実践作詞講座シリーズ

その1 ことばと音節





さて、歌詞をリズムにはめていく時、基本になるものは何か、考えたことがありますか。それは「音節」です。英語の場合は、この「音節」というものが非常にとらえやすいんで、リズムにのせやすい。しかし、日本語の場合、「音節」という考え方を持っていないヒトが多いんでリズムにのせにくい。こういう問題があるわけです。

よく、日本語の唄はリズムに乗らないといわれます。しかし、これは本質的に「日本語がリズムに乗らない」のではなく、音節というものを考えずに、詞をつくったり、ウタを唄ったりするヒトが多いから、リズミックにならない、というだけのことです。

したがって、この「音節主義」という点に気をつけてメロディーにノセていけば、だれでも、「ノリのいい日本語のウタ」が作れるというワケです。

ここで、いちばん問題になるのは、日本語の「カナ」は、表音文字のようで、表音文字でないということです。字面にまどわされてはいけません。音節は、実際に発音するときの「音」から、考えていかなくてはいけません。

現実に、ことばとして口から発せられるときに、どういう音が出てるのか。いわば、発音記号みたいなものに分解して、その断片をメロディー・リズムに対応させてゆく。この作業をやってはじめて、単なる「ことば」が、歌詞に生まれ変わるということさえできるでしょう。

では、具体的に「音節」とは何か。それは、「子音+母音+子音」というユニットとしてとらえられます。子音としては、一般的には、「k、s、t、n、h、f、m、l、w、g、d、z(ts)、b、p、sh、ch、dh、gh」(それと、もちろん「無し」というのもある)、母音としては「a、i、u、e、o、a:、i:、u:、e:、o:、ai、ei、oi、ya、yu、ye、yo」なんてものが考えられます。

ここまで書くと、わかるヒトは気がつくと思いますが、ほとんどハングルの世界ですね。ハングルは、きちんとした表音文字なので、発音の通りが文字になっている。ところが、日本のカナは音とは必ずしも対応していない、単なる「記号」にすぎないわけです。

実はこの問題は、韓国語の入門書を読んでて、長年疑問に思っていたことが、一気に解明されたのでした。こう見ていけば、音節とは何かそれがどうして重要なのかはおわかりいただけたと思います。でも、実践の話になる前に、もう一度、音節そのものに関するお話をして、理解を深めたいと思います。

いまのところ、「理屈ではわかった。でも、なんとなくわかんない」というヒトも多いのではないでしょうか。そこで、具体的な例を挙げて考えてみることにしましょう。それは、音節でとらえることばが、必ずしも一様でないからでしょう。方言によっても、音節割りは大きく変わります。

たとえば、「ネクタイ」という単語。あなたは、どう発音しますか。東京のヒトなら、「nek - tai」と2音節で発音するでしょう(aiは、二重母音ね)。しかし関西のヒトは、「ne - ku - ta - i」と、4音節になることが多いでしょう。これは、外来語は文字の表記通り発音する傾向があるからです。

ウタとしてみた場合、当然バックになるメロディーが違うわけです。単にことばの発音としては、どっちが正しいというものでははありませんが、ウタにすることを前提にすれば、文字主義では、譜割りばっかり細かくなって、ノリのいい作品にはなりません。

自分がどう発音しているか、胸に手を当てて、ちょっと考えてみてください。


(1988年12月)



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