悲しきFMV



パソコン業界関係者の間では、FMVだというだけでみんな顔をしかめます。どんな問題が起きても「FMVだから」の一言で片付けてしまい、それでみんな納得してしまいます。こういうのを、「安かろう、悪かろう」といいます。大赤字喰らって、不評を買ってまで、シェアがほしいものかな、今どき。とは思うのですが。まあ、この辺は考えかたというか、経営戦略やマーケティング方針次第ではあるので、端からどうこういうことではないと思いますが。なんせ、一円入札の会社ですから。

では、どうしてそうなったのか。まずFMVの由来について少しご説明しましょう。Windowsマシンで、98アーキテクチャ以外のヤツは、基本的には「AT互換機」と呼ばれるマシンです。しかし、世の中には「AT互換機」と呼ばれる規格があるわけではないのです。この規格は、デファクトスタンダードというか、誰が決めるともなく、自主的に「できちゃった」規格です。

そもそもIBM-PC/ATとは、1980年代の初めの機種で、CPUはi286だし、クロックは8MHzという、今から見れば前世紀の化石のようなアーキテクチャを持ったマシンです。このアーキテクチャをベースに、いろいろなボードメーカー、デバイスメーカーが、その後の技術革新にあわせて、拡張してきたのが現在のAT互換機です。

AT互換機の作り方には、2つのやり方があります。1つは、コンパックのように、自社でボードから設計する代わりに、独自の機能を盛り込み、オリジナル製品とすることで、高付加価値化を図る方法です。この場合、独自の機能の部分については、当然、他のAT互換機との互換性はありません。

もう一つは富士通のFMVシリーズのように、とにかく世界中から、一番安い部品を買ってきて、適当にくみ上げて、とにかく価格勝負に出る方法です。この場合、各デバイスやボードのメーカーは、みんな勝手に独自の方法で、最新技術を取り入れています。したがって、最低限の基本機能は動くモノの、拡張された最新機能は、コストの面だけから判断した組み合わせで、うまく動くか保証がありません。

単に、ワードやエクセルを使うだけという、スタンドアロンの利用なら、たぶん、どのマシンでも動くと思います。この部分が、「AT互換機」としての基本線です。しかし、よりマシンに負荷がかかる高度な利用となると、その限りではありません。そして、LAN周りというのは、比較的高度な利用なのです。LAN関係というのは、ソフトだけではどうしようもなくて、ドライバとかではなく、直接ハードをさわりにゆくプログラムがでてきてしまうからです。でまた、そもそもこういうI/O関係というのは、AT互換機の泣き所で、カリカリに性能をだしていればいるほど、クリティカルで互換性がなく、トラブルの発端になりやすいのです。

さて、いわゆるショップブランドの場合なら、そこにATおたくの人がいて、ボード間のinter-operabilityとか、日夜研究してる成果がでてくるのでしょうが、大手だと、こういうきめの細かいチェックはできません。基本的に、ベーシックな機能が動けばOKということになりがちです。

そこで件のFMVなのですが、ここまでいえばおわかりかと思いますが、技術うんぬんと関係なく、コスト第一で買い付けたボードやデバイスを、互換性の保証なく、ただ「ベーシックに動けばいい」というレベルで組みつけて出荷しているだけなのです。これでは、何が起こるかわかりません。F社は、AT互換機の世界の恐さを知らないのでしょう。

ですから、FMVは、同じ型番のヤツでも、製造時期によって中のパーツが違ったり(単純な話ですが、IDE-HDは相性が強くて、HDを2台つなぐ場合、変な相手だとうんともすんともいわなくなったりするぐらいのことは、ATの世界では常識です。だから、途中でパーツの型番が変わるということは、トラブルサポートができないことを意味します)しますし、場合によっては、マシンに付属してるデモのプログラムがそのマシンで動かないということも起こります。

これは、初めに述べたように「経営方針」「マーケティング戦略」ですから、ユーザもわかって買うならなんら問題はないでしょう。しかし、これでは一般民間ユーザはついていけませんよね。まだ、マハのヤツのほうが安定してると思いますね。これで、F社のサポート部隊が、対応できるならいいのですが、彼らはAT互換機の世界は、全然知らないときてるし……。というのが、裏の事情です。

多少専門的になってしまいましたが、ふつうのヒトが、ふつうに使える代物ではないということだけは事実でしょう。F社の名誉のためにいいますが、どうもF社自身はFMVシリーズを、当初は専用端末とか、特定業務用アプリケーションのプラットフォームとして、自社内では位置づけていたようです。そういう目的で使うぶんには、あらかじめ予定された使い方しかないわけですから問題は起きにくいのも確かですが。


(95/05/16)



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