。
さて、Jeepといえば、実際に国内でもよく見かけたが、なんといってもテレビの戦記ものだ。その活躍は、やはりヨーロッパ戦線が中心で、日本ではギブミー・チョコレートの兵隊さんのクルマだ。
そんな中でも印象が深いのは、「ラットパトロール」のシリーズで、主人公たちが愛乗した、荷台に無反動砲(いわゆるバズーカ砲)をつんだバージョンだ。今でこそ、対戦車ミサイルとか、スティンガーとかの発射台を小型四駆に取り付けるのは常識ともいえるが、当時としては、なんとも新鮮であった。そして、それでつぎつぎ戦車を撃破するのが、小気味よかったのであった。

煩悩 その75
ハーフトラック
テレビの戦争ものといえば、アメリカ制作のヨーロッパ戦線もので、ドイツ相手にアメリカ軍が大活躍するものと決まっていた。「コンバット」なんか、いまでもCATVとかで再放送されたり、ビデオが発売されたりしている。
さて、そこで敵役のドイツ軍といえば決って出てくるのがこれ、ハーフトラックだ。前輪はタイヤでふつうのトラックだが、後輪は無限軌道で、雪上車のようになっている車輌だ。
たしかに、他ではあまり見ないところをみると、ドイツ得意の「珍兵器」の一つといえるかもしれない。でもよく考えれば、そもそも駆動輪にだけチェーンをカマすことは多く、最初から後輪を悪路対応にしているのは、使う場所さえわかっていれば合理的でもある。さすがドイツだ。
雪のモスクワ戦線とか、砂漠の北アフリカ戦線とかでは、威力を発揮したのであろう。
一粒で二度おいしいこのハーフトラック、当然プラモデルでも、ミニカーでも人気者だ。だから、どんなシリーズでも、地味な兵器にもかかわらず、ラインナップされている。しかし、実際のところの活躍はどうだったのであろうか。道路の整備されている中央ヨーロッパでは、「?」なところもあるのだが……。

煩悩 その76
ZSU-23
自走対空砲というジャンルも、ドイツの発明だ。基地を守るための対空砲はどの国にもあったが、これを4本とか6本とかまとめて戦車の足周りと組み合わせ、戦車隊とともに移動しながら対空防衛にあたる、自走式の対空砲にするというのは、機甲師団のありかたを大きく変えたものだ。
ドイツの兵器や戦術は、第二次大戦後、アメリカとソ連にそれぞれ受け継がれ、冷戦初期のミリタリーバランスに大きな影響を与えたが、対空自走砲はどちらかというと、ソ連で改良が加えられた。その集大成ともいえるのがZSU-23だ。
何次にもわたってくりひろげられた中東戦争は、主としてソ連の兵器の実験場となったが、そこでもっとも威力を発揮した一つが、この対空砲ZSU-23だ。
なんといっても、これでてひどい目にあったイスラエルが、その後地上戦で捕獲して、それを改良して自ら使用したというのだから、その威力が知れる。
ぼくは、攻撃機が好きなぶん、その最大のライバルである自走対空砲も好きだ。

(93/12)



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