広告会社の提供する商品開発サービスとは



アパレルメーカーとか、消費財メーカーの人は、我々のような業界の人間が考える以上に、消費者の嗜好をよく知ってるし、消費者の視線もよく知ってます。それは、情報という面でも、感じ方という面でも、どちらにもいえることです。このぐらいの感受性がない企業では、今の世の中、消費者に満足してもらえる商品は創れません。

こういう企業に対しては、一般的な消費者情報なんて「いまさら」ものですから、このレベルよりは、得意先名を上げて、私がその開発者なので、既存の製品について屈託のない意見を聞かせてほしい、とやったほうが、より建設的な情報となるでしょう。

もちろん、ここでいっているような情報を欲しがる企業もあります。しかし、彼らは感度の鈍い、落後しつつある企業であって、どうやってもヒット商品がでない理由は、情報の有無ではなく、ユーザの視点やセンスへの感受性がないという、体質的、構造的な問題にあります。

だから、このレベルの情報提供よりは、企業体質そのものの強化、センスのある企業作りのためのコンサルティングのほうが大切なのではないかと思います。まさにCI活動ですよね。はっきりいって、旧来のマーケティング的提案では、感度の高い企業に対して行う場合、10年前でも門前払いになるでしょう。ハナから、「広告屋なんてそのレベル」と相手が思ってるならさておき、こちらに対して期待があるなら、なおさらです。少なくとも、10年ぐらい前のぼくの経験でもそうです。

そもそも、商品そのものに関しては、技術についても、ユーザについても、流通についても、どこをとっても広告会社なんかより広告主のほうが圧倒的に専門家なワケで、正面から四つに組んで勝てるわけがないですよね。そんなことは、広告主も、広告会社も先刻充々承知してるわけではっきりいって、出る幕がなくてあたりまえ。じゃ、広告会社の立つ瀬はどこにあるかというと、次の3つの場合に限られるんですよ。結局。

1.広告主サイドで、商品販売に関する「常識」への思い込みが強く、ユーザサイドの変化に気づいていない場合。

これは、基本的にはコミュニケーション戦略上の問題で、広告主サイドでは思ってもみなかったターゲットに対して、思ってもみなかった「利用法」で売ろうよ、という意味での、「商品開発」です。

2.広告主サイドで、商品作りの発想が固定化し、ユーザニーズと乖離した製品しか提供できなくなっている場合。

これが、よくある事例だと思いますが、広告会社がある種の助言を求められる場合です。しかし、この手の提案は、あくまでも広告主サイドに問題意識があって、今のままじゃいけないけどどうしたらいいのかわからないので、意見が欲しい、といわれてはじめて発言の機会がおこります。

3.広告会社に、その分野の商品プランナーとして天才的な創造性を発揮できる人材がいた場合。

これは、事例としては少ないのでしょうが、成功例があるとするならば、ここに入ってくるはずです。それは、商品開発は元来、理屈やチームでできるものではなく、一人の天才がいてはじめて成功するものだからです。しかし、極めて属人的な能力だけに、これを広告会社の利益につなげるのもまた、困難が伴っています。

けっきょく、つきつめていけば、こういうことではないでしょうか一人の天才の産み出した価値を、組織のスケールを使って膨らまし、きちんと取るものを取れるビジネス形態を早く実現することは、こういう面でも重要だといえます。

だから、つきつめていけば、商品開発についてのケイパビリティなんてものは(なんでもそうだけど)、「わたしは、こんなにセンスがありますから、わたしを信頼してください」というしかないですよ。理屈じゃないもの。それは、話の内容だったり、身なりだったり、雰囲気だったりといった、全身から発散してる「オーラ」がどれだけ、相手を納得させるかに、かかってるといってもいいです。

で、問題は、そこから先。社内で生み出した付加価値を適正にお得意さんにチャージするのが難しい点です。具体的には大きい問題は2つあります。

1つは、多くの広告会社において人件費は、粗利を出してからの「営業費・人件費」という、固定的な費用項目に入る形式を取っていて、原価として管理していないことです。プロダクションでは、現場の人件費は原価、管理部門の人件費は営業費とわけて管理しています。こういう管理が必要です。人件費の出所が一体だと、名目上の「マンコスト」請求はできても、実質的な管理はできないわけです。

次に、日本的な賃金体系があります。付加価値をチャージする裏には、その人間に対し、付加価値見合いのペイバックをして、その貢献に対しての報酬を出さなくては、誰もアイディアを出さなくなります。そこまでいかなくても、なんらかのincentiveが必要です。これが日本の企業では難しい。

この2点を解決しないと、本当に能力を発揮できる環境にはならないでしょう。



(95/03)



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